全国のコンビニの店舗数は約57000店であり、ここ数年はほぼ横ばい傾向が続いており、成熟した事業といえる。コンビニは、北海道から沖縄まで日本のどこに行っても店舗があり、最近は駅ナカやオフィスビルの中にも出店し、もはや日本人の生活には不可欠な存在となっている。

 コンビニ事業はその成熟化とともに企業間の統廃合と寡占化が進んでおり、国内約57000店舗の内、セブンイレブン、ファミリーマート、ローソンの上位3チェーンで全体の9割を占めまでになっている。業界トップのセブンイレブンは国内に約21000店舗を展開しており、店舗ベースで4割近いシェアを持っている。それに加えて一店舗あたりの売り上げも他チェーンを圧倒しており、業界トップの地位を築いている。

 コンビニという店舗形態がここまで普及した原因の一つに1974年に施行された「大規模小売店舗法(大店法)」の影響がある。大店法は、当時急速に成長していた大手スーパーやショッピングモールから中小小売業者を守るために作られた法律である。大規模店の進出に対して、店舗面積・営業時間・営業日数等に制限を設けることで、中小小売業者の事業活動を保護している。

  コンビニは、1974年の大店法施行以降に急速に店舗展開が進められたが、これは大手スーパーが大店法の影響を受けない小規模店舗をフランチャイズで運営するという新たな形態をとることで全国展開を図り、売り上げを伸ばしていったからである。フランチャイズ化することで、小規模店舗を個人オーナーが経営することになるので、時間・日数・労働管理等の法的な制約から逃れることができ、形式上は個人オーナーによる自由な運営ができるのである。

 コンビニ営業の本質は、売場の有効活用である。限られたスペースを如何に効率的に活用して売り上げるかということであり、24時間営業を早い段階からスタートさせたのも、営業時間を長くすることで店舗スペースあたりの販売効率を上げることを目的としていた。限られたスペースで効率的に売り上げを上げるためのもっとも重要なポイントは、集客ができる店舗立地を選ぶことである。そこで、今回はコンビニの店舗立地について考えてみたい。次の質問は、コンビニの郊外店の立地をテーマにした問題である。

 

 

Q1:コンビニを出店するにあたっては、店舗立地がポイントとなる。如何に効率よく集客が出来る場所を選ぶかが重要である。下記の図は、コンビニの郊外店に立地の候補地を描いた概念図である。候補地の場所は、縦横二つの道路がクロスする信号機のある交差点の四つ角にあり、上下を走る縦の道路は都会と郊外を結んでいる。店舗候補地は、交差点の各角にあるA~D迄の4つの土地であり、面積はどの土地も同じ広さで、いずれの土地も車で買い物に来る顧客に対応できる十分な駐車スペースがある。郊外店舗なので、客層のほとんどが車を利用して店舗に来て買い物をする。

 それでは、コンビニ店舗として最も良い立地はどれだろうか? 次の中から選んで欲しい。

 

 

 

①コンビニの郊外店は、都会に行く時に買い物に立ち寄る機会が一番多い。交差点を過ぎた所が、車が店舗に出入りしやすいので、候補地Aがベストである。

 

②コンビニの郊外店は、都会に行く時に買い物に立ち寄る機会が一番多い。交差点の手前が、車が店舗に出入りしやすいので、候補地Bがベストである。

 

③コンビニの郊外店は、郊外に行く時に買い物に立ち寄る機会が一番多い。交差点の手前が、車が店舗に出入りしやすいので、候補地Cがベストである。

 

④コンビニの郊外店は、郊外に行く時に買い物に立ち寄る機会が一番多い。交差点を過ぎた所が、車が店舗に出入りしやすいので、候補地Dがベストである。

 

 

 

