水野南北とえば、人相学の大家です。
ところが、この方は、実際に弟子達の目から見ても
人相学的には、よい相ではなかったのです。
そこに疑問を抱いた、弟子が水野南北に次のような質問をしました。

 「先生は、弟子のわたくし達からみても、失礼ながら決して良い相では
ございません。どうして、そのような相でありながら
人相学の大家に成り得たのでございましょうか?」

 こう聞かれた水野南北は次のように答えたのでした。

「私は病弱で短命な相だ。それは百も承知だ。
しかし病弱、短命な相だとわかったから、食べ物も節制して、酒に溺れることもなく
美食を控え、暴飲暴食をせぬよう人一倍体に気を配ったものだ。
だから、このように健康で長寿になれたのだ。」

「そして私には財運がない。貧困の相である。
だから少しでも余裕があったら施しをして、ないときは節約をして
慎ましやかに若い頃はやってきたんだ。
だから今はお蔭様で、このように非常に豊かで財運にも恵まれるようになったんだ。」

「その上、私は孤独の相で、本当に独りぼっちの親も兄弟もみんな死んでしまう
妻とも別れ、子供にも縁が薄いだろう、という相だし
友人も、それから、色々な協力者や援助者にも恵まれず助けてもらえず、誰からも
見捨てられてしまうという人相だ。」

「そう知ったので私は、人には礼節を尽くし、本当に真心込めて誠心誠意お付き合いを
させていただいたのだ。
だから今では、私はこんなにも多くの人からいいご縁を頂いているんだよ。」

 それを聞いた弟子達からは深いため息が漏れたといいます。
それだからこそ、水野南北先生は日本一の人相なのであると・・・