は っ ち ゃ き 侍
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翼はゲット済み!




<ニコニコ動画リンク貼りテスト>


3年前に作った曲。

先に曲があって、後からメロのイメージで作詞したら痛々しい感じになってしまった。

そもそも作詞処女作であった。

今でも作詞が枷でミク曲はなかなか作れません。

以前に書いた歌詞。

無題1
新しい季節が来ると 離れてしまった君を思い出すよ
今どこでどうしてるかな?きっと君のことだかららしくやっているさ
弱虫だった僕を笑顔で守ってくれた
だから君がくれた勇気集め駆け出せる
君が残してくれたあの言葉を力に変えて
僕は今駆けてる
楽しく大きな日を生きていくよ
また再び君に出会える日まで
忙しい毎日に追われ いろんな優しさを見落としているけれど
君が教えてくれた あの言葉は心で輝き続けてる
自分が誰なのか見失いそうになるけど
君がくれたあの日々が僕をしっかりと覚えてる
忘れられないメロディー 今も胸で鳴っているよ
僕を突き動かしてる
何度でも何度でも
よみがえるよ 僕の心はいつも前を向いている
弱虫だった僕を笑顔で守ってくれた
だから君がくれた勇気集め駆け出せる
君が残してくれたあの言葉を力に変えて
僕は今駆けてる
楽しく大きな日を生きていくよ
また再び君に出会える日まで



無題2
行けよ 行けよ 行けよ 行けよ 立ち止まらずに
今までの自分を過去にして
行けよ 行けよ 行けよ 行けよ 前だけ向いて
新しい自分に会う旅が 今始まる
変わらない季節の中で 変わらない毎日が繰り返されている
あんなにも満ちあふれてた 感情が刺激を忘れてしまった
いつからだろう 考える事をやめて
人に合わすことがうまくなっていた
それが大人だと思っていたけど
そこに自分はいなかった
行けよ 行けよ 行けよ 行けよ 立ち止まらずに
今までの自分を過去にして
行けよ 行けよ 行けよ 行けよ 前だけ向いて
新しい自分に会う旅が 今始まる
負けっぱなしの君なのになぜか うらやましくなるよ前を向いてるから
君と僕を色で例えたら 君は赤くて濃くて僕はグレーだろう
繰り返す毎日繰り返すだけなら
見える景色は同じだけど
地面を蹴って自分を飛び出せたなら
昨日より広い今日が見える
行けよ 行けよ 行けよ 行けよ 立ち止まらずに
今までの自分を過去にして
行けよ 行けよ 行けよ 行けよ 前だけ向いて
新しい自分に会う旅が 今始まる


無題3
みんないなくなっちゃった あの人も
みんないなくなっちゃった あの町も
みんないなくなっちゃった あの日の空も
みんないなくなっちゃった あの日の僕も
風の香りで思い出す懐かしいぬくもり
手では絶対さわれない優しいぬくもり
みんないなくなっちゃった お気に入りのおもちゃも
みんないなくなっちゃった 思い出せないあの人も
みんないなくなっちゃった あの歌も
みんないなくなっちゃった あの教室も
みんないなくなっちゃった あの帰り道
みんないなくなっちゃった 忘れたあの人も
ふとした時に僕の心にふれる
時々会いたくなる心にだけいるみんなに
今もそんな景色を見せてくれるみんなに感謝します
あの日のみんなに会えなくてあの日の空気が吸いたくて
さみしい時もあるけど目の前にはみんながいる
今いるみんなはみんないる
今いるみんなはみんないる
今いるみんなはみんないる
今いるみんなはみんないる
絶対いる
今いるみんなはみんないる
今いるみんなはみんないる
今いるみんなはみんないる
今いるみんなはみんないる
間違いなくいるから
恥ずかしい気持ちはどっかに置いといて
手を伸ばそう


タイトル:フライングニュートン
俺には引力が足りない
万有引力の法則が俺にははまらない
詰めが甘いぞ、ニュートン
本当はリンゴ以外が浮いてたりニュートンが浮いてたり
落ちないリンゴ囓っても味がしない
マッキントッシュのリンゴには色がない
神様、翼はいらないから引力くれ
心と体が離れてく
フワフワ浮いて地球が遠ざかる
あの子の瞳、小さくなる
仕事に行かなきゃ
テレビ見なきゃ
宇宙に投げ出されそう
ただで宇宙旅行
月で足跡、アームストロング
存在してるのか?まだ地球か?
書けないボールペン
興味が強いほど引力も強い
夢を持っても気持ちが軽いからフワフワ浮いてしまう
あくびが出る
今とふれ合おう

