<艶が~る、妄想小説>


今回も、また!てふてふあげはさんの素敵な絵をお借りして、物語を作らせていただきましたきらハートこの間も、慶喜さんと主人公ちゃんの絵をもとに、1シーンを書かせていただきましたが、絵を見て、パッ!と、あるシーンが浮かんで…。


元のイラストの題名は「ふたつの寝息」ですキラ


またもや、慶喜さん登場となりましたキャッ今回は、秋斉さんも登場どすウフフ


良かったら、また読んでやって下さいませキラキラ




【ふたつの想い】*慶喜×秋斉*


絵:てふてふあげはさん

作:小春



「しばらく会わないうちに、また綺麗になった?」


慶喜さんは、いつものようにふらっと現れ、菖蒲さんの代わりに足を運んだ私を笑顔で出迎えてくれた。


相変わらず、私の瞳を見つめながら甘く囁くそれは、いつもながら心を擽られる。


「これは、うかうかしていられないな…」
「何がですか?」
「お前を他の男に取られないように、もっと通いつめないといけないね」


どこまでが本気なんだか分からないけれど、いつも、この無邪気な笑顔に押されっぱなしで、何故か一人、胸をドキドキさせてしまう…。


「あの、お酒の他に、何か欲しいものとかありますか?」
「そうだなぁ…」


彼は、ほんの少し眉を顰めながら明後日の方向を見るようにして考え込むと、「お前が欲しい」と、言ってまた無邪気な笑顔を向けてきた。


「……なっ!またそんなことを言って…」
「あはは、お前のその顔が見たくて、つい。それはいつかのお楽しみとして、助六寿司を頼むよ」


彼は、そう言ってまた微笑みながら煙管をふかした。


慶喜さんの素性はよく分からないけれど、私が悩んだりしていると、いつもさりげなく優しい言葉をかけながら的確なアドバイスをくれる。


この笑顔で励まされる度、次も頑張ろう…という気持ちになれた。


慶喜さんは、人を惹き付ける何かを持っている。


私はいつも、そう思っていた。



それから、お酒とお寿司を堪能しつつ、彼はまた私の話が聞きたいと言い出した。


「今夜は…お前の子供の頃の話をしてくれないか?」
「いいですよ!その代わり、慶喜さんの子供の頃の話も聞かせて下さいね」


それからは、以前のようにお互いの思い出話で盛り上がっていった。


お互いに子供の頃は、こんなだった…とか、あんなこともした…とか、初めて耳にする事柄については驚いたり、笑ったり、くるくる変わる彼の表情が可愛くて……私は、夢中になって彼の話を聞いていた。


どれぐらい話していただろうか。


やがて、彼は大きな欠伸をすると、眠たそうにまどろみ始める。


「お疲れのようですね…膝枕でもしましょうか?」
「おっ、それはいいねぇ」


私は、笑顔でそれに応えると、彼は嬉しそうに横たわりやんわりと瞬きをした。


「お前がさっき話していた、子守唄とやらを歌ってくれないか?」
「子守唄を?」
「ああ、母上が歌ってくれていたという歌を、聴いてみたい」
「じゃあ、歌わせていただきますね」


私がまだ子供の頃、よく母に歌って貰っていた歌。


それは、音大出の両親が、結婚する前に二人で作詞作曲した恋愛の歌だから、子守唄では無いんだけれど…


なぜか、私が眠る前に歌ってくれていた、『恋文』という歌…。


懐かしさで胸がいっぱいになる中、私は心を込めて歌い始める。




~♪



花びら ひとつ


小川に浮かべましょう。


岸辺を 追いかけ辿り着くのは


辿り着くのは 藍い雪割草。


あなたの便り…。




*艶が~る幕末志士伝* ~もう一つの艶物語~




風鈴 ひとつ


窓辺に吊るしましょう。


軒先 微かに音色涼しく


音色涼しく揺れた 想いは…


わたしの便り…。



~♪




お父さんとお母さんが、初めて作った歌。


二人の想いが歌に込められているような…。


「……あれ、慶喜…さん?」


(寝ちゃった…)


きっと、疲れていたのだろう…。


私の膝の上で、穏かな寝息を立てている。


(…寝顔、可愛い……)


その安心しきった寝顔は、まるで子供みたいで…私は、一人顔を綻ばせながら、そっと彼の目元にかかった前髪を梳いた。


帯に挟んでおいた扇子を取り出し、彼の眠りを妨げないように静かに扇ぐと、彼の柔らかな髪がふわりと靡く。


そして、また声を抑えながら、子守唄を歌い始めた。



……そんな時。


障子が静かに開くと同時に、秋斉さんが姿を現した。


「そろそろ、お帰りの頃や思うて迎えに来てみれば…」
「お疲れだったんでしょうね…慶喜さん。膝枕をしたらすぐに眠ってしまいました」
「…今、歌っていたのは?」
「あ、私の故郷の…子守唄です」


