タカノブくんの質問・・・

昨日、NHK-BS2でアル・パチーノのアクターズスタジオインタビューが再放送されていました。そこで即興/アドリブについて「作品や役を完璧に理解していなければ手をつけてはいけない」と語っていました。以前に三国連太郎さんが「釣りバカ」でアドリブを多用する西田敏行さんに「台本を覚えてきている人達に迷惑だよ」と注意したという話を聞いたことがあります。役者さんにとってアドリブとはどういう存在なのでしょうか?亮さんはアドリブについてどう思われていますか?


この質問だが、なるべく易しく解説しよう。

アドリブとは……台本や楽譜などにない、即興のせりふ・演技や演奏など。…と辞書に
        書いてある。

しかしこれでは、タカノブくんの質問に何も答えていない。
実はこの辞書の説明では、アドリブの本質は何も分からないのだ。

さんま御殿を例にとってみよう。
ひな壇のタレント達は、あらかじめ今日出るお題は知っている。
その課題に対して自分がどんな話をするか、それも決めているわけだ。

この番組は、ダウンタウン松本の「すべらない話」と違って、たえずさんまの
鋭い突込みが入る……そして予め話を用意していたタレント達は、思いも掛けない
さんまの突っ込みに右往左往して、そこから出てくる生の反応を視聴者は楽しむのだ。

さんまもタレントが用意した話を、どうぶち壊すか、ぶち壊した時、そのタレントが
どんな反応をするのかに勝負を懸ける。

そのとき出た、おもしろい言葉やリアクションが、アドリブなのです。

ではパチーノが、即興・アドリブは、「作品や役を完璧に理解してなければ、手をつけてはいけない」
と、何故釘を刺しているのだろう……

さんま御殿のタレント達は自分自身で出演している。用意した話も自分の事だ。
だからさんまに突っ込まれても、自分のことだから、慌てまくって言い訳も訂正も出来る
何故か……それは自分のことだから。

一方、俳優の方は、役を演じるのだ。
その役は自分ではない、作家が創り上げた人物だ。
だから、演じる俳優としてはその役が、完璧に自分の血となり肉とならなければ
アドリブなんて出てこないのだ。
役が出来ていないのに飛ばすアドリブは、単なるアイデアであり、目立ちたいが為に発する
つまらないスタンドプレーなのだ。
それは観客の共感をよばないし、興ざめをしてしまうのだ。

三国さんが西田さんに言った言葉はそういうことだ。
アドリブは本当にその時、咄嗟に感じたことが表現として思わず出ることだ。

ただ、即興やアドリブは、まだまだ奥の深いことで、役を掴む為に稽古の時
意識的に取り入れる。
しかしそれはあくまでも役に近づく為のものだ。
本当に良く出来た脚本に、アイデアのアドリブは邪魔になるだけだ。

これ以上はもっともっと専門的に、難しくなるので、この辺で良いかな……(^_-)-☆

                                          つづく