青春アパートメント最終回

 札幌からそのままの足で久しぶりに椎名町へやってきた。
「全然迷わないや。覚えているもんだな」
 と独り言を言いながら徐々に足早になって歩いていく。
「大家さん、元気ならいいけど・・・」
 あったはずの店が無くなり新しい建物に変わっていた。
 ・・・あれから一五年経っていた。
 僕はおみやげの白い恋人を持って歩いた。
 町を眺めながらしばらく歩いて路地を曲がった時、かぶらぎ荘の前にいる腰の曲がったおばあさんが目に入った。
「ああ、無理ないよな・・・」
 そのおばあさんは見るからに小さく、力無く道を箒で掃いている姿にはあの頃の勢いはどこにも無かった。
 もっと頻繁に顔を出せばよかった。同じ都内に住んでいるんだ。会おうと思えばいくらでも会えたのに・・・。
「ああ、そうか。そうだよな・・・」
 そう後悔しながら恐る恐る歩く僕の横を見慣れたおばあさんが自転車で軽快に走り抜けた。
「何ぶつくさ言ってんだい?」
「あ、あれ?」
「まったく今まで何やってたんだい?薄情なんだから。みんなは来てくれてたんだよ」
「あの、ご無沙汰してます・・・でも、あの・・・」
「何さ?」
「変わらなさ過ぎですよ」
 大家さんは本当にもう妖怪かと思うくらい全然まったく変わっていなかった。
「何言ってるの?もうすっかりしわしわのヨレヨレだろ?」
 大家さんはそう言うと片目をつぶってお茶目に笑った。
 札幌のドラさんの部屋はかぶらぎ荘にそっくりだった。
 大きさも、部屋に佇んでいる「もわっ」としたあの空気も、コタツも、ギターも、剣菱の一升瓶も、
 壁に力強く堂々と貼られているあの文字も。
 僕はその文字を見ながら、先輩風を吹かせて、大人ぶって、口だけで、見掛け倒しのニセ柔道部で、カッコつけて女の借金の肩代わりをして、カッコ悪く取り乱したドラさんを思い出していた。
 ドラさんが愛しくて愛しくて仕方が無かった。


「そうかい。それはありがとう、よく行ってくれたね。ごくろうさん」
 大家さんはそう言うと何度か頷いて席を立ち
「折角のおみやげだからいただこうかね。今コーヒー入れるから」
 と共同台所へ出て行った。
 あのカーテンもこのジュータンも、同じだ。
 そうやってしばらくの間、あの頃とまったく変わっていない居間を懐かしく見回していたが、テレビの下に思いがけない物を見つけた。
 それはファミコンだった。
 いつも散々負かされたファミスタのカセットが差し込まれたままの状態でそこにあった。
 僕はテレビのスイッチを入れ、ファミコンをセットした。
 やがて大家さんがコーヒーと白い恋人を持ってやって来た。
「1ゲームどうですか?」
 僕は腕まくりをしながら大家さんに十五年振りの再戦を挑んだ。
               
