theactorくん、コメント読みました。
あなたの憂いていることは、私も含め、心ある俳優はみんな思っています。
デ・ニーロの監督作品「ザ・グッド・シェパード」でマット・デーモンが
繰り返しデ・ニーロからアドバイスを受けたのは「説明するな」ということです。
「説明しようと演技した途端、全ては壊れてしまう」これは俳優の基本なのですが
日本の現場では、少数の一流監督を除いて、ほぼ全ての監督が
「もっと観客に分かりやすく演技してくれる」です。

良い俳優でも繰り返しそれを強要されると、どうしても芝居が説明になってしまいます。
私もかなり戦いましたが、日本の現場はディスカッションを嫌うのです。

私の好きな俳優、香川照之くんが今まさにその状態にあります。
彼の芝居の欠点はやりすぎなのですが、今はそれプラス、芝居に説明が入ってきています。
彼は、オンエアーされた自分の演技を見て、それは感じているでしょうが
現場へ出るとやってしまうのです。
ワンシーン毎にそんな説明芝居をしているから、鬱陶しくてしょうがない。

元々、才能の有る香川くんですから、そのうち直してくるでしょうが
ここの数作品「竜馬」「剣岳」「新参者」……全部、説明芝居です。

それと、観る側のレベルですが、それは少し上がってきていると思います。
それは一般の人が演技というものに興味を持ってきたからでしょう。

この状況は、今の政治と、日本のドラマがよく似ています。
国民の方が、政治家より状況判断が出来てきた…大したことはありませんが。

作家の永井荷風が昭和十二年、中国との戦争は始まっており、太平洋戦争に突き進む暗黒の
状況の中で、日記にこんなことを書いています。

「日本現代の禍根は政党の腐敗と軍人の過激思想と国民の自覚なき事の三事なり。
政党の腐敗も軍人の暴行も、これを要するに一般国民の自覚乏しきに起因するなり。
個人の覚醒せざるがために起こることなり。
然り而して個人の覚醒は将来に於いてもこれは到底望むべからざる事なるべし」

あの戦争は、国民の九割が賛成して起きたもの、新聞社と軍部の宣伝に乗せられて
まさしく自覚なき国民になっていた訳だ。

だから、大きく云うと「ドラマを視聴している国民が、今のドラマに厭き厭きして、TVドラマを観なくなれば、つまらない映画も芝居も途中で観客が居なくなれば、そこで初めて世界が変わろうとするのです」

theactorくん……先は遠いけど、やるっきゃないよね……(^^♪

                                           つづく