ジェームズ・ディーンのエデンの東、これは1955年の公開
私がこの作品を見たのは二十歳を越えてからだが
これが新人の演技かとぶったまげた記憶がある。

当時の先輩俳優にジェームズ・ディーンの印象を聞くと
本当に驚いて、影響を受けたという。
三國連太郎さんも非常に影響を受けたと、私の朗読の先生から聞いた。

そのときの二人の会話

三國「ジェームズ・ディーン、見たか」

先生「見た・・・」

三國「・・・凄いな」

先生「うん・・・」

三國「ディーンの演技を見てると、あきらかにキャメラに向かって演技をしているアングルだが
   キャメラの向こうに、人間が居る!・・・・・・
   どうしたらあんな演技ができるのだろう!?」

先生「・・・わからん・・・」

これが、先生から直接私が聞いた、三國さんのジェームズ・ディーンの評価だ。

1960年代後半から70年代、ダスティン・ホフマン、アル・パチィーノ、ロバート・デ・ニーロ、

などが新人俳優との振れ込みでデビューし、私たちに大ショックをあたえる。

私は、リアルタイムでこの衝撃を受けた。

日本にも同じように新人俳優は沢山出る、しかし演技において先輩俳優の
度肝を抜くような俳優は見たことも聞いたことも無い

しいて云えば、日本の新人俳優で強烈な印象を与えたのは、三船敏郎、石原裕次郎

私と同世代では、ショーケンこと萩原健一だろう
ショーケンはナチョラルな演技ということで、あの当時の若い俳優の演技スタイルを変えた
彼の登場は、俳優の世界に大きなインパクトを刻む。

だが日本においての新人とは、これから演技を学んで育っていく、もしくは育てていく
存在で、その個性は認めるが、演技を認めるなど遥か先の話だ。

アメリカの名優達は、新人デビューの時から演技も個性も凄い、これはどこが違うのだろうか?

一つはシステムの違いだろう、アメリカの映画界はたとえスターで在っても
欲しい役には、オーデションを受けることも厭わない。
演技テストを受けるのだ。

日本の芸能界にその慣習は無い、ベテランに演技テストなどといったら
「テメェ!俺をなめてんのか!」と断られてしまう。

新人のオーデションも演技テストなど無いに等しい、最近は知らないが
私が、役のテストを受けたのは一度だけ、NHKの「赤ひげ」(映画は黒沢作品、三船敏郎・加山雄三)
の時、扮装もし、台詞も渡されキャメラを廻してオーデションをした。

あとのオーデションは顔を見せに行くだけのオーデションだ。

アメリカのオーデションは演技テストを伴う、だから芝居が出来なければ
オーデションには合格しない。
だから、アメリカの俳優達はチャンスが来る前に、演技力を必死に磨くのだ
これがデビューした時の、力の差になって私たちに伝わる。

デ・ニーロもホフマンも、映画デビューの前に小舞台の芝居を数多く経験し
演技力を磨いていたのだ。


今回の芝居ミッドナイト・アバウトを通じ、生徒に覚えて欲しいのは
演技力を付けるのは舞台を通じてだ。
何故かといえば、何度も何度もやり直しがきくからだ。

今回の芝居でいえば、数ヶ月の稽古の間、ダメだしをされながら、
何度もやり直しが出来たはずだ。

テレビや映画の現場でそれは許されない
いきおい、中途半端な演技でも、OKさえ出れば、流されていってしまう

とても役を深くチャレンジすることなど出来ない。

一つの役を色々な角度から何度も何度もトライし、役を掴んでいく
このプロセスが、俳優のキャリヤにとても重要だ。

それが出来るのは舞台しかない。

良い俳優になりたかったら、基礎をやるのだ
砂上の楼閣にならないように

力が在れば、必ずチャンスは巡ってきます。

                                   つづく