〈了〉

青春アパートメント〈37〉

 それから一年後・・・。
 僕は今さっき出版社から郵便屋さんによって運ばれてきたばかりの角0封筒を玄関に立ったまま乱暴に開け、中から雑誌を取り出した。そして封を開けずにそのままの状態で
「来たよー」
 と叫んだ。
 その声を合図にみんなが各々の部屋からドタドタと出てきた。
「めくりますね・・・」
 背後には僕を囲むように大家さん、真奈美さん、佐々木くんが雑誌がめくられるのを注目していた。僕は震える指で雑誌をめくっていった。なんだか夢みたいで信じられなかった。だけどそこにはちゃんとあったんだ、僕の漫画が。
 感極まった僕より先に泣いたのは佐々木くんだった。
「わー、やったー!うーっうーっ」
 と自分の事のように泣いていた。
 佐々木くんはこの三ヶ月後に例の「本当は家庭的な」彼女と結婚し、かぶらぎ荘を出て行った。それからしばらくはよく顔を見せていたけれどそのうち会わなくなってしまった。ちゃんとした青年のお手本のような人だったからきっと今もどこかで間違いのない人生を送っているのだろう。
「よかったね、あんた。本当によかったねぇ・・・」
 次に僕を出し抜いて泣いたのは大家さんだった。
 大家さんとは更に二年半の付き合いとなる。その間もまあいろいろとあったのだけどそれはまた別の機会に譲ろうと思う。大家さんともそれ以来会っていないが相変わらずかぶらぎ荘の大家として住人を守っているそうだ。
「よかったね、私嬉しい・・・」
 と静かに泣くのは真奈美さんだった。
 真奈美さんはあの後すぐに役者の彼と別れ、別の大きな劇団にスカウトされた。演劇誌にも頻繁に取り上げられるようになり、今ではテレビや映画で活躍している。テレビで見る真奈美さんは綺麗な大人の女性になっていたが人を気遣う話し方と包み込むような笑顔はあの頃のままだった。そして相変わらずの主語を省いたコメントでレポーターを困らせていた。真奈美さんはまだワイドショーで結婚の報告を聞かないから独身なのだろう。真奈美さんはきっと生涯一女優として生きるんじゃないだろうか。わかんないけど。 
 周りでさんざん泣いているので僕はすっかり醒めてしまってまったく泣けなかった。そんな憮然としているところに近藤さんが
「みなさんみなさん!」
 と興奮しながら帰ってきて
「お、お店に大江健三郎さんがいらしたんです!」
 と言った。
「えっ?」
 みんなが近藤さんに注目した。
「いや、私、興奮しました!ファンですから。サインも貰っちゃいましたよ。いい方でした。素晴らしかった。紳士でした」
 こんなにテンションの高い近藤さんを見た事がなかったから僕たちは大笑いした。それに気付いて恥ずかしそうにしている近藤さんに大家さんは
「こっちもめでたいんだよ」
 と僕の漫画を見せた。
「ああ、すごい!すごい!」
 近藤さんはそれからしばらくして咽頭ガンの手術を受けるも順調に快復。半年ほどで退院すると却って以前より元気になった。近藤さんとも会っていないけれど結婚した娘さん夫婦と一緒に富山で暮らしているらしい。
「とうとうやりましたね、小林さん!かぶらぎ荘から作家が出ましたね」 
 と近藤さんが言うとその言い方があまりにも大袈裟だったのでみんなまた笑った。
「うーっ、やったー!ううっ」
 佐々木くんだけがまだ泣いていた。
→次回最終回です。

青春アパートメント〈36〉

 公演の日、大家さんと佐々木くん、珍しく近藤さんも一緒に観に行った。
「立派なところだねー」
 と感心している大家さんは防虫剤臭かった。
会場はわりと古い建物でそれほど大きくはなかったが場内は観客で一杯だった。僕の知らないところで真奈美さんの劇団は結構な人気を集めているようだった。
「わー!アラー!」
 入口付近に貼られているポスターに真奈美さんの名前を見つけ、大家さんが奇声を発した。
「ちゃんと載ってるよ。大したもんだね」
 確かにちゃんと上から四番目のところに久保田真奈美と書かれてあった。
「小林さん、真奈美さんと練習してたから余計に緊張するでしょ?」
 と佐々木くんに突っ込まれ僕は
「まあな」
 と笑った。
「殺せ殺せって言ってましたもんねー」
 近藤さんが
「ははは」
 と笑った。
すり鉢状の三〇〇ほどある席の中段に座って僕たちは幕が開くのを待った。
やがて場内アナウンスの後、灯りが絞られ幕が徐々に上がっていった。
スポットライトを浴びて堂々と演技をする真奈美さんは紛れもない女優だった。 
僕は夢は違うがライバルとして嬉しく清々しい気持ちで輝いている真奈美さんを観ていた。そして「殺せ!殺すのだ!」と真奈美さんと一緒になって演技をしている一際存在感のある役者を観てさすが違うなーと思った。僕も同じセリフを吐いたけどそれは声量とは違ったところでしっかりと心に届き、みんなを魅了していた。だけど・・・これは悔しいから言う訳じゃないが真奈美さんはこの役者をもいずれは越えるだろうと思った。
大拍手の中で幕が下りた。
 楽屋に行くと真奈美さんが嬉しそうに駆け寄ってきて僕の手を握り
「ありがとう、小林さん!」
 と言った。
 化粧を涙で落としながら感激して泣いている真奈美さんに感激していると横から大家さんが出てきて
「よかったよー」
 と泣きながら真奈美さんに抱きついた。僕は弾かれた形になって佐々木くんと近藤さんの間に入りながら二人を見ていた。
 その時、僕の横を背の高い、悔しいけど格好良かった真奈美さんの彼氏が通り過ぎた。僕は一人で意味も無く何度か頷いた後再び視線を真奈美さんに戻した。
「ねえ、ちょっと・・・」
 真奈美さんが手招きするので近寄ると
「・・・あのね、ドラさん来てた」
 と言った。
「えっ!」
 僕が驚いて周りを見渡すと真奈美さんは慌てて
「ごめん。そんな気がしたの」
 と付け加えた。
「客席のどこかからドラさんが見守ってくれていたような気がしたの。きっと来てくれたんだと思う・・・」
 その時、僕にも見えた気がした。ヒゲ面の四角い顔をガハハと揺らしながら笑っているドラさんが。
 真奈美さんは嬉しそうないい顔で笑っていた。
 ドラさんはすごいな。ドラさんはやっぱりドラさんだ。
 そして僕の中からやってやるぞ!という熱い気持ちが込み上げてきた。

