第41話 発想力 | ホークスを世界一に! 孫正義の21世紀革命2005

第41話 発想力


第41話


発想力






 孫泰蔵(ガンホー・オンライン・エンターテイメント会長)の発想は兄正義譲り、ユニークで壮大である。

「アジアに、シリコンバレーとハリウッドを足したようなものを作りたい」。

 上海、東京あるいは特定の場所というのではないのかもしれない。泰蔵が描くイメージは、20世紀初頭のパリのサロン。画家、詩人など多くの文化人が集まった。時代を動かしていく人材が集まり、作品やテクノロジーが生み出され、大きなうねりとなって世界に発信される場所。「自分もその中のひとりとして動きたい」。新しい時代を切り開いていきたい。それが泰蔵の夢なのだ。

 シリコンバレーでは、ヤフーを始め多くのユニークな企業が生まれた。泰蔵は言う。「あの場所から新しいテクノロジーが生まれ、世の中の価値観が変わった」。エンターテイメントの世界でも同じようなことがハリウッドで起きた。「人々の熱い思いや価値観、情熱などが伝わっていく形で、第2、第3の孫正義が現れるかもしれない」

 同じ志をもった人々が集うことができる「磁場のようなものを作りたい」と泰蔵は考えているのだ。


 

 孫泰蔵のユニークな発想は野球にまで及んでいる。「ホークスのファンで、特に門田(博光)選手のホームランに憧れた」野球少年だった泰蔵は、むろんいまも熱心なホークス・ファンだ。ヤフーBBのライブ配信を楽しむだけでなく、「チャット」でもメッセージを送る。「ズレータ打てー!」「ようやった!」など。「熱くなっちゃいますね」という泰蔵。「野球をおもしろくするアイデアはいっぱいある」。たとえば、相撲の人気の取り組みには懸賞金が賭けられることがある。「それと同じことが、野球でもケータイを使ってできるのではないか」。ここぞという場面で、ファンがケータイで賞金を賭けられる仕組み。

<満塁。松中登場>

1人100円程度でも、多くの人が集まれば大きな賞金になる」。バックスクリーンに懸賞金の額が表示される。これにはギャンブル性がなく、法的にも問題はない。100円に対する待ち受け画面への対価と考えられる。ファンも選手も熱くなれる。野球がますますおもしろくなる。

「こういった発想ができるのも兄貴(正義)がブロードバンドのインフラを普及させてくれたおかげです。ぼくらはその恩恵を受けている。兄貴に感謝しなくちゃね」。

孫泰蔵のユニークなアイデアが実現する日は、そう遠くないだろう。

(文中敬称略)