コムデギャルソン、川久保玲さんの貴重なインタビュー。
2009年12月7日の繊研新聞一面より抜粋。
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「服をつくる環境はどんどん悪くなっている。
服がお金の顔をしてきている。作る側、売る側、消費者、
ジャーナリズムすべてに責任がある。
みんながプライドを捨ててしまった。自由につくり、自由に売り、
自由に着る。そんな風潮を取り戻したい」
--97年夏のパリでコムデギャルソンの川久保玲は、そう語った。
あれから12年。服を巡る自由はますます狭められ、
資本の論理でがんじがらめにされてしまった。
効率と売り上げに支配され、
自由な物作りをしようとする人たちにとっては
今は冬の時代といえる。
しかし、川久保玲の思いはまったく変わっていないように見える。
トレンドに迎合することなく、効率に流されることなく、
常に新しい何かに向かってまっすぐ進んでいる。
クリエーションを高いクオリティーで保ち、
ビジネスでも結果を出し続ける。(聞き手=小笠原拓郎)
売れることに流れてしまう
--閉塞(へいそく)感を感じていますか。
閉塞感を感じるのは今だけじゃないですよね。
リーマンショックがなくても、
その前からずっとそんな感はありましたよね。
作ることに対しての価値が重きを置かれていないというか。
ビジネス優先ということが閉塞感を与えているんじゃないですか。
すぐにお金に変えられなければそれは止めて、
すぐに売れることの方へ流れてしまう。
そんな状況がもう何年も続いています。
ジャーナリストやメディアがそういう状況を後押ししていませんか。
いつもページは「何が売れますか」とか「何が流行ですか」とか、
その二つくらいのテーマばっかりですね。
それが閉塞感の原因だと思います。
広い視野でファッションなりファッションビジネスで
仕事をしている人は少ないですよね。
新しいことに対してとか、見たことのないものを
作るとかいう状況に対してドキドキする場面というか、
欲しいと思う人が少ない。
諦めているのかしら。
ドキドキしたりすることが見つかったら、
それが話題になるようなメディアではないですよね。
「どこで何が売れた」とか「セレブが買っている」とかほとんど一緒です。
例えば、今、記事になるのはファストファッション。
どこがどういう店を出したとか、そちらの話題の方が大きい。
みんな同じ服になっちゃいますよね、
もしファストファッションがすべてだったら。
同じユニフォームみたいになって。それでいいかしら。
会社全体をデザインする
--改めて今、コムデギャルソンは何を目指しているか。
一つの洋服が何かものを言う時代ではないですね。
襟がどうしたとかシルエットがどうしたとか、
そういうことだけでは新しいことを表現できない時代になっている。
コムデギャルソンとしては服だけではなくて、
会社の進み方自体が新しくなくてはいけない。
だから、いろいろトライしている。
デザイナーが一つの服一点作ってってことじゃなくて、
会社全体がデザインされるっていうことです。
運営の仕方、売り方、ビジネスの方法論など、
今までなかったことを実行しなければ、
かっこいい新しい会社にはなれない。
クリエーションしていないと思うんです。
部屋に閉じこもってボディーを前に、
どんなデザインをしようかしらとか、
クロッキーを書いてそれがデザインの仕事だと思っている人とか、
それじゃダメですよね。
作る側としては、そのあたりから変わってなきゃいけないと思うんです。
経営者に夢がないですよね。結果として、
売れたりはやったりすることはあるけれど、
それを目的に始めるのも違うと思います。
早くお金を手に入れるのがかっこよくて、
安いものを着るのもかっこいい。
そればっかりになっちゃうともうおしまいですよね。
昔々、チープシックっていうのがあったけれど、
いろいろトライしていろいろ経験して、
その中の一つとしてそういう表現方法もあるというところで
成立していました。かっこよかったですよね。
でも今は誰でもただ安いものを買うのがいいっていうような
価値観がありますよね。どっかの会社の責任ですよ。
これでもかこれでもかって安くしているけれど、
安いのはただ効率で安くしているだけなのか。
いずれにせよ、ある常識外で安いものは、
それなりだから安いんですよ。
いいものはやっぱり時間とか苦労とかいろんなものが
かかっているわけですから、安くはできないんです。
単純な理論ですけれど。
安いことだけがいいって価値観も恐ろしい世の中です。
安く安くっていうので、大きな閉塞感に向かいつつある。
いいものは高いんですよ、簡単に言えば。
安いものが悪いとまでは言わないけれども、
それはまた一つの目的で成立するので、
どっちかがいいとは言えないわけ。
両方あってもいいですけれど、時間をかけて考えて作ったものが
どうしても高くなる。高いけれどいい価値がある。
その価値観がなくなったら、人間、前向きじゃなくなりますよね。
進歩がないですよ。
それで、最後は閉塞感に陥っちゃう。
高いものはいいんだってことをメディアは伝えてほしいんです。
いくら効率でカバーしているからっていって、
あれだけの安い値段でものができるっていうことが、
私には理解できないんです。
我々も、利益を乗せて高くなっちゃってるわけじゃないんです。
時間をかけて考えて作った結果ですから、
決してもうけているわけじゃないんですけれど。
少しずつみんなで多少の利益を分配してっていうのが一番いいと思います。
--ファストファッションやラグジュアリーブランドが
世界中の街に出店して、どの街も同じ状況になっています。
グローバリズムに対して、ローカルのいいお店がどんどんなくなっている。
手っ取り早く売り上げを上げる方法論というか
価値観がそういう状況を作っているわけですから。
すぐ反応がなくても「これは好きだからやるんだ」
って考える人が少ないからどうしようもないですよね。
逆にそういう価値観の方が、売り上げを上げる価値観よりも
本当は重要なんだという空気作りをメディアにはやってもらいたいと思う。
Jリーグの試合中、チームメイトの鈴木秀人選手が
審判に対して「アンポンタンがっ!」と暴言を吐き、
審判がカードを出そうとした時のとっさの機転の一言。
思わず審判も笑ってしまい、カードは出さなかったという。
セリフは「いかれポンチ」という異説あり

