たまたまCS放送を観ていたら、大魔神・橋本力・出演と番組タイトルに出ていた。
橋本力さんは、大魔神の中に入っていた俳優さんだ。
ああ、力さんはまだお元気でいらっしゃるんだ。
そんな思いで四十年ぶりに力さんの姿が拝見できると、私はTVの画面に集中した。
 
画面は大魔神フリークの人とアナウンサーが、当時の映像やスチール、お宝写真などで
えらく盛り上がっている。
大魔神フリークの人は各映画会社の特撮にも詳しく、大映と他の映画会社の特撮の違いを
当時の裏話などを交え、大映の特撮の見事さを紹介する。
大映出身の私としては、何故かとても嬉しい・・・(^^♪
 
私もガメラで特撮を経験したが、正直な話、雑だった・・・・・・
大魔神の特撮と、私の体験した特撮はどこが違うのか、と聞いていたら
それは撮影所の違いだった。
大魔神は大映京都撮影所、ガメラは東京撮影所だ。
はっきり云って、京都のスタッフの方が物にこだわる。
大魔神に壊される建物の瓦を全部焼いて造ったエピソードなど、丁寧な物造りに吃驚だ。
京都の職人的な姿勢は大魔神の画面に生きており、この辺は東宝ゴジラのミニチュアと
大違いで、これも大魔神の魅力になっている。
 
私の出演したガメラは、大映が倒産する寸前の作品だった為か制作費に困窮し
そんなに手間隙をかけていなかった。
それは新人でド素人の私にも分かった。
 
大魔神や妖怪大戦争のスチール写真に、特撮監督の黒田義之さんの姿があった。
私が始めて京都で撮影した「海兵四号生徒」の監督だ(この作品はメイン監督)
黒田さんは、ライダーで云ったら、平山プロデューサーととてもよく似ている
紳士で優しい人だった。
 
海兵四号生徒、インしてからすぐ、私と伊吹剛が黒田さんのお宅に招待された。
伊吹も一緒に出演しており、伊吹は京都大映のニューフェースで私と同期だ。
 
黒田さんは、大映子飼いの私たちを、応援の意味で食事に呼んでくれたのだろう。
この作品の主役は渡辺篤史、私と同年代の俳優が沢山出演している。
 
黒田監督「いいか、東京から来た俳優に負けるなよ。大映の若手俳優の力を見せてやれ」とおっしゃった・・・
私たちは 「はい!」と答えたが・・・黒田さん・・・僕も東京からきたんですけど・・・とは云えなかった・・・(~_~;)
 
黒田監督のお宅にお邪魔して吃驚したのは、おっそろしく美人の奥さんだ!・・・・・・
よくは覚えていないのだが、確か黒田監督は新婚で、部屋の中は新婚ムードプンプンで
私はなぜ黒田監督が、こんな若い美人の奥さんを手に入れることが出来たのかそれが不思議で
まさか、直接聞くことも出来ず、そんなこんなで、飲めない酒をしたたか飲んで・・・・・・
 
で、フッと気が付くと、真新しいソファーの上にタバコが一本落ちている・・・・・・
誰だ・・・こんな所に吸いかけのタバコを置いておくなんて!
でもソファーに腰掛けているのは私と伊吹だけだ。
 
まったく、伊吹の奴と思い、タバコを片付けると、ソファーには真っ黒に焦げた跡が!!!
アチャ!・・・タバコの焼け焦げは私と伊吹の間にある・・・私は黒田監督にばれないように
体で焦げ跡を隠した。
そして伊吹のタバコの箱に目をやると、伊吹のタバコはホープだ。
ホープの吸い口は茶色だ・・・しかし焼け焦げをつくったタバコの吸い口は白だ・・・?
アチャー!! 焼け焦げをつくったのは私だった(~_~;)
 
私は酔いにまぎれて、焼け焦げを知らない振りで、黒田宅を失礼した。
しかし、後から考えると、黒田さんはソファーが燃えているのを、絶対知っていたはずだ
黒田さんは私たちの対面に居たのだから・・・分かっていて黙ってくれていたのだろうか・・・・・・
 
よしんば分かっていなかったとしても、我々が帰った後、必ず気付く・・・・・・
「アァ~~! 美人の奥さん、怒っていただろうな(~_~;)」・・・四十年経った今でも、申し訳なく思っています。
 
黒田さんのスチール写真を見ながら、そんなことが思い出される。
 
そしてTVの画面は、いよいよ大魔神の橋本力さんの登場だ・・・\(◎o◎)/!
大魔神フリークの出演者は、力さんの登場に興奮しまくっている。
 
橋本 力(はしもと ちから、1933年10月20日 - )は、北海道出身の元プロ野球選手俳優。ポジションは外野手。  怪我で大毎オリオンズ(現・千葉ロッテ)を退団、その後、大毎の親会社、大映社長・永田雅一に認められ俳優に。
 
橋本力さんはお元気だった(^^♪
顔もとても優しく和やかになり、当時の裏話を楽しげに話してくれている。
 
大魔神の公開は1966年だから、私はそのころまだ高校生だ
私が大映に入った1969年には大魔神は撮っていない。
 
当然私はその当時、大魔神が橋本力さんだということは知らない。
 
確かフランキー堺さん主役の「与太郎戦記」を撮っている時だった
セットの中は軍隊服を着た大部屋俳優で一杯だ。
私も仕出しの一員として
陸軍の軍服を着て、セットの周りをうろついていたのだが、先輩の俳優だろうか
私は始めて見たのだが、いかにも恐ろしい顔と眼光のいかつい先輩俳優が、私を見ている。
 
私はなるべく目を合わせない様に、セットの裏に腰掛けていたのだが
その先輩がドスンドスンと足音を響かせて、私に近づいてくる。
その先輩はいきなり私の前に立膝で座り込むと、私の足に巻いてあるゲートルを解き始めた。
 
私は吃驚して、何をするんだろうと、なすがままになっていたが
その先輩は丁寧に私のゲートルを巻き直して・・・「ゲートルはこうやって巻くんだ」と、去っていった。
その先輩が、大魔神、橋本力さんだった。
恐ろしい風貌と真反対の優しさ・・・・・・う~~ん・・・これこそ大魔神!
 
大魔神を地でいく、橋本力さん・・・・・・そんなことを懐かしく思い出させるCSの番組でした(^_-)-☆
 
                                                               つづく