青春アパートメント〈35〉

 それから一週間後の夜、ドラさんがコソコソと帰って来た。誰にも気付かれないようにそーっと忍び足で廊下を歩いていたが、築五〇年のボロアパートは容赦なくギシギシ音を上げていた為、おそらく全員気付いていた。
 大家さんの話によるとあの男は取り立て屋で、ドラさんは女の保証人になって四〇〇万の借金を負わされたらしい。そして女はどこかへ逃げてしまったという事だった。
「それにね岩田さん、本当は三二歳なんだってさ・・・そんな事どうだっていいのにね」
 僕は波川が来た日、ドラさんと一緒に部屋にいた会った事のない女の気配を思い出していた。
 それはドア越しからだったけれど、どことなく申し訳なさそうに小さく身を縮こませている気配が感じられた。もしかしたらドラさんはわかってて騙されたんじゃないだろうか。そしてドラさんが彼女を逃がしたんじゃないだろうか・・・。
 みんなもそっとしているから僕もそうしようと思ったけれど、ドラさんがこのままいなくってしまいそうな気がしたので僕は部屋を出て一度深呼吸した後、ドア越しに控えめな声で努めて明るく
「ドラさーん」
 と呼んだ。 
 しばらくして戸が開けられると白髪混じりの髪をボサボサにした生気のないドラさんが立っていた。
「おう・・・」
 座布団を勧められ僕は座った。壁掛け時計の音がやけに大きく聞こえた。
「・・・いろいろ迷惑かけたみたいだな」
「いや、こっちは全然。大家さんがもう凄かったから・・・それより大変だったね。でもドラさんは少しも悪くないんだからさ」
 会話の途中でドラさんは立ち上がってコップと剣菱を持ってきて互いのコップに注ぎながら「漫画、どうだった?」と聞いた。注いでいる途中で酒が切れた。
 僕はそれを一口飲むとタガがはずれ、まくし立てるようにあの日の話をすると
「最悪だった!アイツ何なんだろう?こっちはどれだけ苦労して描いたつーの!パパッと読んだだけで偉そーに。じゃあお前が描いてみろって!」
 続けざまにそう言った。
「・・・いや」
 僕の話を黙って聞いていたドラさんだったが一口も口を付けていないコップをじっと見たまま悲しそうに言った。
「その人、小林くんの事をよく見てるよ。小林くん、前から思ってたんだけど・・・大人にならなきゃ駄目だ。打たれ弱すぎる。もっと強くならなきゃ駄目だ。どんな仕事だってそれぞれ辛いんだよ。みんな頭抱えて吐き気と戦いながら嘘までついて、それでも逃げずに踏ん張って生きてる。漫画を描いてるからって小林くんだけが特別じゃないんだよ。みんな厳しい世界で生きてるんだ。小林くんは今社会に出てもきっと何も務まらないよ。言い訳して誰かのせいにして仕事を変えるだけだ・・・小林くんはずっと言い訳ばかりしてる。だけど結局、打たれ弱い怠け者なんだよ。強くなるしかないじゃない?だから編集のその人はそう言って尻を叩いてくれたんじゃないかな?どうでもいい人間にそんな事言わないよ」
 そう一気に話すとドラさんは日本酒を一息に空けて
「・・・もう疲れた、こんな事一々言うの。俺、それどころじゃねーんだよ。人の事なんか構ってられないんだ悪いけど。描きたきゃ描けよ?知らねーよ俺。俺が描く訳じゃねーし。知らねーよ・・・俺は俺の事で頭が一杯なんだ。お前助けてくれんの?お金くれんの?もういいよ。ごめん。悪いけど出てってくれ」
僕は部屋に戻り布団に潜って泣いた。ドラさんをあそこまで追い詰めた何かに腹が立ったのと、怒られて悔しかったのと、嬉しかったのと・・・いろいろな涙が溢れた。
その時はそれが悔し涙なのかうれし涙なのかわからなかった。でも今は言える。僕を怒ってくれたドラさんに感謝していると。そしてあの時救って上げられなかった僕の非力を許してほしいと。
 翌日ドラさんはひっそりとかぶらぎ荘を出て行った。部屋の荷物は残っていたがテーブルには残りの家賃と大家さんへの手紙が残され壁に貼られていた「男はデッカク!」の文字は乱暴にちぎり取られていた。

