【前回までのあらすじ】
スーパー池松屋はスーパーの癖にやけに専門館を持っていた
スーパー池松屋・はくさい館
スーパー池松屋・うずらのたまご館
スーパー池松屋・きくらげ館
スーパー池松屋・とろみ館
八宝菜を作るだけでこれだけ廻らないといけない…。
不便だ…。
創業者の【池松香之助】の地域の雇用拡大の理念だと言う。
私は「やりすぎでは?」と池松本人に聞いた事があるが。
「やり過ぎだった」と本人は言った
「でも冒険みたいで楽しいだろ?」と
うずらの卵抜きの八宝菜を作りなから笑って言った
うずらの卵館…
見つけられなかったのか?
他にも…
スーパー池松屋・ファッション館
スーパー池松屋・メンズファッション館
スーパー池松屋・万引きGメンズ館
等々…この町には色々な専門館がある。
ちょっと万引きGメンズ館に興味はあったが…
その日私が訪れたのは…
スーパー池松屋ネコ砂館だった…
飼い猫イクラのためにトイレ砂をを買いにいくためだ
そこで店員のわらびさんから聞いたのが…
「猫のオシッコは流れ星と同じ軌道で落ちるらしいですよ!」
それはある絵本の中の台詞だったと言う…
私はひょんな事からわらびさんとその絵本を探しに行く事になった
スーパー池松屋・チャイルドブック館へ…。
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【おがくずとクレイマー】
「もうすぐ勤務終わるんで、それでも見て待っててくださいね!」
「あ、はい」
わらびさんの指差す先のショーウインドウの中には…
猫砂に見立てたきな粉の上に
ゼンマイ仕掛けの小さな黒猫が立っていて…
たしっ!たしっ!…と後ろ脚で砂を掛けるようにきな粉を蹴り…
後ろの小さな餅に掛け
わらび餅をつくる仕掛けがあった。
「おー…」
面白いけど…食欲は沸かないな…と思った。
そして、もしかしたら「わらび餅と、わらびさんを掛けてるのかな?」とも思い…
それを聞こうと思ったが…
「いらっしゃいませ!」
どうやらお客さんが来たみたいだ…。
「ちょっと!あなたが薦めてくれたおがくずタイプのトイレなんだけどねぇ!」
なんかおばさんがわらびさんに怒鳴ってきたぞ
「あ、はい、何か問題でもありましたでしょうか?」
「うちの子がおがくずにズブズブ落ちていくのよっ!、底なし沼みたいにっっ!!」
「ええ?!そんな深く敷き詰めたんですか?」
「そんなことないわよ!せいぜい3〜4センチくらいよ!」
「失礼ですが猫の種類はどのような?」
「シャンガリヤンよ!シャンガリヤン!!」
シャンガリヤンて…どんな猫だっけ?
「…シャンガリヤンでございますか?」
「そうよ!シャンガリヤンのスノーホワイト!可愛いのよ!」
申し訳なさそうな顔をするわらびさん
「…失礼ですがお客様…」
「なによ!?」
「シャンガリヤンは…ハムスターの種類でございます…」
「なによ!ハムスターはトイレ買っちゃいけないの?!」
「…ここは猫のトイレの砂館でして…」
「えっ!?」
「それに…シャンガリヤンちゃんはズブズブ落ちていったんじゃなくて、中ですやすや寝ているんじゃ…」
「な、なによ!うちの子がトイレでスヤスヤ寝てるって言うの?!」
「ハムスターはおがくずを寝床にする習性がありまして…」
「何よあなた!、猫砂館の店員の癖にやけにハムスターに詳しいじゃない!」
「す、すみません…」
「…ははぁん、本当はここはハムスター館で合ってるのにごまかそうと猫砂館の店員のフリをしてるのね?!」
「そうなんですよ!!」
「えっ?!」
んっ?!
