優しく絡め取られる指。


この手の温もりは……?


それは、目覚める数秒前。

大きな手が私の手の平に重なり、ゆっくりと指を絡め取られる。


(この手は…)


次の瞬間、その優しい感触だけを残し現実へと引き戻された。


知っている人のような、それでいて誰なのか分からない。



それでも、あの人であってくれたら…


そう、思ってしまう自分がいた。



【初夢】 沖田総司編


お正月の雰囲気さめやらぬ、とても寒い晩のこと。


いつものようにお座敷へ向かい、少し緊張した面持ちの私を笑顔で迎え入れてくれたのは、沖田さんだった。


大好きな沖田さんを目前にして、嬉しさが込み上げて来る。沖田さんは、そんな私に柔和な笑みを浮かべたまま、


「今宵も綺麗ですね」

「…ありがとうございます」

「花魁になられても、貴女だけは変わらない」


爽やかな声にまた胸の鼓動が速まる。


(何だろう、このいつもとは違うドキドキした気持ちは…)


お猪口を手渡し、次いでそれに銚子を傾けお酒を注ぐ。お盆に戻すと同時に、一気に飲み干した沖田さんの喉が鳴り微かに零れる吐息を聞いた。


その微かな声にさえ反応してしまう自分に羞恥心を抱きつつも、「もう一杯、下さい」と、言ってお猪口をこちらへ差し出す沖田さんの嬉しそうな笑みを見つめる。


「ご機嫌ですね。何か良いことでもあったのですか?」

「はい」


沖田さんは、満面の笑顔を浮かべると江戸にいるというお姉さまから手紙が届いたとのことだった。それと、新撰組の働きが世間に認められるようになったことも、その理由の一つだと話してくれた。


「それに、ようやく…」


真っ直ぐ私を見つめる少し真剣な眼差しを受け止めて、胸がトクンと高鳴った。これほど男らしい表情は、初めて目にしたから。


「馴染みになれました」

「え…」


床入りのことを言っているのかと思い息を呑んだ途端、気管支が苦しくなり大きく咽返った。


「大丈夫ですか?」

「は、はい。変なところに入ってしまって…」


すぐに背中を優しく擦ってくれる大きな手の温もりを感じ、もう大丈夫ですからとその襟元に触れる。


「あ…」


お互いに見つめ合ってその視線を逸らし合い、ほんの少し距離を置いた。そして、再び視線をかち合わせると沖田さんはまた視線を逸らし照れたように呟く。


「…苦しそうだったので、つい」

「あの、その…」


大きく息をついて、心を落ち着かせる。


沖田さんは、ただ三度目の夜を迎えたと言っていただけだというのに、独り勝手に舞い上がってしまっていた自分が情けない。


「ありがとうございます、沖田さん」

「いえ…」


(私は…沖田さんに…)


苦笑いを浮かべる沖田さんにぎこちなく微笑み、私は喉まで出かかっていた言葉を呑みこんだ。





その後も、沖田さんと楽しい一時を過ごす中。何故か、いつもの沖田さんとは違うように感じてしまっていた。それは、普段はあまり飲まないお酒を飲み続けていることや、投扇興などのお座敷遊びをしたいと言わないところにあり。


時折、溜息を漏らしながら何かを考え込んでいるようにも見えたから。


「沖田さん…」

「何でしょう?」


いつもの笑顔で答える沖田さんに、気付かないうちに何か不手際でもあったのかどうかを尋ねてみると、沖田さんは一瞬、大きく目を見開きながら首を横に振った。


「いえ、そのようなことは…ただ、」

「ただ?」

「今宵は貴女を…」


その続きを耳にして、私の勘違いでは無かったのだと改めて思い、顔が真っ赤になっていくのを感じながら思わず視線を逸らした。


───この胸に誘うことが出来る。


そう言って貰えたことが嬉しくて、それでいて恥ずかしくて。こんな私で良いのか、逆に問いかけると沖田さんは微笑んだ後、真剣な眼差しを浮かべた。


「先程は、言い損ねてしまいましたが…」


私はただ、その瞳に絡め取られたまま。

いつの間にか、抱き寄せられ気が付けば優しい腕の中にいた。


「…あっ…」


力強く抱きしめられ、漏れ聞こえる自分の吐息を聞く。次いで、少し低く抑えたような声が私の耳元を擽った。



「いつも、貴方を抱き寄せたいと思っていました」


不意に離れ行く温もりを惜しんでいた。その時、沖田さんはゆっくりと立ち上がると私に手を差し伸べた。その大きな手の平に自分の手を重ねた瞬間、夢で見た優しい手の温もりを思い出す。


