<艶が~る、妄想小説>
いよいよ、私なりの近江屋事件へ
龍馬さんと翔太くんと、春香のその後は…。相変わらずの拙い文ですが、良ければ、彼らのその後を見てやって下さいませ
とりあえず今回からは、鏡エンド的な展開ですので、申し訳ありませんが、「そういうのは読みたくない!」と、思われる方にはおすすめ出来ません
相変わらずの駄文ではありますが、良かったら…覗いてやって下さいませ
※龍馬さんの本編を迎えていらっしゃらない方には、多少のネタバレになりますし、斬りあいなどのシーンもありますので、ご注意ください
艶龍馬伝1 艶龍馬伝2 艶龍馬伝3 艶龍馬伝4 艶龍馬伝5 艶龍馬伝6
艶龍馬伝 第7話
階下から大きな物音と、叫び声が聴こえてきた。
(…いやっ…嘘でしょう?)
龍馬さんが刀を抜く音がしてすぐ、「そこを動くなや」と、いう荒々しい声がして私は思わず身を竦めた。
「そっちへ行った!」
階段をバタバタと駆け上がる足音がすると同時に、翔太くんの声がした。
障子がバッと開かれる音がした途端、「お主を斬る!」と、いう声がして、切り結ぶ音がし始める。
(…龍馬さんっ……翔太くん…)
やがて、間近で誰かが斬られたであろう叫び声がして、思わず耳を押さえ込んだ。
(…どうしたらいいの…私は…どうすれば…)
間近で戦っている龍馬さんや、階下で戦っている翔太くんが気になりつつも、切り結ぶ声と音を耳にして体中の震えが止められないまま、ただ塞ぎ込むことしか出来ずにいる…。
(こんな時、私も一緒に戦うことが出来たら…)
「…ぐっ…ぬぅおあああ!」
突然、龍馬さんの悲痛な声を耳にすると同時に、ドンッという音と共に衝立が大きく傾いた。
「きゃあぁっ」
「春香!」
刺客の一人が間合いを取ったその瞬間、その足が衝立に当たったことが原因だった。
「女が!」
「させんぜよ!」
刺客と切り結んだままだった龍馬さんは、その相手と間合いを取り、私の傍にいた刺客を瞬時に斬り捨てる。
「なんちゃーないかっ!?(大丈夫か?)」
「…は、はいっ!」
私は、すぐに龍馬さんの背後に身を隠すと、彼はすぐさま他の刺客達に目を向け、私を庇うように立ちはだかり、向かってくる刺客と再び切り結び始める。
(あ、手から血が……もともと痛めていた左手を…)
その時、翔太くんがつばぜり合いながら、私たちの部屋付近までやってきていた。
「龍馬さん!」
「翔太!」
龍馬さんは、なおも私の前で苦しそうな息を漏らしながら必死に堪えている……。
「あ……あっ…」
龍馬さんの背中と、すぐ傍にある刺客達の鬼のような形相を交互に見ながら、ただ震えることしか出来ない私の視線の先に、翔太くんの姿が映り込んだ次の瞬間!
……畳と障子が赤く染まった。
「ぐぅあぁあ…」
「いやぁぁああ!」
龍馬さんは胸元を斬り付けられ、片膝をつきながら再び切り込まれそうになるのを必死に堪えている。
「くっそぉぉぉぉ!」
翔太くんは、もの凄い形相で勢い良く刺客たちを切り捨て、龍馬さんを襲っていた刺客の背中に斬りかかった。
一人はその場で昏倒し、もう一人も腕を切られて間合いを置くと、翔太くんは龍馬さんの前に立ちはだかり、刺客に刀を向ける。
「龍馬さん、しっかりしてくれ!」
私が龍馬さんの傍で介抱し始めた直後、腕を切られた男は翔太くん目掛けて襲いかかって来た。
「翔太くん!」
「くっ!」
次の瞬間、いったんは刀を受け止めた翔太くんも左手を斬られ、ふらつく足取りを必死に抑えながらも相手に立ち向かっていく。
「ぬあぁぁああ!」
翔太くんは、威勢の良い声と共に何度か切り結ぶと、相手の次の一振りが出るより先に、瞬時に斬り捨てた。
「翔太くん!」
「はぁ…はぁ…俺は大丈夫…」
息を弾ませたまま、最後の刺客の死を確認すると、翔太くんは倒れ込む龍馬さんの大きな身体を受け止めた。
「龍馬さん!」
龍馬さんの胸の傷はかなり深く、押さえる手の隙間から大量の血が流れ出る…。
「今、医者を呼んで来ますから!」
「翔太…」
翔太くんがその場を後にしようとした時、龍馬さんは大きく息を吐きながら彼に声をかけた。
「……はい!」
「すまん…」
龍馬さんの細められた瞳は、薄っすらと潤んでいた。
そして、震えながらもゆっくりと上げられる龍馬さんの手を、私は強く握り締める。
「…わしは……やっぱり、駄目かもしれん…」
「何を言ってるんですか!俺はあなたを死なせはしない、そう約束したでしょう?!」
翔太くんは、龍馬さんの大きな身体を抱えながら、必死に言い聞かせた。