Q1:正解は②である。

 郊外を車で走ると、十字路の交差点の角地にコンビニを見かけることがよくある。そういう光景を普段から見慣れていれば、この問題についても経験からわかる人が多いと思う。ここでの判断のポイントは、「都会に向かう車と郊外に向かう車のどちらが店舗に立ち寄ることが多いか」と「車で店舗に行くのに交差点の先が入りやすいか、それとも交差点の手前が入りやすいか」という2つの条件から、最も集客のできる店舗はどこかを選ぶ問題である。

 まず、一つ目の条件は、朝方都会に車で向かう顧客の方が、夕方郊外に車で戻る顧客に比べてコンビニに立ち寄るケースが多い。また、二つ目の条件は、交差点の手前に立地する店舗の方が、信号の先に立地する店舗よりも、車での店舗の出入りがスムースで立ち寄りやすい。従って、この二つの条件を掛け合わせると、コンビニ立地に適しているのは、B>C>A>Dの順となる。同じ交差点の四つ角であれば、駅に向かう道路で、信号の手前に立地した候補地Bが最もコンビニに適している。

 

 

 

 

【コンビニのルーツとシェア拡大戦略】

 コンビニは1974年の大店法施行を踏まえて、大手スーパーが大店法の影響を受けない小規模店舗をフランチャイズで運営するという新たな形態が志向され、それが消費者に受け入れられ全国に広がって行った。そのために現在コンビニの店舗シェアの大半を占める大手コンビニチェーンは、いずれも大手スーパーから派生して生まれている。セブンイレブンはイトーヨーカドー、ファミリーマートは西友、ローソンはダイエー、ミニストップはイオンをルーツとしており、このうち親会社のGMSと今も資本関係があるのは、イトーヨーカドーとイオンだけであり、他は売却されて商社系に資本が移っている。

 大手チェーンの中でも、セブンイレブンが最も大きなシェアを持っているが、ここまで成長したのには理由がある。米国から導入したコンビニという形態を日本流にアレンジしてシステム化を進めたことが大きいが、それに加えてエリアを重視したいわゆるドミネント戦略が店舗拡大に大きく貢献している。狭いエリアに店舗を集中的に出店し、広告宣伝や物流構築を当該エリアに重点的に行うことで、短期的効率的に販売体制整備を図っている。しかし、一方でフランチャイズの店舗オーナーにとっては、厳しい面もある。何もないところから出店し、汗を流して顧客を増やしてきたにも関わらず、突然直ぐ近くに別のオーナーが経営するセブンイレブンが出店するといったことがしばしば起きている。せっかく頑張って顧客を掴んで、店舗運営が軌道に乗ってきたのに、新たに他店が進出して顧客を奪われてしまい、再び苦しい経営を強いられるということがよくあるようである。ドミナント戦略は、セブンイレブン本体としては、セブンイレブンの店舗同士をお互いに競わせることで、更に売り上げを積みますことができるが、オーナーの立場からすると、別のオーナー店舗がいきなり出店するという当初予想していいない事態が発生し、売り上げを奪われて苦労するのである。勿論、このような問題は、他のコンビニチェーンでも同じように起きていることだが、特にセブンイレブンの場合はケースが多いようである。

 かつて、家電業界においても、家電量販店が登場する前の家電販売においては、家電メーカー各社がそれぞれのメーカーの製品を専門に販売する系列店を持ち、その系列店の数を増やすことで販売力を競った時代があった。その中でも家電製品のトップ企業であるパナソニック(旧松下電器)は、多くの系列店(ナショナルストア)を抱えていたが、系列店の数を増やすにあたって、エリア内に店舗が集中しても構わないという施策を取っていた。他のメーカーは、エリアごとに担当する系列店を配置するのが一般的だったのに対して、パナソニックはエリア主義を取らず、近隣のパナソニック系列店の側にも他のオーナーが運営するパナソニック系列店の出店を認め、それによってお互いを競争させることで、エリア内のパナソニック製品の拡販を図って、シェアを上げて行った。コンビニと家電小売店は全く異なる業態であるが、エリア内の出店にあまり制約を設けず、お互いに競争をさせることでエリア全体での売上拡大を狙うという上で共通点があり、それがシェア拡大に繋がっている。