少し間が空きましたが、引き続き「記事リクエスト・質問・その他:その5」(記事はこちら)への回答を書いていきます。

 

今回のfuママさんのご質問内容の抜粋です。

 

お子さんの詳細:

 

・小学2年の男子、自閉症スペクトラム
・今現在の性質:こだわりや思い込みが激しいが、「幼少期に比べ自分でかなりコントロール(我慢して?)」頑張っている
・普通級に在籍
・学力は並(計算・漢字好き)

・友達と遊ぶことが好き、かつ、よりゲームや家が好き

・癇癪は減ったが自宅ではまだある

 

親が子に対して心配な点その1: <行動面>


・去年の秋からの変化で鉛筆噛み、全体がボロボロになるまで噛む

・トイレに頻繁に行く(酷い時は1分前に行ったのにまた行くというほど。授業中は行かない)

・家庭での頻尿:寝る前に何度も行く、買い物中に本当に我慢ができない!と何度も行く

・ズボンを何度も上げ直す(ぴったりしたズボンでゴムはきつくしているのですが、それでもソワソワするのか、不明)
 

上記の子供の行動に対する親の希望:

 

・すべて「落ち着かないから」の行動なような気がする。生活に支障がでるレベルとは見ないが、多少不自由することがある。そのためやめさせたい。が、何度言ってもやめない。
・本人は無意識なのか、気分がソワソワしてるのか、なにか不安なのか不明。
・親側の事情:そばで見ているとイライラしてする。が、やめなさいと言っていいのか、言ったところでやめないのは承知している。
・特に鉛筆噛みをやめさせたいが、学校内での行動のため、他のもの代替え(家庭ではハンドスピナー)を持たせるわけにもいかず困っている。
上記に対して、なにかいい改善策はあるでしょうか。

 

親の心配な点その2:<学習態度>

 

・通知表は二重丸もたくさんある

・学力はそこそこ(文章題などの部分的な苦手はあり)

・授業を全く聞いていない
・授業を受ける意味を見出せない(すでに分かる内容だからかは不明)
・「授業を聞け」と言っても聞くわけもなく、「問題をノートに解く」などはやる
・他の子にちょっかいを出したりなどはないが、鉛筆を噛んだりで空想の世界へ入る

 

私から見て「暇な時間を潰してる」ようにしか見えず、この先もこれでいいのかと親として心配になります。

上記の子の学習態度に対して特に親側で希望すること:

 

・授業を聞くということを今のうちに身につけさせたい。「席を1番前に、聞いていないようなら声をかけてもらう」ように先生に配慮をお願いするべきなのか(先生はこの支援法をOKしている)

・一方で悩むのは、「この子に無理やり授業に参加させるようなことが必要なのか」ということ。授業に苦痛を感じて勉強自体を嫌いになってしまったら、と懸念している。
・今のところ学力のみなら自主勉強でまかなえているため、それで分からなくなれば子にあった塾へ行くというのも可と考えている

まとめ・ご質問の内容:
 

「私自身はなんの疑問もなくふつうに授業を受けていたので、どうしたらいいのか分かりません。スカイさんやご親族の当事者の方にぜひお聞きしたいのですが、学校の授業は必要と感じていましたか?それとも学校外の勉強で十分でしたか?この先、中高大学と、それでもやって行くのでしょうか。勉強自体は嫌いでも苦手でもなさそうなのに「学校の授業を聞けない」となると、この先の進路はどうすべきでしょうか…。
まだ小2なので進路選択は先のことですが、なんとかいろんな可能性を広げてあげたいというのが親の気持ちです。」

 

という内容でした。

 

以下は、私からの回答となります。個人的な「イチ発達凸凹を持つ子であり、かつ親でもあり、支援者でも被支援者でもあった立場」で書いていこうと思います。立場の違いや見解の違い、非定型側の思考回路があることから、fuママさんの立場、見解、定型社会の常識の範囲を逸脱するような好ましくない表現も出てくると思います。その点をご容赦いただけると幸いです。先に謝罪しておきます。

