みなさんもそろそろお気付きだろう。
「首が曲がってしまったおはなし」で始まったこの話もとうとう終盤だ。
 
話としては一回目の卒業公演のことから、一ヶ月チョイしか経っていない。
この一ヶ月に、まぁあるはあるは、人間というのは、ある時期、短時間に、これでもかと色々なことが起こる。
この一ヶ月は私にとって何回目かの激動の時期だ。
 
このような事は、現在六十歳になるまで、何度もあった。
人生というのは、幸も不幸も固まって押し寄せるのが好きなようだ。
 
逆にある時期をすっぽり忘れているということもある。
「あの時期の二年間・・・俺は何をしていたのだろう?」と
多分そういう期間は、比較的無事に生きていたのだろう
 
そういう意味で自分の事を振り返ると、私は知人や友人に「お前、そんな昔のことよく覚えているな!」
とよく言われる。
 
それは、特段私が記憶力が良い訳ではなく、私の人生がいつも暴風雨の中に居た、ということだろう。
今もそれは同じで、あと十年もしたら、また書くことがたくさんでてくる・・・
 
で・・・前回の続きだ・・・
夜が白々と明けてきて、私は別にその日、仕事があったわけではないのだが
一刻も早くこの場から脱出したくなって・・・そろそろと布団の中から抜け出し
帰り支度を始めた。
 
眠っていたとおもった○子が「どうしたの? 帰るの・・・」と眠たそうな声で訊いてきた。
「うん、撮影所にいくから、行くわ」と答えると
「珈琲・・・飲む?」と○子が云う、私は「いいよ、いいよ、寝てて・・・また来るから」と笑顔を振りまき
靴を履き、ドアノブに手を掛けた瞬間
 
「シゲちゃん、土手のところに白いカローラが駐車してたら・・・来ないでね」という声が
私の背中に追い討ちをかけた・・・・・・ぎゃぁぁぁ・・・・・・
 
私は一瞬何のことか判断できなかったが「分かった」と、明るい声で応え、○子の部屋を後にした。
 
                                                             つづく