今回は、「私立中高一貫校→単位制高校」と学校を変えた親族の子が「すごく好調。卒業も大学進学も見えてきたと感じる」と嬉しい報告をしてくれたので、記事にしてみようと思います。

 

この子は都会の方に住んでいる親族の子です。夏休みに田舎にホームステイのような感じで、親族のおじさん宅に2週間遊びに来ていました。小学校時代は4年生から5年生の終わりまで不登校、6年生では少しずつ登校するようになり、中学受験をして中高一貫の私立へ入学しました。

 

それほど勉強は得意ではなかったため、学校のレベルは余裕を持って入学できる範囲内の中堅校でした。中学受験のため、塾へ行き頑張って勉強していました。ですが中学に入ってから、「勉強がついていけない。英語のネイティブの授業が最初からさっぱりわからない」という、つまづきから、小学校とは異なり理科も社会も、副教科の学習を含めて「たくさんすぎる学習量」に圧倒されて、気持ちに・体にエネルギーがなくなってしまいました。

 

それでも、熱心にサポートをしてくださる先生やカウンセラーさんの助けもあり、休んだり補習を受けたり、試験を別室で受けられるようにしてもらえたり、学年が上がれるように手助けしてもらい、なんとか中学3年生までを過ごしました。高校の内部進学にあたり、「中学でもやっとの状態だったのに、これ以上、学習する科目が増えて忙しくなれば、自分はきっとやっていけいない」と感じ、高校にあがることをあきらめようか、と悩みました。

 

学校の先生、両親、本人が何度も話し合いをして、「とりあえず高校に上がってみて、だめそうならいくつか交流のある単位制の学校があるから、そちらを紹介してもいいよ」という学校側の提案もあり、高校に上がってみることにしました。

 

高校でもう一度、やってみようと思った理由としては、外部から入ってくる生徒たちとなら、勉強のレベルにもそれほど差が開いているわけではない、内部生の学習進度や学習量は多いし、英語はネイティブから3年、みっちりとスピーチやディベートを鍛えられているけれど、公立から入ってくる生徒さん達はそこまでじゃない、と先生が言っていたこともあり、普通科コースでゆっくりのペースで学習すればいいのでは、ということになったからです。

 

実際に高校に上がってから、中学からの内部生のいる特別進学コースとは異なり、高校で外部から入学してきた生徒たちの一般コースはスタートの学習レベルが易しく、内部生の中学2年生程度の内容で対応できるような感じがしたそうです。ですがそれは最初の時期だけのことで、半年もたてば「スピードが上がり、学習レベルも各段に上がってきた」と感じ、2年生に上がる直前には「息切れしてきた」とのことでした。

 

このまま、残り2年を過ごすとしたら、自分は大学までたどり着くことなく燃え尽きてしまう、と感じたこの子は「今からで申し訳ないけれど、単位制の学校へ転校したい」と先生と両親に相談したそうです。

 

高校は中学とは異なり、学習の成果もそうですが、本人の気力が必須となってきます。「動ける・活動する」ことで、進級が可能になります。だんだんと成績が低下していき、学校へ通うエネルギーが尽き果てようとしているこの子が無理に2年生にあがったとしても、3年生目前で留年などになる可能性もありました。よって、先生やご両親も「これまでよく頑張った。あとは、自分が希望する大学への進学が可能なように、体力や気力を保持しながら勉強できる環境でやっていけばいい」という結論に至りました。

 

この後、いくつかの単位制の学校へ説明を聞きに行き、学校内を案内してもらい、「自分と似ているような生徒さんがいる」と感じた学校で、かつ駅に近く通いやすい高校を選びました。単位制の高校では、今までいた私立中高校とは全くシステムも体制も異なりました。勉強の大変さは単位数で自分で学校と相談しながらコントロールできることと、在籍していた私立中高校よりも易しい内容であること、体調に合わせたスケジューリングもできたりするので過ごしやすく、また無理な生徒同士の付き合いもそれほどする必要はなく、気の合う子がいれば話す程度ですむので、ストレスがぐっと軽減して気力がみなぎってきた、と自分でも感じたそうです。

 