ドラエもの


は っ ち ゃ き 侍-ドラエもの1






は っ ち ゃ き 侍-ドラエもの2



青春アパートメント〈34〉

「殺せ!さあ殺せ!」
「・・・できません」
「殺せ!お前は以前にもこの男を殺したではないか!恋心を弄びこの男の心を殺したではないか!見ろ!男の目を!もう死んだも同然だ!お前が殺したんだ。さあ、止めをさすのだ!殺せ!殺せえええええっっっ!」
「・・・フフフ。小林さんすごーい!」
「そ、そう?」
「どんどん上手くなってくね」
「うーん、いや、でも今回のはなかなかストレス発散になっていいね」
 そこで真奈美さんはどう答えていいのかわからずに困り笑いをした。
 一週間前のあの夜、乱暴にアパートへ帰ると大家さんの部屋で僕を待っていた大家さんと真奈美さんと佐々木くんが一斉に出てきて、玄関で靴を脱ぐ僕の背中越しに佐々木くんが
「どうでした?」
 と声をかけた。いや、正確には「どう」までは元気が良かったが振り向いた僕の表情を見た途端、急にたじろぐように「・・・でした?」と続けた。
 僕は何も言わずに黙って部屋に入った。そうして灯りもつけず大の字になって天井を眺め、いつの間にか眠ってしまった。寝るまでの記憶ははっきり残っていたから翌朝は気まずかったが誰も何も触れなかった。

「最近どうしたんだろうね?」
 何の事かわからなかったから僕は考えた。だんだんわかってきた事だけど一見A型に見える真奈美さんは実はB型でオッチョコチョイなところがあり、主語を頭の中に置き忘れて話し始める事がよくあった。最初のうちは困惑し聞き返していたがそれはそれで会話のテンポを切るし真奈美さんの気持ちを盛り下げてしまうので聞く前に一旦自分で考えるようになった。当然どうしてもわからない時には聞くけれど少し考えれば大体の事はわかるようになった。
「・・・ドラさんの事?」
 それでも自信がある訳ではないから勇気を持って聞いてみる・・・この間が怖い。
「・・・うん」
 わーよかった。当ってた。ホッと胸を撫で下ろす。しかし真奈美さんの彼氏・・・つまり僕のこの役をやってるヤローはすぐにわかるんだろうな。くやしいけどそいつはきっといい奴だろうな・・・。
「もう十日も帰ってこない。こんな事無かったから」
 座布団の上にある足を組み替えながら真奈美さんが言った。色気を消した無防備な素足が妙にドキドキする。僕は頭を振ってそれを打ち消しながら
「確かになー」
 と呟いた。
最近会ったのは僕が出版社へ行く前の日だった。
「よく描いたな!ちゃんと描けたじゃないか!」
僕の漫画を読んでドラさんは嬉しそうに言った。安心感のある優しい声だった。
それから祝杯という事になり僕たちは「かちどきや」に行った。
「今日はオゴってやるからよ!」
「いいんスか?」
「いいんだ。そう決めてたんだ、俺」
あの日のドラさんはいつもとそう様子の変わったところはなくお互い気持ちよく酔っていた。