「申し訳ございませんお客様!」
「え???」
「前までここはおっしゃる通りハムスター館でしたが、つい最近ネコ砂館に変わりまして…」
「え?…あ…ほ、ほーら言わんこっちゃないっ!!ほーら言わんこっちゃない!!!」
「本当に申し訳ありません!…今、ハムスター館の地図を…あ…この割引券もよかったらどうぞ!」
「そ、そう?…」
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【スーパー池松屋チャイルドブック館への道すがら】
春の桜並木を…
わらびさんと二人で歩いている
風の吹き溜まりには…
桜の花びらが…
仔猫がじゃれあうように舞っている。
「いゃあ…さっきのお客さんへの対応,
流石でしたねー」
「え?…」
「お客さんのプライドを傷つけないようとっさにあんな嘘を…感心しました!」
「え?…あ、そ、そんなことないですよー、本当にあそこ、前はハムスター館だったんですよ?…あはははは…」
「え?!…そ、そうなんですか?!」
「あははは…」
わらびさんの耳たぶは真っ赤だ…
はたして…
…どっちが 「嘘」 なんだろうか?
そんな風に二人話ながら歩いていると
わらびさんは時々ちょこちょこ!っ…と早足になり
ちょこちょこっと私のちょっと前を行こうとする…。
「あ、すみません、歩くのが速いですか?」
「え?…チャイルドブック館どこだかご存知なんですか?」
「いや、知らないですけど…」
「だから私が案内しないと、と思いまして」
また小動物みたいちょこちょこっと前に出る。
あ、先導してくれてるんだ…。
「どの辺なんですか?」
「あ、もう着きます、そこの病院の前です」
「病院?」
その病院には「藻中小児病院」と大きな看板が出ており
そこの縁石に看護師さんが座り…
虚ろな目をしてシャボン玉を吹いている。
あとなぜかリヤカーをもったおじいさんがたくさんいる
膨大なカルテ目当てにきたチリ紙交換か?
「はい、着きました、ここがスーパー池松屋・チャイルドブック館です!」
「へー!」
あれ?
建物の壁にアマガエルが張り付いている…
「…ん?」
「んーー??」
「あ…あー」
…よく見たら本物そっくりの絵だ…。
入り口は半地下にあり…
アンパンマンのパクりみたいな等身大の人形が置いてあり…
ピロシキマンと書いてある。
「なんか子供の目線を考えて入り口は半地下にしたみたいですよ、子供は潜るのとか好きですからね」
「なるほど、色々考えてるんですね」
「なんか絵本は病院のお見舞いに買ってく人が多いって所までリサーチしたらしいですよ」
「あ、だから小児科の前に建てたんですね!」
「え、あ、逆です」
「え?…逆??」
「『チャイルドブック館作るなら、目の前に小児科建てたれ!』…って、うちの会長が建てたんです!…」
「え?チャイルドブック館の為に小児科を作ったんですか?」
「はい」
「……香之助さんらしいなぁ…」
「え?!うちの会長知ってるんですか?」
「え?…あ、いや…有名人ですからね、あははは…」
「さぁ入りましょう、天井気をつけてくださいね、頭ぶつけますよ」
「あ、はい、子供の気持ちになって入ります」
「あ、横の壁にも気をつけてくださいね」
「え?…壁にも?」
ふと壁を見ると
サーチライトに照らされた
ある絵本が浮かび上がっている
その絵本は…
「どかーん!」とかみなりみたいなキャラクターが絵が表紙だ
「かみなりちゃんのおとしどころ」というタイトルだ。
一枚、一枚、スロープの奥に向かって壁に貼られていた。
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『かみなりちゃんのおとしどころ』
どかーん!!
