先日の学校でのことです。
中間休みが終わろうとしていたので、職員室を出て階段を上っていきました。
暑い日でしたので、廊下の全ての窓が開いていて、気持ちの良い風が吹き込んでいました。
トイレの前まで行くと、2年生のA君が微妙な表情でトイレの前に立っていました。
「お、A君!」と私が声をかけると、
A君が「先生…。」と、困った様子で私の名前を呼びました。
続けて「あのね、先生…。ぼくね、おしっこひっかけた…。」
ん?と思い、A君をよく見てみると、ズボンの股間のところがビショビショではありませんか。
でも今日は、これから研究授業が行われるのです。間もなく先生方が私の教室に集まってきます。
内心焦りました。
A君は自分の身の周りのことにとても無頓着で、ちょっとボーっとして勉強が得意ではないお子さんです。
試しに、「今日は暑いからすぐに乾くんじゃない?」と、言ってみたら、ニコッと笑って、
「そだね!」
と、私について教室に入ってきました。
「よかった…。」と、ホッとしました。
そしてちょっと椅子に腰を下ろしました。
「タロー先生~。」
「ブロッコリー先生~。」
「出羽先生~。」
(私には、何故か様々な呼び名があります…(笑)しかも、ブロッコリーとは程遠い頭です…(大笑い))
いつものように、子どもたちが私の周りに集まってきました。
そして、A君もやってきました。私の膝に乗っていた友達を押しのけて自分が乗ろうとしました。
私の方をニヤニヤしながら…。
やばい!と思いましたが、「まあ、いっか。」と、すぐに覚悟を決めてA君を膝に乗せました。
「ビショっとして冷たい…。」
「あ…生温かくなってきた…。」
A君は、おしっこを失敗してちょっと落ち込んでいた人とは別人のように、笑顔いっぱいになっています。
A君が去った後には、私の数少ないスーツのズボンに濡れた跡が…。
研究授業が始まりました。
目を輝かせて一番がんばったのは、あのA君でした。
放課後の研究会では、A君の活躍ぶりも話題になりました。
大変失礼ながら、「あのA君が…。信じられない…。すごかった…。」と、いうわけです。
A君が生き生きとがんばったのは…
やっぱり、あれが理由ですよね。
A君の名誉のために誰にも話してはいませんが、私のズボンのシミが
「出羽、よかったな。」って物語ってくれています。
(あ、もちろん洗濯してシミはなくなりました。)