#23




「私は、お前の父だ。お前の成長は嬉しいが、それ以上に怖いんだよ。お前は、誰もが認める天才なんだよ。私もプラウスも、あのゴドウィンでさえ、お前が〝大魔導士ギド・ジャー〟の再来と呼ぶにふさわしい天才だと思っている」

大魔導士ギド・ジャー。今から百年以上前の人物で、世界で一番最初の魔法使いにして魔法界最高の位〝大魔導士〟の称号を受けた唯一人物だ。そんな偉人と自分が比較されていたなんて、ウィンダーは考えたこともなかった。知識ならジュリアスやシーラに敵わないし、魔法ならリーチャーと変わらない実力だと思っていただけに、ストランジの話がまるで見えてこなかった。

「それは間違えた評価だね。オレがそんな力を――」

「持ってるんだよ」

ストランジは、否定しているウィンダーの机にある古い本を持った。

「お前、これが面白いって言ったよな?」

「うん」

「この本が何の本かわかるか?」

「魔法使いの教科書でしょ? リーチャーは、まったく分からないって言ってたけど」

「そう、そこが他の子と違うとこなんだ」

「意味が分からないよ」ウィンダーは、さらに混乱した。

「この本は、〈賢者(ウィザード)〉という本で、書いたのはギド・ジャー本人だ」

「へえ、そんな昔からある本なんだ」

「これを一番最初に読ませたのはジュリアスだ。だが、ジュリアスは全く分からないと言っていた。次にシーラにも読んでもらったが、同じ答えが返ってきた」

「え、あの二人が読めないの? こんなに面白い本なのに」

「もう一つ言えば、この本は私も読めなかった。ゴドウィンもあのネルも読めなかった本だ。それをお前は面白いと言って話してきた。驚いたよ。大魔導士ギド・ジャーの本を読めた人間を初めて見たからな。すぐにゴドウィンに話したよ。ついに大魔導士の才を持った人間が現れたって」

「全然実感がわかない……」

「簡単に言えば、お前は生まれたときからそういう星のもとに生まれたということだよ。だからこそ、注意しなければならない」

「どういうこと?」

「お前は、すぐにカッとなるところがある。だがら、自分の怒りのリミッターが外れたとき、お前は大魔導士ではなく、大魔王になってしまうおそれがあるということだ。あくまで可能性の話だ。なってしまうという可能性がな」

「オレはならないよ」

「もちろんだ。ならないだろうし、私たちが絶対にならせない! だがな、私たちの仕事柄、最悪のことも考えなければいけないんだよ。だから、私たちの中でお前は一応危険人物としてみているんだ。どうか、パパを責めないでくれ。それがパパたちの仕事なんだ」

「なんとなく……わかった」

ウィンダーは、納得はしていなかった。自分が危険人物で、大魔導士の才を持っていて――急にいろんなことを言われて混乱していた。カッとしてしまうことは自分でも納得したが。確かに、いつもリーチャーになだめられていることが多いような気がする。リーチャーは、自分を抑える蓋となっているのかもしれないとウィンダーは思った。