【世迷言-よまいごと-】 5月31日(土)

先行し過ぎた「自衛隊機」派遣


         本紙主筆 筆折らず乃助


四川省における大地震で、中国側からテント等の支援物資とその輸送を求められ、「自衛隊機」も含めた検討を打診されたとの情報が28日に明らかとなり、話題となったが、結局民間チャーター機でこれらの物資を輸送する運びとなった。


常に歴史問題が横たわる日中関係において、衝撃的な話でもあり、また歴史問題は克服したという演出には多大な効果を発揮しうる話であったが、結局のところ、中国国内世論に対する配慮から自衛隊機の話はなくなった。


確かに、自衛隊機の話は、これまでの中国との関係を考えると、驚きをもって受け止める話だったが、やたらとその「象徴的な面」のみが際立ちすぎ、話が先行し過ぎたきらいがあった。もともと、この話は、自衛隊機ありきの話ではなく、輸送手段が自衛隊機であってもよいという選択肢のうちの一つの話と伝わっていた。しかし、総理官邸における町村官房長官の会見にもあるように、自衛隊機を前提とした検討がされていることが伝えられ、そして報じられた。


想像するに、かつて日本軍機は、四川省の省都である重慶を爆撃(空襲)していた。自衛隊機、しかもC-130輸送機とはいえ、日章をつけた向こうから見れば「軍用機」がやってくるというのは、心理的抵抗感があるのだろう。B-29が日本の上空にやってくるようなものと想像すると、我々からみても、心に思うところを禁じ得ない。


もちろん自衛隊機は国内的には「軍用機」ではない。したがって、こうした災害救援活動などを通して、自衛隊の外からの目が、いわゆる旧軍と同じではないという理解が浸透することはいいことである。しかし、こうした視点から、わが国にとっても利得があるという打算が際立ち、話が先行したことも否めなかったのではなかろうか。


とはいえ今回の話からみるに、この先、時間が経過すれば、こうした中国国内における抵抗も薄らいでいく兆しが見えたのではなかろうか。

こういった事柄を経験しながら、ひとつひとつ日中関係がわだかまりや誤解のないよい関係へと深まっていくことを期待したい。


いずれにしても、これは日本にとって一歩後退だったのではなかった。本来の選択肢の範疇にある民間チャーター機での輸送に決定したのにすぎないだからである。あとは、早く実施に移し、純粋な被災者支援という目的を達するよう、避難地での困難解消に役立つものであってもらいたい。