先走り気味の質問があるので答えておくが
6月の19日の退院の時点では、生検の結果はまだ出ていない。
この検査は時間が掛るそうで、最終結果が出たのは7月の12日だ。
だからそれまでは、あくまでも自己免疫性胆管炎の疑いなのだ。
 
で……話は前に戻る……
6月12日にあの「内視鏡的逆行性膵胆管造影(ERCP)」をやることになった。
その前日、i医師よりその説明と承諾書へのサインがあった。
 
この検査の問題点は、胆管の炎症の部分に行く前に、膵臓に繋がる管があるということだった。
造影剤がその膵臓に繋がる管に入ってしまうと膵炎になってしまうのだそうだ。
可能性は低いが、そのことも頭に入れておいてくれとi医師は私を安心させるように話す。
 
しかし・・・この検査、そんなにやさしい検査ではなさそうだ……
他の検査の説明と、やっぱり違うのだ。
 
検査は明日の午後4時から、30分ぐらいで終わり、少し眠くなる薬も入れるのでご心配ないようにとi医師は帰った。
 
翌日は珍しく、i医師自身が病室に来て点滴の針を通した。
かなりしっかり固めている。
 
私は点滴の袋をさげたまま、検査の開始を待ったがお呼びが掛らない……
4時・・・4時半・・・そして5時・・・5時を過ぎて、やっと看護師が迎えにきた。
私は点滴棒を押しながら、2階の検査室に向かった。
 
検査室の前で待っているとi医師が検査室から出てきた、そして「一番最後にゆっくりとやりたかったので、お待たせしました」とあの優しい笑顔で語りかける……う~~ん……良い笑顔だ……
 
私は毎日顔を合わせるi医師の顔を、誰に似ているのだろうとズーッと考えていた。
一番芸能人で似ているとしたら、映画監督の伊丹十三さんの若い頃、それもあんなに神経質な顔ではなく
思い切り笑顔の時の伊丹さんだ……
 
でも・・・それでもしっくりこない・・・でも誰かに似ているのだ・・・・・
そしてその時まさに、ピーンと来た!
「アッ! そうだ! この顔は現代の顔ではない、まさしくこの顔は平安朝の顔なのだ……光源氏などが描かれている絵巻物に出てくる顔だ!!」・・・それに阿弥陀如来の顔を合わせると、i医師の顔になる。
 
「そうだ! そうだ!」などと心の中で騒いでいるうちに私は検査ベッドに寝かされた。
そして鼻から細い管を通され、胃カメラ用のマースピースを口にくわえた所で意識が消えた……
 
そして私が意識を取り戻したのは、夜中の12時を過ぎていた。
 
その間、私は何も覚えていないので、後は女房の解説だ。
 
うちの奥さんも検査は30分ほどで終わると思っていたので、そのつもりでいたのだが
一時間経ち・・・二時間経っても私は帰ってこない……何かあったのか・・・・・相当心配になり
11階のエレベーターの前で待っていたそうなのだが
私が検査室に降りていった2時間半後・・・目の前のエレベーターが開き・・・やっとベッドに寝たままの私が戻って来た。
 
そしてベッドに付き添っていたi医師が、満面の笑顔で「奥さん! 成功しました! 成功しましたよ!!」と
第一声を掛けてくれたそうだ。
 
私の奥さんはi医師の普段には見られない喜び方を見て・・・「やっぱり難しい検査だったのだ」と実感したと
述懐していた。
 
                                                                 つづく