 

各ご質問への「解決策」を求めておられるのですが、私から見てご質問内容の「根本」について先に書く必要がある、と感じましたので、先にそちらを説明させていただきます。

 

コメントでのご質問の根底にある部分のことです。簡単にご説明すると、

 

・お子さんの「自閉症スペクトラム」の障害は「見えない障害」なので、親側で非常に理解しにくい。その点が大きな課題となって親子の間に少し齟齬がでてきている。

 

・今までの支援、環境、本人の努力などがおそらくあって、集団社会内での特性が、比較的全開に「なっていない」ため、余力が大きくあるように第三者(親を含めて)見える部分=凸部分がある。一方で、第三者からわかりやすい特性=凹み部分が暇な時間や家庭でだだもれになっているため、凸部分と凹み部分の差が大きく、凹み部分の補いができるように親側から思える状態になっている。(例:こだわりや思い込みが強い特性のわりに、学校生活が穏便、学習もそこそこということは好き・嫌いに左右されない自制がある程度ある。)

 

・子供が小学2年生となり、小学校での見通しがおおよそつかめた時期となり、かつ障害特性の凸部分が上手く機能して集団社会での適応・学習の履修などで安定していることから、「凹み部分を補う方法」というステップを取りたいと親の心理的なステップアップの時期に入っている。

 

・子ども側での「精神的負荷の状態、心理的余裕のキャパシティーの分量、余裕があるのかないのか」の表現が親側がわかりにくい程度には、はちゃめちゃなため、親側で判断しかねている。

 

という点があるかな、と思います。よって、私など発達凸凹がある人間がお子さんの状態を拝見したときに感じる感想と、定型集団の社会の常識的な言動の中で生活されてきたfuママさんの感想の間に、違いが生じます。どう違うかというと

 

・お子さんは障害特性がありながら、普通級の学校生活に適応するように自主的に対応し、2年生という早い時期で精神的な安定やバランスを自分で取れる程度には頑張れている

 

・学校での「緊張」と学校外(家庭やお出かけ先)での「リラックス」を無意識に使い分けられているため、サバイバルが可能となっている

 

・無意識の学校での「適応」が楽々とできているわけではなく、見えないけれど「適応するのが難しい・我慢している・耐えている」部分もいくつかあり、その分のストレスや軽い一時的・衝動的な二次障害の部分が「無意識の神経性過敏(ズボンをひっぱり上げなおす)」や「頻尿」や「鉛筆噛み」という具体的な身体症状に出ている。

 

・特性が少し強く出ている部分(全開ではない)が子供の正直な素の部分、本来持っている自閉症スペクトラムの「障害特性」の中身であり、その特徴に由来する「神経性過敏(気にしすぎな強迫性の部分)」が工夫や心身の成長と共にマイルドになることはあれど、障害として消えるわけではない。よってこの部分が今最も大事に、また今後も長く付き合えるように丁寧に見ていく大事な部分である。対策としては、「不安の根本的な原因はどこか」を探ることがこの特性をマイルドにする。

 

・障害特性の部分を本人が集団社会で隠し通している部分と、隠し通せない部分(2年生という未熟な年齢であり、心身の発達が未完成であるため)が生じているのが現状であり、心身の神経や体の成熟度、集団社会でのサバイバル経験(2年生ということでまだ1年と少しの経験)がごくわずかしかない状態では、性急に「今以上」の努力や解決を子側に求められる身体的・精神的な余地は、あまりない時期のように思える。

 

・障害特性の「暇を持て余す」「リラックスしている場では特性が強くなる(油断する)」という素の部分と、軽い二次障害「神経性過敏になっている」部分を分けて考える必要があり、その「暇なタイミングやリラックスしているタイミングと、二次障害の症状が重なっている」ことから、より熟考した後に、親や支援者が取るべき方法・方向性を考えたほうが良い。

