前回の続き
かっこよくて新しい売り方
--ファッションはアートではなく商業活動。
だから売れなければならない。
そこはバランスです。
そこは、精いっぱいビジネスをしています。
イメージだけで仕事はしていないですよ。
たとえばイメージを強く優先する仕事と、
もう少し売ることを優先する仕事とか、いくつもいくつも用意して、
そのバランスを上手に取りながらですね。
かといって、コムデギャルソンとしてはいつも新しいことを
実行したいですから、売るためだけというのは、なしです。
売るんだけれども、そこに新しい売り方があって、
会社としてクリエーションをしていると言える方法論でなきゃダメです。
売り方もかっこよくないとダメです。
それは人の気持ちを刺激するためです。
安いのがいいって言っても、みなさん刺激されたいし、
刺激を求めている。人間ですから。
それはどのようにしてやっているのかといわれても、
一つひとつ、その場その場で勘と経験で判断しています。
それができるのも、私一人が上に立って動かしているので。
だからバランスが全部見える。国内だけではないです。
世界中でバランスを見ています。
そうしないとやっていけない。
たまたまニューヨークにもパリにもロンドンにも店がありますので、
そこからいろんな話が入ってくる。
それがなかったらば、きっと目をつぶって仕事を
しているみたいになっているかもしれません。
情報といっても「売り上げがどう」とか
「スタッフがどんなことした」とかですけど。
どこのデパートの折衝がどうこうとか、
そういういろんな話がきてイエスかどうかを決めます。
例えばドーバーの店でいえば、この商品を置いて大丈夫かとか、
そういうことも全部見えてきますから。
そういうことが、材料なり、なにか空気を取り上げる
きっかけになるんです。
一個一個はクリエーションに関係ないことです。
そういう基地じゃないですけど、情報の場所があるとないとでは、
これから仕事の幅っていうか大きさが全然違うでしょう。
ダイレクトに伝えるのはやぼ
--SIX(コムデギャルソンのアートスペース)では
アートを刺激しつつ、商業活動する。それは全く別であっても、
結果的にコムデギャルソンの価値観を広げている。
方法論ですよね。例えばSIXには興味あるけれど、
コムデギャルソンを知らない人、着たことのない人も多いと思う。
存在の遠かった人が改めてコムデギャルソンを見る機会がある。
なおかつアートの世界寄りのコムデギャルソンを見てもらうというのは、
一つの方法論です。
アートっぽい服を作ることだけがアートじゃないってことですかね。
一つの関係なりプレゼンの仕方が売るだけじゃないことを考えるので、
ややアート寄りに見える時もありますが、
最終目的はビジネスです。その辺もバランスです。
ダイレクトにやりたいことや気持ちを伝えるのはやぼなんです。
もう少し人に考える時間や感覚を差し上げて、
コムデギャルソンの服に戻ってきていただく、
よく分かっていただくっていうっていう遠回りなやり方もします。
そうするほうが、作るほうもひねり方を考えますから、
そこでおのずとクリエーションのパワーが出ることもあります。
ストレートならそこで終わりなので。
コレクションテーマもそうですけど、
自分をやや難しい立場に追い込むことで何か発想が出るっていうのは、
私の仕事の一つのテクニックかもしれない。
ただストレートだと自分が物足りなくなりますから。
--H&Mやルイ・ヴィトンとコラボレーション(協業)
しましたが、それって今まで戦ってきた相手だと思うんですが。
あれも戦っているんです。戦ったんですよ。
例えば、H&Mが作る広告では媒体に載せず、
全部こちらで原稿を作って渡したし、
全部こちらでやりたいことを渡しました。
それは戦っていると思います。
うちのイメージに全部作りあげて、
コムデギャルソンになりました。
H&Mではなかった。H&Mにうちは負けました?
自分ではかっこいいと思ったけど。
あまりにも(H&Mと)違うことだから。
しかもイベントだったし、別にこれから提携するわけでもないし。
2週間のことですよ。
でもね、それもビジネスの一つの方法論です。
コレクションをやめて、全部そういう売ることだけの
ビジネスにしているわけじゃない。
コレクションは続けているわけです。
一方では、そのチャンスも使いました。
だけど全面的な向こうのやり方ではなくて、
全くうちのやり方で広告からテレビから作りました。
プラスすればうちのほうが勝ちますよ、イメージ的に。
違いますか?
