焔の命、プロローグ。 | クレハズム

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焔の命 ――女優の卵がテロリストになった理由(わけ)

 

脚本/松澤くれは

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

[語り部]

・ノンフィクション作家 清水佐奈

…テロ事件を客観的に報道するため取材を続ける。

 

[劇団・焔の命メンバー]

・主演女優 佐伯真理子

…実家暮らし、スナックでアルバイトをしながら役者を続ける。

・演出家 森 洋平

…大言壮語だがカリスマ性あり。コンプレックスの塊。

・看板女優 永田めぐみ

…プライドが高く、相手を責め立てやすい気質。

・看板俳優 坂口ツトム

…体育会系の熱い役者。芝居一筋で集客力がない。

・中堅女優 遠山夏菜

…軽い興味で入団したムードメーカー。スマホ中毒。

・中堅俳優 山田龍太

…意識高い系の理屈屋。社会のあり方や働き方に疑問をもち、あえて演劇の道へ。

・新人女優 小嶋未知可

…森の作る物語に共感して入団。盲目的で、森のイエスマン。

・新人俳優 加藤恵介

…バックパッカー経験あり。イスラム情勢と国内テロに危機感。

・劇団制作 重信京子

…裏方チームのなんでも屋さん。みんなが頼りにするしっかり者。

 

[佐伯家]

・母親…風水に傾倒。心理カウンセラーの「先生」の意見に左右され、思想を家庭に持ち込む。

・伊玖子…就職して両親の望む通りに成長した妹。姉の真理子からは「理想の娘」像に見える。

・彼氏…毒の無い優男。真理子を応援するも、価値観の相違がすれ違いを生む。

 

[スナック]

・ママ…真理子の勤務するスナックのママ。ネットワークビジネスに夢中。

・レイナ…若い同僚。世渡り上手で、真理子を見下している。

・赤城さん…スナックの常連。真理子との「アフター」を狙っている。

・TO…真理子のトップオタ。お店の外でも真理子につきまとう。

 



 

■プロローグ

 

 薄暗い明かり。

 真理子が客席に背を向けて立っている。客席から顔は見えない。

 手には大きな紙袋を持っている。

 


キャスターの声

「こんばんは、ニュースの時間です。

今月4日に発生しました都内オリンピック施設連続爆破事件の容疑者として、警視庁は本日、自称・舞台演出家の森洋平、28歳、劇団員の佐伯真理子、27歳、ほか劇団【焔の命】と名乗るメンバーら6名を、爆発物取締罰則違反、及び殺人などの容疑で逮捕しました。

森容疑者らは、今月4日、東京都新国立競技場、日本オリンピック委員会本部ビル、オリンピック選手村、アクアティクスセンター、有明アリーナ、海の森水上競技場、以上計6箇所の各施設に対し、爆発物をもって損壊を与えました。被害は現在のところ死者数十名、負傷者百数十名にのぼっております。東京都ならびに日本オリンピック委員会は、来週13日からはじまる東京オリンピックを少なくとも1週間遅らせるとの声明を発表しました。ロシア、韓国など7か国が参加の取り消しを表明しており、各国との個別協議が続いています。2020年東京オリンピック開幕が大幅に遅れる前代未聞の事態に、原官房長官は「戦後最大の混乱を迎える可能性が高く、極めて緊急性の高い局面にいる」と述べました。警視庁は容疑者らの事情聴取を行うとともに、東京都・世田谷区の劇団施設の捜索を進める方針です。

また、犯行前に容疑者らが潜伏していたと見られる、富山県・立山のコテージからは、2名の遺体が発見されており、残り1名の劇団関係者の行方を追うとともに、容疑者らから引き続き事情を聞く方針です。

地下鉄サリン事件をこえる死傷者数となった国内最大のテロはなぜ起こったのか。夢を追う劇団の若者たちがなぜこのような惨事を引き起こしたのか。事件全容の究明が待たれます。

ええ、スタジオには、東京地検特捜部の古川警視、そしてテロ安全対策に詳しい東京大学の大井川教授にお越しいただきました」

 

教授「よろしくお願いします」

警視「よろしくお願いします」

 

キャスター「このような凄惨な事件について、どのようにお受け止めでしょうか」

 

教授「非常に遺憾ですね。国内テロの歴史を紐解いても、これほどの被害規模、また国際問題は類を見ません」

 

キャスター「それが、20代後半の若者を中心としたメンバーというのも」

 

教授「ええそうですね、一部では、過激派組織の関係の疑いありとみております」

警視「そちらは現在捜査中です」

 

キャスター「はい。ネットでは賞賛、共感の意見も見受けられますが」

 

教授「市民の尊い命を奪った罪の大きさは計り知れない、世論もそうでしょうね。一方的であまりに残虐、現代の若者の鬱屈した感情でしょうか、暴走と言ってもいい。根は深い」

警視「我々としても無差別テロは断じて許しません。総力をあげ、事件究明に向け全力で……」

 


 舞台中央に紙袋を置いて、真理子が去る。

 少しずつ周囲の喧騒が大きくなる。

 爆発音ののち、建物の倒壊やガラスが割れて飛び散る等の轟音。

 人々の悲鳴や逃げ惑う声が重なり、大きなうねりとなっていく。

 やがて静寂がおとずれる。

 

 暗闇のなか、

 ●SE(インターホン)が複数回、鳴る。

 

 明かりがつく。佐伯家・居間。

 茶の間テーブルの前、座布団の上に清水が座っている。

 

 真理子の母親が、お盆にお茶をのせて入ってくる。

 かたちは地味だが暖色の色使いで、違和感のある服装。手首に、数珠を幾重にも巻いている。

 母親、清水の前にお茶を置く。

 

清水  すみません。

 

 それきり母親が俯いたまま、長い沈黙。

 

清水  お忙しいところ、ありがとうございます。

 

 反応はない。





















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プロローグの続きは劇場で。
終わらない物語をご用意して待ってます。

同じ時代に生まれた、
同じ時代に生きる人へ。