「…はは…ほうじゃったのう…」
龍馬さんを見つめる翔太くんの目に、沢山の涙が光っていた。
俯くたびに私の涙も、龍馬さんの真っ赤に染まった胸元に落ちる。
「翔太、春香を頼んだぜよ…」
「いや!私は、龍馬さんじゃないと!あなたが死んだら私も生きていけない!」
「…春香、生きるんじゃ……生きて、生きて…わしや高杉達の意志を…未来へと繋いで欲しいき…」
「……龍馬さん…」
彼の腰元からずれ落ちそうになっていたピストルが、カタッと畳の上に落ちた。
「愛していたのは…おまんだけじゃ…これからも…ずっ…と……」
「いやぁぁあ!死なないで!お願い…」
「龍馬さんっ!!」
翔太くんは、龍馬さんの真っ赤な手を握り締めながら絶叫した。
私も、龍馬さんの血で染まった手を握り締めながら、何度も、何度も繰り返し彼の名前を叫ぶ。
お嫁さんにしてくれるって言っていたのに…。
幸せにしてくれるって言っていたのに…。
「…りょう…ま…さん…」
その呼吸はどんどん小さくなり……
やがて、彼は私たちに微笑むと、静かに息を引き取った。
「……嘘だろ……」
翔太くんがポツリと呟き、次いで大きく泣き崩れた。
私は、龍馬さんの大きな身体を揺さぶる翔太くんの手を、優しく握りしめる…。
「…しょう…た…くん…」
それからしばらくの間、私達は龍馬さんから離れることなく、声が枯れるまで泣き続けていたのだった。
その後、新選組から分離した御陵衛士が、現場に残された鞘を新選組の原田左之助のものと証言したこともあり、新選組の関与が強く疑われた。
また、海援隊士たちは紀州藩による、いろは丸事件の報復を疑い、十二月六日に、陸奥陽之助らが紀州藩御用人・三浦休太郎を襲撃して、三浦の護衛に当たっていた新選組と斬り合いになっている。
慶応四年四月に、下総国流山で出頭し捕縛された新選組局長・近藤勇は、土佐藩士の強い主張によって斬首に処された。また、新選組に所属していた大石鍬次郎は、龍馬さん暗殺の疑いで捕縛され拷問の末に自らが龍馬さんを暗殺したと自白するも、後に撤回している。
結局、龍馬さんを暗殺したのはいったい誰だったのか…。
今でも、それは謎に包まれている。
龍馬さんが亡くなって二週間後。
翔太くんと私は、再び、霊山護国神社参道中腹に眠る龍馬さんの墓前に足を運んでいた。
「結局、龍馬さんを助けることは出来なかったな…」
「…うん」
私達は言葉少なげにそう呟き合うと、墓前に花を添えた。
もう、とっくに涸れ果てたと思われていた涙がまた溢れ出す…。
「龍馬さん、俺達に生きろって言ってたよな…龍馬さんがこの時代で生きていたことを…いや、龍馬さんと俺達がこの時代でやって来た事を、未来へ繋げて欲しいと」
確かに、龍馬さんは息を引き取る前に、そう言っていた。
「俺、またあのカメラを探してみようと思うんだ。あの古ぼけたカメラを」
「カメラを?」
「ああ、もしかしたら…同じようにシャッターを切ったら未来へ帰れるかもしれない」
私が不安そうな顔をすると、彼はニコッと微笑んだ。
「俺、今までもそう思って一人でカメラを探してたんだけど、見つからなくて…」
「翔太くん…」
「龍馬さんが死んでからは、ずっとそのことも考えていたんだ…」
彼は、1%でも未来へ帰れる可能性があるのなら、試してみたい。そして、龍馬さんの意志を受け継ぎたい…と、言って微笑んだ。
その微笑みに、龍馬さんの笑顔が重なって見える…。
「それにさ、龍馬さん…俺が落ち込んでた時に、『人の世に道は一つということはない。道は百も千も万もある』って言って励ましてくれたことがあるんだ。失敗しても、その部分を見直してもう一度挑戦すればいいって…」
翔太くんは、何かを思い出すように空を見上げて呟いた。
「……そうだね。いつまでも暗い顔してたら、龍馬さんに怒られちゃうね」
「『おまんら、何いつまでも泣いちょるんじゃ!』ってな」
「うふふ、そうそう」
その声色と表情がおかしくて、私は久しぶりに声を出して笑っていた。
そして、形見のピストルを包んだ風呂敷を胸に抱えながら、私も空を見上げる。
龍馬さんもよく見上げていた、この広くて青い空を。
【つづく】
~あとがき~
龍馬さんの本編は、まだ花エンドしか読んでいないのですが…。このシーンは、本当に悩みました本編とも、実際の近江屋事件とも違う描き方となると、こげな感じかな…と。
この後の展開も、まったくの私の妄想世界になってしまいますが…また良ければ、遊びに来てやって下さいませ
今回も、遊びにきてくださってありがとうございました