「沖田さんだったのかな…」

「はい?」

「いえ、何でもありません」


言いあぐねる私に沖田さんは、「いつか聞かせて下さい」と、言って微笑んだ。それから、その手に導かれるままに隣の部屋に用意されていた布団の上へと腰を下ろし、二つの枕を並べて横になる。


そして、どちらからともなく微笑み合い、そっと伸ばした指先から熱を感じ合う。


「…夢のようです。貴女が今、こうして目の前にいて…」


剣を扱うしなやかな指先が私の耳元を掠めてゆき、甘い吐息を間近で聞いた。


「私の腕の中にいる。ただし、貴女に受け入れて頂ければの話ですが…」


こんなふうに優しい温もりに包まれたかった。そんな想いを見透かされていたようで、沖田さんの胸に顔を埋めた。


「沖田さんと……同じ想いです…」

「それは本心ですか?」

「……はい」


やがて、簪が外されていくのを感じると同時に肩を竦めるも、その優しい手が胸元の帯へと滑って行き…


「…っ……」


大好きな人と愛情を分け合おうとしていることに嬉しさと不安が綯交ぜになる中、躊躇う指先は沖田さんの襟元にぎこちなく触れたまま…


「今宵は…」

「え…」

「このままで」


影になって良く分からないけれど、私を見つめるその瞳はとても優しげに見える。


「次は、いつ会いに来られるか分かりませんが…」


沖田さんは、私の乱れた前髪を梳きながらそう言うと、ぎこちない口付けをくれた。ゆっくりと近づくその端整な顔を見つめ目蓋を閉じた瞬間、柔らかな唇が私の目蓋に落ちた。


「貴女を想い続けます。ですから、」


その唇が頬を伝い、今度こそ私の唇に重ねられる。それは、思っていた以上に情熱的で沖田さんの想いの深さを感じた。


そして、離れゆく唇から沖田さんの想いの全てを聞く。


私だけを想っていて欲しい。と、言ってきつく私を抱きしめてくれる沖田さんの胸に甘えるように顔を埋めた。



これからもずっと、沖田さんに寄り添いながら生きて行きたい。


あの夢の続きは、いつの日かきっと…




【沖田総司編 完】







~あとがき~


新年、明けましておめでとうございますドキドキ


本年も、よろしくお願いします!!



もう、王道ではありますがw

言って貰いたい、して貰いたいこと。満載にしてみたつもりです☆


ただ、私の願望だけで書いてしまったぁあせる


例えば、主人公が沖田さん宛にに年賀状を書いてて、それを受け取った沖田さんが、年賀状を持ってやって来るとか。


いろいろ考えていたのですが、自分が温もり不足なせいか…


床入りのシーンが一番に浮かんで汗


やっぱり、温もりがあれば何でもできる!(笑)


それぞれの旦那様の台詞で、どんなシーンがあるかは、だいたいお分かりかと思いますが(-∀-)イヒッ


今回のテーマは…


「温もり」ですハート


次は、土方さんをアップ予定ですが…

書いてて、どうしても二人を結ばせたくなって…


なぜか、ぬぅああ…な、艶展開に汗


今、なんとか書き直していますww


(;´▽`A``



でもって、旦那様たちからの年賀状!!

豪華でしたよねラブラブ!


それぞれからの一言も、とっても素敵だったしにひひ


ヤバいです( ´艸`)

やっぱり、ふみえさんの絵は最高ですキラキラ


応募して良かったぁラブラブ!



今回も、覗きに来て下さってありがとうございました!