<艶が~る、妄想小説>


今回は、以前書いた、『相思』*慶喜&秋斉* の続きみたいな感じで書いてみましたキラ今回から、俊太郎様や他の旦那はん達にも絡んで貰ってニコ 


今回からは、慶喜さんと俊太郎様との間で挟まれる主人公ちゃんを、自分なりに書いて行こうかときらハート


良かったら、読んでって下さいませにこっ




【相思】 第1話 *徳川慶喜×古高俊太郎*



いつだったかな……慶喜さんが私の部屋に泊まっていったのは。


私は、いつものようにお座敷へ出る準備を済ませ、窓から外を眺めながら慶喜さんとの一夜を思い出していた。



『さ、こっちへおいで…』


(……色っぽかったなぁ、あの時の慶喜さん…)



まだ、初春を迎えたばかりの少し肌寒い日だった。


私達は、秋斉さんの部屋で時が経つのも忘れるほど語り合って……深夜に慶喜さんを帰すことは出来ないし、秋斉さんは風邪を引いていて泊められないからと、いう理由で、なぜか、私の部屋に慶喜さんを泊めることになってしまったのだった…。


あの夜……。


彼は布団の上に横になり、肩肘をついて頭を掌で支えながら、こちらに色っぽい目線を向けると、甘い声で囁いた…。



*艶が~る妄想小説* ~もう一つの艶物語~


『一人で寝るより、あったかいだろう?意地を張らずに傍においで…』


しなやかな指、細められた目、端整な唇……そして、艶(あで)やかな長い髪…。


微かに香る煙草の匂いが、私を優しく包み込む。


大好きな人と、一緒の布団に寝たのはあの時が初めてだった…。すぐ傍に彼の温もりを感じ、身体が震えるくらい嬉しくて……。


彼の温もりを感じながら、いつの間にか深い眠りに誘われ……朝、目を覚ますと、すぐ傍で彼が微笑みながら私を見つめていた。


『おはよう、よく眠れたかい?』
『お、おはようございます…』
『昨夜は、せっかく二人が結ばれる良い機会だったのに、もったいないことをしたな。不覚にも先に寝てしまうとは……』
『け、慶喜さん…』
『次は多分、我慢できないだろうな』


そう言って、私の前髪に優しく触れながら……また、泊まりに来ようかなと、言い残して帰って行ったのだった。



あれから三ヶ月の間、慶喜さんが島原に姿を現すことは無く、どんなお仕事をしていて、どうして姿を見せなくなったのかも分からないまま、恋焦がれる日々を過ごしていた。


(また、会いたいなぁ…)


そんな気持ちを抱えたまま、ゆっくりと立ち上がり鏡台の前で姿勢を正すと、お座敷へ急いだ。



そして、いつものようにお座敷へ足を運ぶと、優しい眼差しの枡屋さんが迎えてくれたのだった。


「枡屋さん、お久しぶりです」
「また、あんさんのかいらしい笑顔に会いとうて足を運んでしまいました…」
「いつも、お上手ですね…」
「いえ、本心どす…」


私は、赤面しながら差し出された器にお酌をすると、彼は美味しそうに喉を鳴らしながら飲み干した。


「……今夜は、特に綺麗やな…恋でもしてはるんどすか?」
「えっ?い、いえ…」


細められた瞳と、ほんの少し微笑んだ口元を目にして、私は自然と胸が高鳴るのを抑えこんだ。彼は、俯く私の顔を覗きこむようにして、くすくすと笑うと、「図星やな…」と、言って微笑んだ。


「そんな人、いませんよ…」
「そないな真っ赤な顔をして…相変わらず、嘘がつけへんお人や」
「え、そんなに赤いですか……」


彼に見つめられたまま、またお酌をしようとした時、動揺からなのか…手元が狂い、少量のお酒が彼の膝元に零れた……。


「おっと……」

すぐに帯に忍ばせておいた手拭いを取り出し、何度も謝りながら彼の膝元に軽く乗せて拭き取った。


「気にせいでもええ、これくらいならすぐに乾いてしまうさかい」
「本当に、申し訳ありませんでした…」
「それより……」


彼は、私の腕をそっと引き寄せると肩を抱きしめながら、「あんさんの思い人が気になりますね」と、耳元で囁いた。彼の温もりをすぐ傍で感じながら、その低くて柔和な声にぞくぞくと肩を震わせていると、不意に、胡坐をかいた彼の膝元にちょこんと乗せられた……。


「…あっ……」
「わてだけの子猫や思うてましたが…どうやら、恋敵がおるようや…」


腕の中で抱き竦められ、身動きが取れないまま彼の端整な顔が少しずつ近づいてくる…。


「ま、枡屋さん……」
「このかいらしい瞳も、ほんのりと紅色の頬も、柔らかそうな唇も……」


彼はそう言いながら、しなやかな指で私の目許に優しく触れ、頬に触れ、そして唇に触れた。その温かな指に触れられる度、心臓が大きく飛び跳ねる…。


「すべて、わてのもの……そう、思うてました」


節目がちに呟く彼の寂しそうな瞳を見つめた途端、慶喜さんの微笑んだ顔が枡屋さんに重なって見えた…。


「……あっ…」


(……慶喜さん……)



