私の家の近くにある公園の桜は、既に散ってきてしまった。
去年は、満開の桜を堪能することが出来たが
今年は、ちょっと出遅れた。

冬の間、風邪を引いたこともあったが、まぁ、殆どがサボり癖で
走るのを止めていた。

それがここ最近のポカポカ陽気と、醜く出っ張ったダラシナイ腹部を
見るにつけ、もうそろそろトレーニングを開始しないと、ライブでは
醜い姿を皆さんに晒すことになる。

その恐怖感から、ここ数日、必死に走り、腕立て、腹筋と鍛え始めたのだが・・・・・・
いけねぇ~~~
やりすぎた・・・・・・体調がおかしくなった!!
バカヤロウ~~~~歳を考えろ~~~

てなてな・・・最近の私ですにひひ
それから最近、若い人のファンクラブへの入会が増えてきている。
19歳とか20代前半の人とか・・・大変うれしいことだが
どこでXライダーと接触したのか・・・5月の第二回速水ファンクラブの集いに
参加できたら、是非、聞いてみたいものだ。



FUKA 9


 神介の他に従業員は六人居るが、給料をまともに貰っている人は一人も居ない。何故かといえば、それぞれ麻雀は上手いのだが流れの分からない卓にいきなり入るので勝ちにつながらない。たまに大勝ちすると常連のお客から文句が出る。「従業員がお客から金取ってどうするんだよ」とプレッシャーを掛けてくるのだ。


 それでも従業員はエヘラエヘラと笑いで誤魔化し、麻雀を打つが勝てるわけが無い。従業員の負け分は給料から差っ引かれ、給料日には殆ど残っていないということになる。それでも神介以外は全員が雀荘の寮に入っており、寝るところには困らない。ここに居る連中は博打に取り憑かれ、女房からも子供からも逃げてきた吹き溜まりの連中だ。


 ただ人が悪いわけではなく、シャブ中のように博打の世界から抜けられないのだ。麻雀、競馬、競輪、競艇、二人集まればチンチロリンに花札、一年中賭け事をしている。      


 いつか、一発逆転を夢見て……しかしそんな日は一生訪れない。


 神介は何故このバイトを選んだのかといえば、劇団の拠点が池袋という事と、芝居の時は休ませてくれるからだ。


 神介は麻雀が出来なかったが、その方が良いと支配人が言うので勤めた。しかし出来なくても人が居ないとヘルプをさせられるので自然に覚えてしまった。


 神介は賭け事に全く興味が無い。それが良いのか麻雀を打ってもいつもトントンだ。勝とうという気が無いのだ。


 それと変な霊感が神介には有る様で、当たり牌が分かるのだ。だから打ち込まない、したがって負けないのだ。


 雀荘には雑多な人種が現れる。サラリーマン、商店主、キャバ嬢にソープ嬢、それにやくざ。入り口に「暴力団お断り」と書いて在るのだが、違法麻雀をやっている以上無下に断れない。支配人が明かにそれと分かる客は断っているが、それでも地元のやくざはやってくる。支配人もやくざが問題を起こさない限り目をつぶっている。ここの支配人も元を正せば何かあるらしい、それでなければ池袋というやくざの巣窟のような繁華街で違法な麻雀荘の支配人は勤まらない。


 最近は中国人のお客が来るようになった。彼らは日本人とは麻雀をせず、中国人同士で卓を囲む、ひと際やかましく中国語が飛び交い、万札が乱れ飛ぶ、かなり高いレートで勝負しているらしく、万札の束を卓に叩きつけていたりする。


 支配人はそれを横目で見ながら注意しない。この中国人たちはチャイナマフィアで、そうとうやばい連中らしい。それに帰るときは支配人にチップを置いていくので、支配人も痛し痒し、といったところだ。


 神介はこのアルバイトを始めて三年になるが、この仕事場が気に入っている。何故かといえば、ここに来る客も、従業員も、個人の人間性などに誰も興味がないからだ。常連達も雀荘では仲良くしているが所詮は金のやり取り、それ以上でもそれ以下でもない。稼げるか鴨になるか、それだけの話だ。だからいつも負けている奴にはみんなが優しい。


 なまじ人間性のことなどに触れようものなら、ここは博打場だ、ちょっとしたことで喧嘩が起こる。だから人間性のことなど誰も言わない。それがルールだ。


 神介は自分のことを聞かれるのが一番苦手で、そこに触れてこないこの仕事場は、精神的に楽なのだ。


 


 


 目黒署の刑事部屋で黒滝は憮然とタバコを吹かしていた。撮影所の首吊り遺体に関し、何の疑義も出ず自殺に決まってしまったからだ。黒滝の言い出した踏み台の件など一顧だにもされず、「誰かが片付けたのだろう」で終わりだ。黒滝はもう少し調べる必要があるのではないかと、強行に主張したが他の刑事は「また黒滝の一丁噛みが始まった」と面倒臭そうに捜査会議を終了した。


 黒滝にはこの程度の無視など蚊が刺したほどにも感じない。刑事なんぞというものは所詮人間が信じられない片輪の集まりだ。「この嫌な顔の奴らを見ろ、アホどもが」と心の中で黒滝は呟いた。


 黒滝はスタンドプレー多く、上司からも後輩からも疎んじられ、所轄を転々とさせられているが、二十代後半から三十五歳まで警視庁の捜査一課に抜擢され、多くの実績を残した。しかしその皮肉れた性格が上司に嫌われ所轄に戻されたのだった。


彼独特の刑事の勘は鋭く、珍重されることもあるのだが、現在の捜査方針では個人の勘などに頼らない捜査が主流で、黒滝の昔風のやり方は捜査の邪魔とされている。


 黒滝は刑事に一番大事なのは勘だと思い込んでいる。証拠探しはそれを確実にするための手段だ。


 殺人事件の場合、その犯人の九割は害者の身近な人間だ。刑事は多くの場合その犯人に事情聴取している。殺人犯はいかに平静を装い刑事と対面しても心の中の動揺は覆い隠せない。


 それを匂いで感じ取るのが刑事だと黒滝は思っている。そしてその信念は、刑事生活三十年の間に確信に変わっている。


 その刑事の勘でいうと、あの工藤神介はどう考えてもおかしいのだ。メーク室に音も無く入り、その存在を自分にも気付かせないほどの周到さ。虫も殺さないような穏やかな表情で、そのくせ自分の心の中は決して覗かせない。害者の浅野とは確執があった筈なのに、何の感情も表さず「いえ、別になにも」と答えた。死ぬ前日、浅野が神介に罵声を浴びせたのは、何人かのスタッフが聞いている。


 このタイプの殺人犯に黒滝は何度か遭遇した。心が凍っているのだ。殺人を犯したことに何の後悔も動揺も見せない。だが黒滝は、「俺の目は誤魔化せないぞ。必ず尻尾を掴んでやるからな」と工藤神介の顔を思い浮かべていた。