かみなりちゃんが
うとうとしていた、つきの「わ!」くまちゃんのうえに落ちてきました
「わっ!!」と、つきの「わ!」くまちゃんはおどろき、まっくろこげになりました
もともとまっくろだったので、たいせいにえいきょうはないです
「なんでぼくのうえにおちるんだ!」
つきの「わっ!」くまちゃんはかみなりちゃんにこうぎしました
つきの「わ!」くまちゃんのうえにかたぐるまして「きゃっきゃ♪」していたかみなりちゃんは言いました
「だってきみがとうみんしちゃうとリスちゃんがかなしむからおこしたんだ!」
「ただ、うとうとしてただけだよ!」
「うとうとってなぁに?」
「うとうとはうとうとだよ!」
「かみなりちゃんにもわかるようにはなして!」
「え?…そ、そんなことをいわれても…」
「がんばればできるさ!」
「うーん…うーん」
「がんばって!しりょくをつくしてかんがえて!」
「えーと、うとうとは、うーん…クリームソーダがとけるようなかんじにねむくなるような…うーん、うーん」
「クリームソーダがとけるような?!?!」
「え?!いや…ち、ちがうかも…」
「いいなぁ、クリームソーダいいなぁ、ぼくもうとうとしたいなぁ」
「きみはいつもドカーンっ!…と、おちて、きぜつするみたいにねるからね」
「どうしたらうとうとできるかなぁ?」
「ひとのうえにおちることばかりかんがえてたらダメなんじゃない?」
「いじわる!つきの「わっ!」くまちゃんのいじわるっ!つきの「わっ!」くまみゃんの のいろーぜがおっ!」
「なんだそれ?!」
「ねぇねぇ、どうしたらいいかなぁ?」
「うーん…そうだなぁ…せいでんきふじんにきいてみたら?」
「…せいでんきふじん??」
「きみのおかあさんだよ」
「え?!」
「きみのおかあさんたちだよ」
「ええっ?」
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絵本はここまでで終わっていた
「あれ?続きは?」
「無いですよ」
「え?」
「そうやって続きを気にさせ買わせる作戦なんですよ…」
「あ、あー……」
「私は…」
急に顔色が悪くなるわらびさん
「え?…ど、どうしましたか?」
「…何回も」
「え?」
「何回も、何回も私はこの手に引っ掛かりました…」
「あっ…」
うずくまるわらびさん
「従業員割引が無かったら財政破綻するほど買ってしまいました…」
「えっ?!」
すっくと立ち上がるわらびさん
「だから気をつけてください!ここの壁には!!」
「わ、解りました…」
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狭いスロープを抜けると…
ヨーロッパの古い図書館のようにぐるっと本棚に囲まれた作り
なんだか真ん中にいると…本棚に糾弾されているみたいだ
「ん?…あ、あれ?」
わらびさんがキョロキョロしている
「どうしたんですか?」
「本が全然ない…」
「え?」
周りをぐぅるり見回す…
確かに…
これだけある本棚に全然本が置いてない
いや、あるにはあるが…
野リスに喰い荒らされたトウモロコシのように歯抜けだ
「本当だ…全然ないですねぇ」
「どうしてなんでしょうねぇ?…」
ヒュンヒュン…
何か風を切る音が聞こえてきた
「あ、わらびちゃん来てたんだぁ」
なんかちっちゃいヌンチャクみたいのをヒュンヒュン回してメガネの女性が降りてくる。
「あ、本多さん!なんなんですこれ?!」
「あ、本?…集団万引きにあっちゃっててさー」
「また嘘を!何があったんですか?」
「それよりこれ見てよ!ヌンチャク型の栞、私が作ったんだ!」
「む、めっちゃいいですね…」
「あれ?この人どなた?」
私に気づいたヌンチャク女史
「あ、この人はうちのお客様で…ちょっとある本を探してまして…」
「…いつも悪いわねわらびさん…これ約束のマージン…ヒソヒソ……」
「えっ?!」
まさかの美人局!?