転校してからは「自分のペース、体調と合う」ということで順調に過ごしたことで、卒業とともに大学への進学も十分に視野に入ってきたそうです。今は時間があると、自習室や先生の職員スペースで受験問題を解いたり質問したりして過ごしているとのことです。

 

ちなみにこの子は自閉症スペクトラムと診断されています。特性的には「自分では最大限に注意力を払い、最大限に神経を使ってやってみた場合でも丁寧になりきらない、いつもどこかにモレがあり、そして本人がそれに気が付かない、よって大勢の人がこの子を見ての印象はやや同級生の中では劣っているように一見見える、ポカやミスがあるのが定番の子、そしてその凹み部分で努力をするとものすごく時間がかかり、かなり努力をしていたとしても、大人が客観的に見てOKを出せる結果よりは劣る(標準以下の出来となる)、けれど得意も持っていて、その一点では自然と努力をしなくても優れている、例えば数学だけは、塾で習わず・参考書を解いたりせずとも・学習しなくても、ちょこちょこ気が向いた時に模試を受けたり与えられた問題を解くだけで、難問までどんどん解けるようになる、という「おおざっぱさと、自然に授かっている能力、という極端なちぐはぐさ」が内在している子です。

 

学校という社会生活の面では上手くいかず、理由としては自己管理やマネージメントの部分の凹みがネックとなったようで「自分自身を使いこなせない」部分、処理能力が低い部分などが原因だろうと見て取れると思いますが、中学・高校生活で「疾走」している中ではなかなか、その部分にゆっくりと取り組む暇もなく「今!今すぐ解決しなければいけない問題」として立ちはだかるので、「今の環境では対策しながら状況を好転させることは無理だ」と感じた本人と大人たちの判断を総合的合わせて、新しい環境で「自分がやっていけそうな環境で考え・行動できる場所で」やっていく方向に舵を切りました。

 

この親族の親子は、今とても笑顔が出て楽しそうです。「失敗(禍ではなく)転じて福となす」と言っています。

 

・失敗しても良かったと思う。なぜなら、子どもが辞めることになった中高一貫校の先生方へ絶大な信頼をよせて、大人の誠実さと思いやりを学んだ。

・信頼できる大人がこの世には存在することを知った。

・困ったときに年長者・専門家に真面目に相談してみたら、思うよりも真摯に対応してもらえて、「話す・相談することの大事さ」を感じた。

・そして「自分が動くことで人生が開けていく」という感覚を初めて実感し、新しい価値観が育った、

 

と言っていました。学校を放り出されるのではなく、最後の最後まで一生懸命にフォローをしてくれて、転校先の先生に事情を説明し、転校した後の勉強でも困らないように、と学習のフォローもできる限り、個別対応までして応援してくれたようです。親族の子は時々、辞めた学校の担任に報告のLINEをしているそうです。

 

親族の子が学んだ中で、最後の部分「自分が動くことで人生が開けていく」という点、これが自閉のある子がなかなか、学びにくい部分です。私もそうですが、自分で気を付けておかないと、頭の中ではものすごく「考え」「悩み」「傷つき」「自己完結する」精神世界だけで忙しい・思考の多動があり、社会や大勢のいる世界からは閉じた傾向が自然でぐるぐる、迷走する傾向が生まれつきあります。ですのでこの子のように、経験から学ぶ可能性がある、新しい価値観を得るという行幸に遭遇した、という部分で、失敗転じて、本当に最大の功績だっただろうと思います。

 

真面目で頑張ろうとする前向きな気持ちがあるので「やっていけるだろう」と親子で判断した私立中高一貫への進学でした。受験レベルとしては「中堅で自分が余裕のある範囲の学校」と考えて、実際入学したものの・・・小学校と中学校では担任制がいろいろな教師が科目ごとに教えるシステムに変わったり、そもそも学習量も各段に違い、自己管理能力がより問われる面もあり、失敗という結果に終わりましたが・・・失敗してもまた、違う形で対応していけばよいのが、人生です。

 

「真面目に頑張るだけではだめなこともある」「環境を変えるという手段を取っただけで、『そこが合えば』物事は順調に進むこともある」という一つのケースとしてご紹介しました。

 

 


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