私達の傍に腰を下ろした秋斉さんに、今までの経緯を簡潔に説明すると、彼は苦笑しながら慶喜さんの寝顔を見つめた。


いつもの慶喜さんを見つめるそれとは違い、とても優しげな瞳をしている。


「それにしても、優しい声で歌うてはったな…」

「き、聴いていたんですか?!」

「…聴こえてきたんや」


(廊下にまで聴こえていたなんて…)


「あないな声で歌われたら、慶喜はんが寝てまうのも分かる気がするが…」

「なんか、嬉しいです…ありがとうございます」

「せやけど、なんて間抜けな顔で寝てはるんや…」


ぷっと吹き出す私に、秋斉さんもほんの少し微笑んで、お互いにまた慶喜さんの寝顔を見つめる。


(…そうだ…)


私は、普段から気になっていた二人の関係を聞いてみたくなり、何気なくその事を尋ねると、秋斉さんは私に微笑みながら、子供の頃からの仲良い友人の一人だと、教えてくれたのだった。


二人が口を開く度に、皮肉めいた会話をよく耳にしてきたから、とても仲の良い間柄なんだろうな…とは思っていたのだけれど。


きっと、幼馴染みたいな感じなのだろうか…。



「……んーっ」


寝返りをうつ拍子に、慶喜さんの微かに開いた瞳がまどろみながら私を見上げた。


「…いつの間にか寝ちゃったのか…」
「はい。起こしてしまいましたね…」
「夢を見たよ…」

「どんな夢を見たんですか?」


私の問いかけに、彼は、「子供の頃の夢だった」と、言って微笑んだ。


「きっと、そんな話をしていたからでしょうね…」
「そうかもしれないな。弘道館で、気持ち良さそうに眠る子供達を、上から見下ろしていたような…」


『弘道館』とは、徳川斉昭(とくがわなりあき)という人が設立した藩校の一つだそうで、慶喜さんは、五歳の頃からそこで勉学に勤しんでいたらしい。


そこは、子供から大人まで一緒に学べる寺子屋みたいな場所で、厳しい英才教育を課されていたと、以前話してくれたことがあった。


「みんな、思わず抱きしめたくなるような可愛い寝顔だったよ…」


起き上がり、秋斉さんを見つめるその瞳もまた、とても穏かだった。



それから私は、お座敷を後にする慶喜さんと、それを見送ろうとしている秋斉さんに挨拶をして、別のお座敷へと向かった。


そのお座敷へ向かう途中も、さっきの慶喜さんの幸せそうな寝顔を思い出しては、一人顔を綻ばせていた……。




慶喜×秋斉 side



「無防備すぎる…」
「あの子の温もりを受けているうちに、つい…ね」


慶喜は、秋斉の一言に苦笑し、揚屋の玄関先から夜空を見上げながら、またさっきの夢を思い出して顔を綻ばせた。


「今の俺達には、誰かの温もりが必要なんだよ…きっと」
「そない呑気な…」


「特に、お前にはね…」


そう言って、慶喜は横目で秋斉を見やると、大門のほうへ歩き出した。


(……お前がそんなだから…)


細められた瞳は、小さくなっていく背中を見つめたまま……


やがて、その背中が雑踏の中に消えたのを確認すると、彼は眉を顰めながら不退転の覚悟で呟いた。



「…全ては、明日を生き抜く為に」





*艶が~る幕末志士伝* ~もう一つの艶物語~




夢に見る……


共に生きると、いつの日も…


密かな願い、


……月のみぞ知る。





【 END 】




~あとがき~


この絵を見た時、もう、きゅーんとしてしまって…パッ!と、こんな1シーンが浮かびましたキラキラそして、何度もこの絵を見返しているうちに、切なくなってしもて…泣


勝手ながら…詩と、短歌は考えに考えて、作らせて貰いましたウフフ


詩のほうの時代背景は、現代なんだけど…この時代の彼らにも、わかりやすいような詩をつけさせていただきましたキャーラストの短歌は、秋斉さんの気持ちを込めさせていただきましたアオキラ


ちなみに、徳川慶喜は5歳の頃から、弘道館に通わされていたらしく、厳しい英才教育を受けていたらしいです涙本物の徳川慶喜は、生真面目な一面も持っていたらしいですなにこっ


俊太郎様の花エンド後も、沖田さんの花エンド後も、高杉さんの鏡エンド後も、十六夜の月も、艶龍馬伝も…続編が滞ってますね涙マッタリですみませんが、こちらも頑張りまふきらハート


今回も、遊びに来て下さってありがとうございましたきらハート



てふてふあげはさんのブログはっ!

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紙の上の『喜・怒・哀・楽』