 

・教室で授業中に鉛筆噛みに集中できるほど「暇を持て余している」のか、「他を見る視点・余裕がない」のか、その部分をよりじっくり未定必要がある。先生や同級生がいる空間で空想にふける自閉部分との関係性を考えると対策が見えてくる。

 

以上が、限られた情報の中で、「自分たち、非定型の子としての立場」と「支援者の親側の経験」から感じた内容です。

 

お子さんの「見えにくい障害特性、わかりやすい心身の症状」が同時に混在するため、定型のお子さんの普通の状態であろう姿を参考にして自閉症スペクトラムの子の姿を見てしまうと、そこで見誤る点が出てきます。すでに身体症状は「特性」としての部分よりは、より軽いですが二次障害の片りんを見せていますので、「余力がありそうに見えるし、実際できているし、今後もできそう・暇があるから不適切な行動をしてそう」と見た目で判断すると、よくある「中学生に上がるぐらいで突然限界がくる」という、何でもないような様子で頑張っていた子が、突然失速する、というような路線を行く可能性があるケースでもあります。ただし、お子さんがそうかどうかは情報が少ないため判断できません。

 

お子さんの場合、社会適正のスキルは比較的高いと思います。よって、

 

・学習量が今の2年生程度で中学まで変わらない場合

・今の少し余力があり「軽い」二次障害程度で経験値が増えていく場合

・7、8歳の心身の発育から10歳程度の心身まで成長した場合

 

は、支援者が何をしなくても無難に上手くやり、かつ「軽い二次障害」は解消し消えて行き、定型社会に見事なじんでいくと思います。ですが、現実的には

 

・学習量や対人関係面は今後、急速に情報量も活動量も増えていく

・周囲の子供たちがより予測不可能なギャングエイジとなり、かつ肉体的・精神的に大人びていく

・定型の子達の社会適応スキルが格段に上がっていく(見てわからない程度の手抜き、上手くアピールできる頑張りなど、仲間とつるむ、合わない子と疎遠にするスキルなど、器用さが上がっていく)

 

などしていくため、どうしても精神的な幼さが残っていく(精神的な部分の遅滞が自閉症スペクトラムには多く見られる)子どもは違和感や差を感じて焦りや上手くいかない、という失敗経験も増えて行きます。より混沌とした、複雑な事象を「今まで通りに」頑張って処理していこうとお子さんは「これまでの経験から」頑張りますので、おそらく今は「少し神経質」「ちょっと不適切な動作が強くみられる部分がある」という程度が、より強く頻繁に、また違う症状として出たり、結果的に二次障害が強く出る、という可能性がない、とはなかなか言えません。

 

結局、私達の親族の子達や私達が苦労してきたのは「定型の子達と違う成長過程を歩む」という宿命があり、「定型の子達と違う部分で悩みや困難を抱えている」という障害を持ち合わせていることが理由です。

 

よって、今、お子さんが見せているのは「こういう生活を送ると、こういう風に特性の凹み部分や身体症状が出るのだ」という具体的な結果である、と受け取ります。ズボンを引っ張り上げるという行為は、親族の子達の場合、幼稚園年長の、ちょうど「小学校に上がる準備」のために先生方や手を放す時期、自分で考えて動かないといけないという「変化」を感じた時期によく出る行為でもあります。

 

同じかどうかはわかりません。単に、「きっちり着たい」というシンプルな本人の嗜好かもしれません。が、その他の症状と合わせて考えると、「嗜好かどうか」疑ってかかる必要性も若干感じます。注目すべき点は、頻尿が学校では出ず、学校外でかなり極端に出ている、本人がそれを「止められない(不安が強い)」、という点です。

 