「あははは♪冗談ですよ!」
「えっ!?…あ、あー…あ」
「もー…本多さんたら…」
「あはは♪わらびちゃんが男の人連れてくるなんて珍しいからついね!」
「それよりなんでこんなに本が無くなってるんですか?」
「あー…少し前になんか老紳士が現れてさ、みんな買い締めてったよ…」
「え?」
「ここにあった本をみーーーんな買い占めてった、すぎもとてった」
「杉本哲太?!」
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【謎の老紳士】
「ええ?!…また嘘ですよねぇ?!杉本哲太とか言ってるし!」
「老紳士に買い占められたのは本当…」
「…………」
「なにその顔、信じないの?」
「信じるわけないですよ…ねぇ…」
「え?!…私?…あー、ま、まぁ……」
「あいたた…これが『オオカミが来たぞ!シンドローム』ってやつか!……長年絵本を扱ってきたのに全然教訓生かされてないじゃん!」
「え?…もしかして、本当…なんですか?」
「本だけに本当だ…」
「…………………」
「嘘だと思ったらそこの病院に確かめに行けばいいだろ!」
「え?病院に?」
「なんか入院した孫の為に買ったって言ってたぞ」
「こ、こんなにたくさんですか?」
「お前の探してた本もあるかも知れないから見せてもらいに行けばいーじゃねーか」
「え?私たちが?」
「この私が作った絵本の缶詰め持ってお見舞いに行けば大丈夫だよ!」
「で、でもぉ…」
「古来、老紳士は優しいから平気だよ!」
こうしてぼくらはなぜか…
見ず知らずお子さんのお見舞いに行く事になった…。
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【藻中小児病院】
今度は「かみなりちゃんのおとしどころ」を逆に眺めながら外に出て
あっという間に藻中小児病院についた。
「でも、部外者の私たちが勝手にお見舞いなんかしていいんですかねー?」
「うーん…確かに…カニエケイゾウ」
「え?…」
なんかわらびさんが語尾になんかちっちゃくつけたぞ!
「な、なんでもないですっっ!!」
顔を真っ赤にしている
「あっ!?…あー、あーあ!」
「な、なんですか?!」
「さっき本多女史が言った『買い占めてった、杉本てった』が気に入ったんですね?!」
「ち、違いますうっ!!」
「脇役語尾ダジャレが気に入ったんですね?」
「ちょっと、ここは病院なんで静かにしてくださいねー」
「あ、はいっ!!」
声の方を向くと…
さっき外で虚ろな瞳でシャボン玉を吹いていた看護師さんがいた。
もうさっきのような虚ろな瞳ではない…
長身、スレンダーな看護師さんが
地獄のような一重瞼でこちらを睨んでいる。
「あ、すみません…」
「あ、あの、ここに老紳士の方にお見舞いに来たと思うんですが、…なんか絵本をたくさん持っていると思うんですが…」
「なんでお見舞いなのに、刑事みたいな聞き方なんですか?」
「あ…」
「…まぁいいです、多分、跳躍(ちょうやく)さん一派のとこだわ」
「跳躍さん…一派??」
「私はコンプライアンスなんて言葉は大嫌いですが、患者さんには絶対迷惑かけるないでくださいよ…はいっ、これ」
「あっ!」
そう言って看護師さんは2つマスクを投げてくれた。
ちょっとカッコいいな…と思った。
「4階にいますよ」
「あ、あのできれば、何号室かも…」
「行けば解ります…4階は全フロアを跳躍さんが貸しきってますから。」
「え?…貸し切り?」
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【貸し切りの理由】
4階についたボクたちは看護師さんの言ってる意味が解った…。
跳躍さんのお孫さんが実際にいるのは普通の大部屋一室だったが
他の部屋には買い占めた本がぎゅうぎゅう詰めに詰め込められていたのだ。
「あ、すみません…失礼しまーす」
おっかなびっくり部屋を覗く…
「昔はよー、俺が風邪ひいた時はよくお袋がりんご擦ってくれてたもんだー」
「うちなんてその上、お袋が茶巾で濾してりんご汁にして飲ませてくれたよなー」
「うちなんて、りんごをうさぎの形に切ってくれて、壁に叩きつけてたなー」
「なんで壁に叩きつけるんだよ?!」
「お袋がうさぎが嫌いでさー!」
「じゃあなんでうさぎに切んだよー」
「そこは子供が可愛いからだろー」
……なんか、老人ばかりがひしめき合いワイワイくっちゃべっている。
緑色のジャージ…
茶色のチャンチャンコ…
なんか川下りのライフジャケットみたいなのを着てるじいさん…
いずれにせよ老紳士のイメージとかけ離れている…
「な、なんか思ってたのとイメージ違いますね…」
私がドアの陰でわらびさんにヒソヒソ話し掛ける…
「そ、それよりもどの人が跳躍さんなんでしょう?」
ベッドの上にいるらしきお孫さんの顔は…
ここからでは見えない。
「えーと…あの人…かな…??」
わらびさんが指差した。
(つづく)
【次回…川中島東町会の悲しい歴史】
