「赤い関係」の撮影が始まった。私の登場シーンは内偵捜査をしている男の女房を団地の住まいに
訊ね、それとなく、夫の動きを探る所からだ。

初対面、あれほど不愉快だった監督は人が違ったように、生き生きと現場を指揮している。
スタッフが監督の指示に的確に、無駄なく動いている。
これは簡単のようでそうはいかない。監督の信頼がスタッフにないと、スタッフは指示どうり動かない
現場が緊張感の無い、およそ物を創造する場に相応しくない雰囲気になる。

役者も同じで、監督に信頼が置けなくなると、手を抜くのではないが、緊張感の無い
通り一辺の芝居でお茶を濁すような紋切芝居をしてしまう。

それは内面を極限まで探る演技にトライするより、通常やっている紋切芝居の方が楽だからだ。

これはみんながTV,映画等を観ていて、前回のドラマではあんなに良い芝居をして魅力のあった俳優が
今回のドラマでは、全く魅力を感じない。こんなことがよくある。

詰まらないドラマは、第一にストーリーのせいだが、ヘボ演出家が演出すると
良いものも悪くしてしまうのだ。俳優もしかり。

全盛期の黒澤作品に俳優がみんな出演したいと願ったのは、俳優の能力を極限まで
引き出してくれるからだ。

俳優は現場がどんなに厳しくとも、完成後の賞賛を明日の糧として生きていく。

高橋監督の撮影現場にはそれが感じられるのだ。
監督は俳優にもっとを要求する。それが例え主役であろうと、ベテランであろうと差別はしない
芝居が気に入らないと、子供のようにソッポを向いて、ハイ、もう一回!と不機嫌に騒ぐ(~o~)
そのかわり、良い芝居をすると、子供のように、OK!OK!大OK\(◎o◎)/!とハシャグ。

高橋監督の特徴は俳優にわざとらしい芝居を一切させないし、排除する。
内面の芝居を追及するタイプだ。それでいて画面は動のある引き締まった映像を撮る。

私はすっかり高橋さんを気に入ってしまった。それは監督も同じようだった。
最初の印象はお互いに何処へやら・・・気持ち良い真剣勝負が撮影現場で繰り広げられる。

演出家と俳優というのはナアナアで仕事をするのが最悪で、仕事はいつも真剣勝負だ。

赤い関係はその後、誤認逮捕と、容疑者の妻と若い刑事の道ならぬ恋とストーリーは続いていく~~

再放送があれば良いのだが、私もリキが入った作品だ。

そして話は「お鏡」に~~~それはまた次回・・・・・・・つづく