「……その男のことが気になってますか?」
「あの、私……」
「ほんでも、わてがあんさんに想いを寄せとることだけは、覚えといて下さい…」


彼は、慈しむかのようにそっと私を抱きしめると、切なげに囁いた。


(枡屋さんが…私のことを?……でも、いつものお世辞の一つだよね…きっと…)


その胸に頬が触れるくらい間近で抱きしめられながら、彼の鼓動を聴いていた。トクン、トクンと波打つそれは、とても早くて…………。


「枡屋さん……あの、何かあったのですか?」
「いいえ、なんも……少し飲みすぎたようや。すんまへんどした……あんさんを困らせるつもりはおまへなんや。せやけど……今宵だけは、その男のことは忘れて……」


私は、躊躇いながらも、彼の胸に顔をうずめたまま小さく頷いた。


それから、彼に楽しんで貰う為に三味線を奏でたり、他愛のない話をしながら過ごした。


彼は博識で、いろんな話をしてくれる。今までもそうだったけれど、そのどれもが、素敵な話ばかりで……私はまた、いつの間にか夢中で聞き入っていた。



終始、笑顔で接してくれた彼は、揚屋の玄関先で見送る私の腰を優しく引き寄せると、耳元で囁いた。



*艶が~る妄想小説* ~もう一つの艶物語~


「今宵は、楽しい一時をおおきに…」
「……枡屋さ…ん」
「……また、会いに来ます」


彼はそう呟くと、そっと私の身体を離しこちらに背を向け歩き出した。


その後ろ姿が見えなくなるまで見送ると、枡屋さんの温もりを思い出して身体が震え始める…。どこまでが本気なのか分からないけれど、あんなふうに愛の言葉を囁かれたら嬉しくないわけがない。


でも………。


「慶喜…さん……」


「なんだい?」
「えっ?」


思わず声に出して呟いた瞬間、背後から声がして振り返ると、たった今、思い描いていた一番会いたかった人が、揚屋の暖簾を潜りながら私を見つめていた。


「俺の名を呼んでくれるとは、嬉しいな」
「慶喜さん!ど、どうしてここに?」
「ちょっと、秋斉に用事があってね。今まで、話していたんだ」
「そうでしたか……」

「相変わらず可愛いね…」


すっと、彼の温かい手が私の頬に触れると同時に、その手を両手で愛しむように握り締めた。


会いたくて堪らなかったかった人が、今、目の前にいる…。



「それと、この笑顔に会いたくてね…」


彼は、無邪気な笑顔でそう言うと、もう片方の手でそっと私を抱きしめてくれた。


この温もりこそが、私の心を癒してくれる…。


寂しい気持ちを慰めてくれる…。


彼の広い胸に顔をうずめた次の瞬間……耳元に柔らかい温もりを感じ思わず肩を竦めると、彼は私の耳元で不思議そうに囁いた。


「この香りは……沈香かな…」
「えっ……」

「好きなのかい?この香りが…」

「いえ、どうしてですか?」
「いや…そうか……」


彼は、ほんの少し沈黙すると、「今夜の客は、随分とお前に直向な想いを寄せていたみたいだね」と、言ってそっと身体を離した。


(……あっ……)


枡屋さんの香りが、いつの間にか髪や着物に残っていたのだろうか……。なぜか、全てを見透かされたかのような彼の言葉に、ほんの少しうろたえてしまう…。


「今夜はもう、帰らなきゃいけない」

「慶喜さん…」

「……また来るね」


彼は、そう言って微笑むと、大門の方へと歩き出した。


「慶喜さんっ……」


小さな声は雑踏にかき消され、彼の背中を見送ることしか出来ずにいた…。


そして、彼の意味ありげな言葉に不安を抱き始める…。


(私は……慶喜さんのことが……好き……)


でも、なぜか……。

さっきの枡屋さんの言葉が、温もりが……一瞬だけ蘇った。



『わてがあんさんに想いを寄せとることだけは、覚えといて下さい…』



私は、複雑な気持ちを抱えたまま、しばらくその場に立ち尽くしていた…。




【相思】2話 へ続く



~あとがき~


本当は、慶喜さんと主人公のお話を書こうとしていたんですけど…なぜか、俊太郎様が出てきてしまって涙俊太郎様との三角関係って、どないなるんだろう?と、思って…涙二人を絡められるほど書き慣れているわけではないのに……これから、どうなるのやらガクリ(黒背景用) この後、どういう展開が一番燃えるのだろう?(笑)しかし、「わての子猫」発言、とうとう使ってしもうたよぉ汗


これからは、沖田さんの「十六夜の月」、俊太郎さまの花エンド後、龍馬さんの艶物語を書きつつ、リクエストがあったので、新たに沖田さんの花エンド後も書いて行くことにしましたキャー


それぞれの旦那はんたちとの物語も書きつつなので、本当にマッタリペースになりますが…何でも挑戦することに意義がありますなぁウフフ


出来るだけ素敵に描けるように、それぞれ頑張ります~ニコ


そして、「新撰組血風録」!沖田さんがぁぁ…池田屋で……。・゚・(*ノД`*)・゚・。思わず、泣いた…。辻本祐樹くんの沖田は最高だねぇ~。ほんまに!


今回も、遊びに来て下さってありがとうございましたテレッ