意外とか残念とか言う人はいますけど、それで、
コレクションだけやってどうやって食べていきますか。
教えて欲しい。
コレクションだけでは今はやっていけない。
コレクションだけなら、コレクションをもっとみんなが
受け入れやすいデザインにしないといけない。
そうじゃないと売れない。
そのへんはメリハリつけて目的別に私は仕事をしているつもりです。
最終的にはコムデギャルソンの会社が
クリエーティブであるということが残ればいいと思うんです。
いろんな状況に対応できる経営
--今の700人という会社の規模は適正ですか。
もっと小さい規模でクリエーションを
ビジネスにし続けるという選択肢もあったのでは。
たとえば今のコレクションなり、
新しいことやりたいっていう希望なりいろんなことをカバーするには、
コレクションの商品だけではやっていけないです。
それに自然増加ということもある。
利益を上げよう、売り上げを作ろうとは思っていないです。
一つのことだけに頼ってはビジネスできない。
いろんな状況にあわせて対応できる組織なり、引き出しがないと。
それが経営だと思う。
コレクションというのは、私の経験を積んだ上での
評価なりファンなりが付いてる。
それって10代の人には遠いですよ。
でも10代に向けてのビジネスも必要です。
年齢が高い人だけ向いてはビジネスしていけない。
減っていきますから、一方で増やさないといけない。
そういうバランスの結果です。
いろいろなテクニックを使わないと経営していけないですよ。
だから、作ることばっかり夢みたいに話してるんではなく、
会社の中はビジネスの話ばっかり。
すべてバランスです。
どこで止めるか、どこまで遊んでいいか。
クリエーティブな行動で一つに
--700人はクリエーションの足かせではないと。
ある意味では足かせになりますね。
自然増についての責任もあります。
それをいい形でキープしないといけないし。
700人だけじゃない。
関係の工場さんとかも入れるともっとですけど。
それをいかにクリエーティブな行動で一つに
進められるかっていうのがまたクリエーティブな仕事です。
そういう難しい道を進むことがまた返ってきて、
クリエーティブな発想なりいろんなことに戻るんです。
難しい道があるからこそ、ハングリーになるし、挑戦もするし、
がんばらないといけないというエネルギーにもなるわけです。
みなさんのおっしゃる理想のコムデギャルソンだけだったら、
もっとひ弱ですよね。
--コムデギャルソンは、目指すものをやり続けることで
答えを出していると。
答えまでいかない。だって認めてもらってないし。
売り場では。
流通では坪いくら売れるという方が勝ちですよ。
完全にそうです。
おこがましいけど、「コムデギャルソンがここにあることで
周りに少し元気を与えるという目に見えない価値観で
計算してもらえませんか」とまで言うこともありましたから。
それでも数字にならなければ全く考えてもらえない。
もがくだけでもいいかなって
--結局は売り上げと効率でいいお店がなくなる。どうしたら。
ジャーナリズムがもっと助けること。
でもジャーナリズムもしがらみがある。
スポンサーもいるし。身動きできない。縛られている。
だから、私もちょっと分からない。
私も方法が分からない。私の力ではできない。
できないけれども、もがくだけでもいいかなって思って
やっているという感じですね。
たまに、デパートの人にもあまりひどいことされると言いますけどね。
「坪効率だけで判断するようなことばかりで、
なんでそれくらいの余裕はないんですか」って。
「若い人に場所を与えるくらいの余裕ないんですか」
って聞きますけれど、全く、そんな話が通らない。
うちでさえバランスをとりながらやっているので、
もう少し大企業がバランスをとりながら、
新しいことにも投資しながらもうければいいと思うんだけど、
もうけることばっかりになってしまっている感じがします。
それだけ弱いのかしら、ファッションビジネス。
--いいお店が育ててきた顧客のセンスも失われる。
どうしたらセンスのいい人たちが増えると。
一番身近な方法としてはメディア。
その前にもちろん教育だとか。
文化に対する造詣や自信が深くなっていかないと、
いい物に対する目とか価値観とかが育たない。
でも、イベントなり新しいお店を作れば、
多少なりとも集まってくださる方がいるので、
最後まで希望は持っています。
いろんな材料で表現しないと
--ファッションビジネスで頑張って作ろうとしている人たちに
必要な視点は。
昔みたいに一つの服をクチュール的に作りこんでいれば
いいいという時代じゃないので、
もう少し視野を大きく、方法論を大きくです。
作るものが個人的な小さいものでも
クリエーションといわれた時代ではないので、
今はもっと大きい物を作らなければダメだと思います。
そういうことができる学校なり場所が必要ですね。
もし学校でそういうことができないのであれば、
システムの問題です。
でも今、デザイナー兼経営の両方ができている人は、
そういうことができる人じゃないですか。
本当に大きいクリエーションをやりたければ、
表現の材料は服そのものではないです。
もうちょっといろんな材料で表現しないと。
それがこれからの人には大事かな。
そういう頭の構造、回路を持っている人はなかなかいないけれど。
体で動いているから、理論的に説明にしにくい。
いずれにせよ、そんなに難しく考えてやっているわけではないのです。
結果です。
先見の明があるわけでもないしデータ探しをしているわけでもないです。
やり続けること。
難しいこともやらなければいけない。
好きなことをやってるだけでは、力にならない。
苦労するからやめたいことはいっぱいあるけれど、
やめたらできなくなることは分かっています。