 オレンジジュースを飲んで少し休憩した後、僕らは練習を再開した。
「さあ!何を躊躇っておるのだ娘よ!お前の父親の血で汚れたこの剣でこの若者を刺すのだ!さあ、刺すのだあああああっっっ!」
 俺の役者ぶりもだんだん板に付いてきたな。それにしてもなんちゅー話だ。
「できない!できません、私には・・・」
「やるのだ!」
「できません」
「刺せ!殺すのだ!刺せ!」
「できない!」
「刺すのだ!」
「しつこいね!!!」
 突然、大家さんの声が割って入り僕と真奈美さんは固まった。ちょっと熱が入り過ぎて声が大きかったかもしれない。僕たちは大家さんのあまりの剣幕に何も言えずしばらく見つめ合ってしまった。
 するとややあってドスの利いた知らない男の声が聞こえてきた。
「本当にいないのか、岩田は?」
「あんたもしつこいね!岩田さんはいるけど今はいないよ」
「隠してるんじゃねーのか?ナメてると残り少ない寿命が無くなるぞババア!」
 男はどう考えてもヤクザだった。
 大家さんは女だししかも年寄りだった。本当ならここで男の僕が出て行かなきゃらならいのだが情けない事に金縛りにあったかのように固まってしまって声も出せなかった。
 だけどその心配はいらなかった。百戦錬磨の大家さんはまったく引く様子が無く肝が据わっていた。
「何回も同じ事言わせて老人から無駄な体力奪ってんじゃないよ。とにかくいないものはいないんだ。あんまりしつこいと女にモテないよ」
それでも男が部屋に上がろうとしたようでドタバタする音が聞こえてきた。すると大家さんは今まで聞いた事のない大声で怒鳴った。
「上がるんじゃないよ!私は住人さんからお金を頂いてここを預かってるんだ。あんたみたいな得体の知れないガキを上げる訳にはいかないんだよ!わかったらとっとと出て行きなっ!!!」
 男のドスとは比較にならない迫力だった。男は鬼龍院花子のような威圧感のある大家さんの声に完全に圧倒されてピクリとも動けない様子だった。
「出てけっ!!!」
 ともう一声浴びせられるや否や逃げるように玄関を出て行った。
「帰ったら伝えといてくださいっ」
 男が去ってかぶらぎ荘に静寂が訪れ、金縛りの解けた僕と真奈美さんが廊下に出ると大家さんは玄関の外を見ながら
「あんないい子が・・・馬鹿だねぇ」
 と呟いた。

青春アパートメント〈33〉

 流行の音楽が店内に流れている。だけどよく知らない。興味もない・・・。
 僕はまったく知らない町の居酒屋のカウンターに座り無愛想な女の店員にビールを注文した。以前から知らない居酒屋に一人でぶらりと入ってみたいと思っていたが結局、全国チェーンの居酒屋にしか入れなかった。開店したばかりの店内には僕と小上がりにいる学生風の女二人だけだった。僕は見るでもなくメニューを見ながらビールが来るのを待った。このチェーンは地元にいた時、友達とよく来ていたがメニューは若干違っていた。メニューを閉じて元に戻すと僕はカバンの中に虚しく佇んで反省しているできそこないの息子を、変な言い方だが「慰め」ていた。俺のせいで悪かったな。だけどなんて声をかけていいのかわからない、そんな空気が漂っていた。

「今まであれだけ時間があったのに、何をやっていたんですか?これなら前の方がずっとよかった。コレのどこが面白いの?きれいにまとまってるだけの漫画なんて誰も読みたくないんですよ。そんな誰が描いても同じようなものには誰もお金を出さないですよ。この作品には魅力が無い。小林さん、きれいにまとめる事ばかり考えている。プロじゃないんだからもっと挑戦しなきゃ駄目だ。小林さんは何を描きたいの?誰がコレにお金を出して読みたいと思います?あなたは読みますか?」
 ビールが全然来ない。客がこれだけしかいないのに何なんだ?いや、現に俺より後にきた客のテーブルにはビールがきている。僕はさっきの店員を呼ぶと敢えて横柄な感じで
「ビールまだなんスけど」
 と言った。
 店員は
「あ」
 と言ったきりごめんなさいも何も無く厨房へ消えた。しばらくしてお通しとビールを持って店員がやってきた。
「ご注文はお決まりですか?」
 ・・・愛想も何も無い。謝る様子なんてこれっぽちも見られなかった。まあいい。こんな店とっとと出ようと思いながらメニューを見ていると店員は今入ってきた客と親し気に話し出した。どうも知り合いらしい。「なっち」とか言ってるし。
「あの、注文いいスか?」
「あ、はい」
「じゃあ枝豆」
「・・・・」
「・・・・」
「・・・・以上で?」
「以上で」
 店員は「かしこまりましたー」とか言いながらちっともかしこまっていない憮然とした表情で立ち上がるとツカツカと厨房に消えていった。ビールを飲みながらなっちの方を見るとなんだか申し訳なさそうな顔をしていたので僕の気持ちも少しは収まった。僕はお通しの切り干し大根を箸で摘んだ。

