サイスポだったかバイシクルクラブだったか忘れたけれど「他人と被らない自転車に乗りたい!」みたいな特集があった。あった気がする。たしか雑誌の表紙に書かれていた。

 

それを見たとき私は「そんなこと考えたこともなかったな」と思った。思ったような気がする。

いろいろとあやふやで申し訳ない。

 

 

 

 

他人の乗っている自転車に対してそんなに興味を持つものだろうか?

「私は人の自転車をまったく気にしません」

と言い切ってしまえばもちろん噓になる。

知り合いがどのメーカーのどの車種に乗っているかはだいたいアタマに入っている。

珍しい機材を見つけたら注目するし話題にもする。

でも他人との機材被りについて嫌な感じを持ったり、オンリーワンの自転車にあこがれをもつことっていままで全然なかった。

 

なぜだろうか。

 

 

 

 

 ①乗っているうちに何かと手を加えるので、自然とオンリーワンの自転車を保有している

消耗品のバーテープやタイヤは乗っているうちに交換が必要になる。そもそも新車購入時に取り付けるベル、ボトルケージなどなどの組み合わせで他人と完全にかぶることはまずない。現在私がよく使うロードバイクはMERIDA RIDE200というエントリーモデルだ。高校生からも「安い機材のおじさん」と揶揄されている。コンポーネントはSORAがついていたのだが気づいたらブレーキ以外はTIAGRAになっていた。ブレーキはULTEGRAだ。TIAGRAは他の車両から移植した。ブレーキは前の会社の後輩君からもらったものだ。どれも思い出深い中古パーツだ。ひとつひとつのパーツに思い入れがあるからこの自転車はオンリーワンなんだ。

 

 

 

 

②自分の保有している自転車が「いい自転車」の条件だから

「いい自転車」ってなんだろう。ひとそれぞれに答えがあるだろう。ショップ店時代はその人その人にとっての「いい自転車」の条件をできるだけ汲み取って提案していた。販売の仕事から手を引いてひとりの自転車好きに戻った時、私自身の「いい自転車」の条件を考えてみた。速く走りたい、遠くへ快適に行きたい、メンテナンスが簡単、荷物がたくさん積める、そのほかいろいろ。全部の条件を満たしてくれる自転車はたぶんない。ひとつの条件に対応した1台を選ぶ。自然と台数が増える。困ったものだ。

もう一歩引いた目線で考えてみる。ジャンルや目的を離れて「いい自転車」を考えてみると、それは自分が保有していることだと考えた。

だって自分が保有してない自転車には乗れないし、部品交換もできないから。

たしかに最新のカタログにはよりグレードの高いパーツを乗せた、トレンドを反映したかっこいい自転車がたくさん載っている。「いいな」と思う。あるいは知り合いがカーボンバイクを納車して得意げな顔をしている。「いいな」と思う。

でも自分の乗りなれた自転車を見ると「いいな」の求心力はたちまちどこかへ行ってしまう。そうだそうだ、私にも私のバイクがあったっけ。そうして私は私のバイクで走り出す。たしかにこいつは安物で古くてボロでくたびれている。でも乗っていると本当にいい気分なんだ。それに乗っている本人の目が見ているのは軽快に流れる景色ばかり。塗装の剝げや古臭い設計のディレーラーなんか目に入らないんだ。

 

 

 

 

 ③世界には私とその1台しかないから

試乗会に行くと「これはいい!」と思う自転車にたくさん出会う。乗り味が好きだ。かっこいい。ほしい。でもお財布の中身は有限なのでなかなか買えない。買えないのでカタログを眺める。試乗会で気になった5台くらいをネットで検索して眺める日が続く。1日に2回くらい見る。1か月もたつと5台のうち2台くらいが落第して3台に絞られる。半年もすると1台くらいに絞られる。それで購入に至るときもあるし、最後の1台も落第することがある。

逆に店で乗った1台に運命を感じて即決するときもある。こういう時は後で後悔することがない。ご縁だと思う。

いずれにしても自転車を選ぶとき、世界には私とその1台しかない。いや、ホントは家にもう何台もあるのにね。

そうやって選んだ1台だから他人と同じバイクだったとしてもちっとも気にならない。むしろ「その1台を選ぶなんて気が合うね!」とうれしくなる。

 

 

 

 

こうして考えてみると「他人の自転車が気にならないのは、他人の自転車が気にならないからだ」ということになる。まあ私がそういう性格なんだろう。

別に他人との機材被りを気にすることを否定する気はない。むしろそっちのほうがメジャーなのかもしれない。

ただ、自分が選んで一緒に走っている自転車を「他人と被っているから」という理由だけで降りてしまわないでほしい。少なくともサブバイクにするとか倉庫に吊るしておいて10年後に乗るとかしてほしい。機材も、それまでに走った思い出ももったいないことにはしないでほしいね。