第34話 七夕 | ホークスを世界一に! 孫正義の21世紀革命2005

第34話 七夕

第34話 


七 夕






 孫正義は弟・泰蔵に言った。「(アメリカに留学していたころ)おれは世界一勉強したと言い切れる」。睡眠時間の6時間は確保したが、残りの18時間は「すべて勉強した」。フロに入っているときも教科書を濡らさないようにビニールで覆い、歩きながら教科書を読んだ。「おまえもそのくらい勉強してみろ。自分を騙すことが一番難しいぞ。後から言い訳をするな。結果はいい。もうこれ以上できない、というところまでやってみろ」。泰蔵は兄の言葉に「クソー!」。おれだってと発奮した。1年間の猛勉強。結果、東大に合格。兄は弟に言った。「よう、やった」初めて兄は弟を褒めた。

 泰蔵は決意した。「兄は常人じゃないですから、兄のようにはなれない。でも、ぼくなりの道をいかなきゃいかん」。泰蔵は今年3月、ガンホー・オンラインエンターテイメントを上場させた。「ようやったぞ。フロントランナーになった。新しく生み出した。価値がある」兄が褒めてくれた。受験に合格以来、2度目だ。「とことんやりぬいた」ことを兄は認めてくれた。願いはかなう。




 7月4日(月)。この日から楽天との3連戦。松中の本塁打。代打井手の3ラン。だが、ゲームは振り出しに戻った。9回表、4点を取られ同点に。楽勝ムードから一変した。野球はドラマティックだ。新星・井手がヒットで出ると、バティスタがセンターの頭上を越える勝ち越し打。8-7。王監督は通算1100勝目。13連勝。「油断してはいけない。初心に帰れということを教えられた」(王監督)

 7月5日(火)。九州地方は叩きつけるような激しい雨。この日、フリーエージェント(FA)の権利を取得した城島は爽やかだった。「福岡か自分の夢(大リーグ)かどちらかになる」。12勝目の杉内はお立ち台で懇願した。「ぼくはこの4年間城島さんにお世話になりっぱなし。来年もお世話になります」

 7月6日(水)。3回裏の猛攻撃で8点を奪った。試合はこの回で決した。14-3の圧勝。プロ野球史上34年ぶりの15連勝。最多連勝記録は54年南海(現・ソフトバンク)と60年大毎(現・ロッテ)の18連勝。「15連勝は終わったことだ。2日休んで、(9日の)西武戦から再スタートのつもりでやる」(王監督)




 7月7日(木)。七夕。天の川の両岸に別れて暮らす織り姫とひこ星。1年に1度、この日の夜に会うことができる。願いごとはかなう。<日本一奪還>。

              (文中敬称略)