 枝豆が出るまで三〇分待たされた。
僕は一言も口を聞かずに金だけ払って店を出た。あの店員は終始あの感じで悪びれた様子も無く
「ありがとうございました」
 と言った。何だか馬鹿にされたような気がした。右手にぶら下がっている息子に申し訳無かった。
「お前、ごめんくらい言えねーのかよ、ふざけやがって!馬鹿にすんなよコラ!」
 今からでも戻ってそう言ってやりたかった。だけど一瞬迷って、止めた。それじゃあんまりみじめだから・・・。
 僕はカバンの中の息子に「ごめんな」と詫びた。たった一杯のビールで酔ったはずがないのに涙が止まらなかった。僕は泣きながらかぶらぎ荘の灯りまで歩いた。

青春アパートメント〈32〉

 本降りになるギリギリのところで滑り込むようにして誰もが知っている出版社のロビーに入った。受付はすぐ目の前にあったが僕は一度端っこの方へ逃げてジャンパーのポケットから今日の目的地が書かれたハガキを取り出した。
「週刊××編集部・・・四階」
 このハガキは入賞した時に担当編集者の杉内さんから送られたものだった。太くて丸っこい文字で几帳面に書かれたハガキは好感が持て、まだ会った事はないけど僕の中で杉内さんはサザエさんに出てくるノリスケさんのイメージだった。
 杉内さんは僕に二回手紙をくれた。僕が投稿した漫画についての評価と期待が書かれたものと、あともう一枚はこのハガキだった。一回目の手紙をもらったまま何の返答もない僕の背中を情熱的に押してくれる内容だった。「上京の際は連絡下さい」という一文で僕は上京を決意した。まったく手が掛かる奴だ。 
 昨日、編集部に電話をかけた時はメチャメチャ緊張した。いくら杉内さんが情熱的な人でも何千といる漫画家志望者の一人である僕の事なんか覚えているはずがない。手紙だってきっと誰にでも送っていて特別な事じゃないんだろう。そう、意味もなくネガティブに考えていた。だけど受話器の向こうの杉内さんは僕を覚えてくれていた。イメージ通りの柔らかく力強い声で上京を喜んでくれた。僕はこんな人の事を勝手に疑ってしまっていた。僕は人を舐めていた。本心を貫き通せる人がいる事を僕は知った。

 意を決して行き先を告げると受付の女性が「小林様ですね?少々お待ち下さい」
 と言って内線を押した。小首を傾げてコールを待つ彼女はかわいらしかった。胸のプレートには「斉藤」と書かれていた。そう言えば斉藤由樹に少し似ている。
 しばらく後「はい。わかりました」と内線を切った斉藤さんは
「お待たせしました、小林様。こちらのエレベーターで四階までお上がりください。降りまして右手に編集部のプレートが出ておりますので中に入ってお待ちください」
 と作り笑顔で言ったが
 僕が「ありがとうございます」礼を言うと今度は本心からニッコリ笑って
「頑張ってください」
 と言った。
 エレベーターの中、僕は拳を握りしめ
「よっし!いい感じ」
 と呟いた。
 四階に着くと斉藤さんの言った通り右手に編集部名が書かれたプレートがあった。ノックをしてドアを開けるとパーテーションで仕切られた応接スペースが四カ所あってどこも開いていた。その向こうにはまたドアがあり、その更に奥に編集部があるらしくなにやら騒がしかった。
 例え、例えこれが駄目でもいい。次ぎに繋げる一歩だってそう思えばいい。これを描いた事は無駄じゃないんだ。少しずつ進めばいい・・・。
 そう言い聞かせながら僕はカバンを軽く叩いた。
 時計を見ると五分経っていた。
 やがてドアが開き思っていたよりも若い大柄な男が笑顔を作ってやってきた。
「小林さんはじめまして!杉内です。よく来ましたね。待ってました。それでは拝見させていただきます」
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