ムチ打ちは腰に来るというが本当だ。
立っているのも辛い。
しかし私のセメントに激突は、ムチ打ちというのだろうか?
 
それはともかく、痛いといっても事態が変わるわけではない
卒業公演に辞退はありえないのだ。
この辺が運動部の強いところか、少々の怪我ぐらい稽古をやりながら治してしまう。
今回もそれでいった、バック転をやると腰に激痛が走るが、死にはしない。
 
私の怪我は各教師達にも直ぐ伝わり、特に女性の先生、裏千家の牧先生などは
自分の授業が終わっても帰らず、私を心配して・・・「ダメよ! そんな危険なことをしては・・・おやめなさい」
などとハラハラしながら見守ってくれていた。
 
私は正座が苦手ということもあって、お茶の時間は苦痛でしかなかったのだが
何故か成績はAだ。
やはり養成所なので、全員に各教科の成績表が渡される。それをあえて隠す奴も居ないので
みんなで見せ合ったが、お茶の私のA評価には全員からブーイングが上がった。
「なんで亮がAで私がBなのよ!」などという女子の声はあちらこちらから浴びせられ
「えこ! えこひいき!」などとお茶の牧先生の悪口を言っていた。
しかしそんなのは当たり前・・・牧先生は六十歳を超えていたと思うが
私は圧倒的に年上の女性には評判が良かったのだ・・・(^^♪
 
成績はA~~Dで評価され、通信簿の様に卒業まじかに渡され、おまけに所長が誰が成績
上位者だとバラしてしまうのだ。
 
しかしこの成績表は何の意味もなさない。
映画監督達は成績表でキャスティングするのではないのだ。
 
養成所の所長、伊藤先生はいつも嘆いていた。
私の一期先輩に、渥美マリ、だとか八代順子という、女優が居る。
特にマリは主演を何本もこなし、いまや大映の救世主だ。
 
伊藤先生いわく・・・渥美マリは養成所の成績最下位で、矢代順子はその次だ。
よりによって、馬鹿二人がスターだなんて、芸能界は本当に分からない・・・・・・
と、映画会社、四十年の伊藤先生が嘆いていらした。
 
養成所の授業以上にしんどかったのがバイトだ。
休んだら食えなくなってしまうので、コルセットをしたまま、中華料理店のボーイの仕事をした。
これは客が少ない時でも立っていなければならない。
これが一番腰に来た・・・約五時間、立ちっ放しなのだ。
 
中国人の支配人が嫌味を言う・・・「なに! その首! 仕事の邪魔、取るいいね!」とか
「飯だけ食べる・・・仕事しない・・・マーラガピー」・・・マーラガピーとは英語で言ったらファックユー! かな
詳しい意味は分からないが、中国語、最大の侮辱言葉だ。
しかし私は我慢した・・・怪我をしたのは自分が悪いからだ・・・・・・
しかし・・・事件は数日後に起こった・・・\(◎o◎)/!
 
                                                             つづく