私は都合三回教習所に通った。
何故かといえば途中でお金が無くなり、半年間の有効期間を過ぎてしまったからだ。
二回目は第三段階まで行ったのに、悔しいったらありゃしない。
 
三度目の正直で調布の教習所に通ったのだが
その時は教官が大映の先輩俳優さんで、全部その先輩に付いてもらい
馬鹿っ話しをしているうちに全教程が終わってしまった。
さすがに仮免試験の時だけは他の教官に代わられ
一時間だけ余計に教習を受けさせられた、でも28時間で終わった。
だからみんなみたいに、根性の悪い教官には一度も会っていない。
バイクの中型免許は我々の時は付いておらず、ライダーの主演が決まった後
大急ぎで取りに行ったのだ。
今のバイクの免許と違って、私のバイクの免許は大きさに制限がない。
 
さて、お待たせしました…病院のその後です。
最初に行った病院の看護婦は総合病院への紹介状と
場所を丁寧に説明し、午後の診察は2時からだが12時半から受け付けているので
12時半に総合病院へ行ってくれと云う。
 
私はそんなに混んでいるのかと訊ねた。
すると看護婦は「それは分からないがとにかく行ってくれ」と云う……
 
私は家に帰り一休みしたかったのだが、不承不承、そのまま電車に乗り込んだ。
二つ先の駅から病院までは歩いて三分ぐらい、しかし熱い!!
クラクラして倒れるんじゃないかと思うぐらい外は熱い!
 
病院に入って涼しいクーラーの下で、この火照った体を冷やそうと思ったのだが
待合室の椅子に座ったとたん、汗が噴き出してくる。
節電の影響で病院内は冷えていないのだ。
 
それでも20分ぐらいしたら汗は引き、涼しくはないが耐えられる暑さになった。
時計を見ればまだ一時・・・診察には一時間もある。
 
私はタバコを吸おうと病院の外へ出た。
病院の左側の日陰で吸おうと思ったのだが、そこにはばあさんがドッカと腰を下ろし場所を占領している。
 
私はしかたなく、直射日光の当たる右側の白い塀沿いの花壇のコンクリートに腰かけ
煙草を吸い始めた。
前の道路は片側一車線の道路で交通量は少ない。大きい病院なので道路の反対側も
入院の病室のようになっている。
 
車が忘れたように腰かけた私の前を通り過ぎてゆく。
直射日光を浴びて、せっかく引いた汗がまた噴き出しそうになって来た。
 
私の右側から一台のピカピカに磨いた黒のワンボックスカー来た。
その車がゆっくりと私の目の前を通り過ぎようとした時
ピカピカの車体に私の姿が映り込み、そしてその私の右横に、白い手術衣を着た女が立っている!
 
私は吃驚して右後ろを振り返った……もちろん誰も居ない、後ろは病院の白い壁だ。
それに花壇の幅は30センチ程しかなく、そんな所に人は立てない……
 
私は目の錯覚かと思った、あまり熱いので幻覚でも見たのか……
 
だが吃驚したが恐怖は無い…それでそんなことで煙草を止めるのもなんだと思い
そのまま煙草を吸っていた。
 
すると3分も経たないうちに、さっきの黒いワンボックスカーがゆっくりと今度は左側からやってくる……
 
私はよし! 今度は目を皿のようにして車体を見てやろう
どうせ見間違いに決まっている。
 
黒いワンボックスカーは何のためにそんなにゆっくり走っているのか分からないが
スルスル、スルと私の前を通り過ぎようとした。
居た!!!やっぱり居た!!!……私の右後ろに白い手術衣を着た女が立っている
 
しかし後ろの壁には何にもいない……
私は意地になって来た…よし! 何が起こっているのか絶対確かめてやる!
と、私はその場所で煙草を吸い続けた。
他の車も通るのだが、他の車の車体には私しか映っていない。
そして20分ほどその炎天下で、黒いワンボックスカーを待ち続けたが
もう二度とその車は姿を現さなかった……
 
これが吃驚の病院での出来事だ……
そしてその夜……異変は自宅で起こったのだ……アァァァァァ~~~~
 
                                                             つづく