これを軽く取るか、「本人が自分の意志で止められない頻尿、不安」という点をより丁寧に、深くつっこんで考えていくべきか、というポイントが今後の方針の大事な要素となります。

 

学校で無難にやり、癇癪も家庭で少しだけ、の状態までもっていったスキルの高いお子さん、学校で立ち歩かず、暇な時間に不適切な「鉛筆を噛む」という行動はとるものの、学習はある程度すべきとして放り投げはしていないお子さん、全く授業を聞いていないけれど、授業や学校自体を放棄しない真面目さはキープしているお子さん、それだけの理性があり、していいこと・わるいことの境界線がある程度理解できているお子さんが見せる「極端さ」は、単なる頻尿でしょうか。

 

少ない情報の中でかすかに「見逃してはならない」と感じる点があるとしたら、この部分です。

 

この部分を丁寧に拾い上げて、今の、今後のサポートを考えて行きます。具体的には

 

「彼には、毎日の学校生活の中で消化できていないことがある。それが何か、を本人が理解・把握できていないので、彼のスキルでは解決できていない。また、問題点や困難も本人は把握できていないため、対処不可能であるかもしれない。その消化できていない部分が不安やストレスとなって、学校外で頻尿や、他の不適切行動に出ている」

 

という仮定のもと、まず動くと思います。

 

おちついて学習しているように見えるかもしれませんが、学校という組織との付き合い方、授業中の自分の立ち位置、何が求められているのか、どうステレオタイプ的に対処すればいいのか、がお子さんの中で落とし込めていない可能性があります。よって自分流に「鉛筆を噛む」という行為で時間をつぶしている可能性もあります。

 

学習が得意で暇で時間を持て余す子、というのは自覚があります。簡単すぎてめんどくさい、学校がたいくつ、テストなんて100点は当たり前、オール5で当然、という風にです。その中間にいる、平均的に、またはやや学業ができる方であるが、授業への興味関心が薄い、不適切言動に出る子の場合は、学習ができる理由で授業を聞かないのではなく、学業以外の理由で上の空のことがあるのかな、と考えてみます。立ち位置がわからないとか、学校での生活に「現実味がない、自分が何をしているのかわからない」というような、障害特性由来の「現実と自分の関係性がつかめない」不安定さの結果なのか、を考えてみるのです。

 

私達の場合ですと、お子さんは後者に近い可能性はないか、を今後確認していくかなと思います。こちらの方がより自閉症スペクトラムの自閉の部分での特性ゆえの不安定さなので、学習関係での解決とは違い、特性部分の自閉の閉じた世界観や思考回路、感覚的な物の把握の仕方が定型と違うからこその違和感であり、その違和感に漠然ととらわれている=自閉しているからこその、今の現状だと思うので、そこに関わっていく必要があると思うからです。

 

よって、塾などの学業での補いは能力的には今後いつでもできそうだ、と判断して、自閉的特性面への本人の理解を上げてすっきりとさせてあげる=不安の解消、にいそしむかなと思います。都心に住まう親族のケースで増えているのは、SSTができる塾やSSTの民間療育の活用です。友達付き合いが好き、人付き合いが好きな子は社会性の面でも早い成長が期待できますので、SSTなどで「え、こんなこと?」と思われるかもしれませんが、教室を再現した中で大人と少人数の子がやりとりをする、というような場所で学ぶことです。

 

小さな教室の中では「教科書の情報」以外の他人との関係性や会話、譲り合い、自己表現(できることのアピール)、他人の手助けなど、「人との関わりあい」が多数存在しています。お子さんはその部分を現在見えないか放棄しているので「鉛筆を噛む」という行為に熱中しているのであり、ある意味逃げているのでもあります。

 

逃げているのは「何が教室内で起こっているか、わかっているようでわかっていない。同級生が楽しんでいるやりとりを、見ているようで経験はしていない。自分はテレビを見るように、その教室の場面を見ているだけでそこに主役の一人として存在していない」という違和感が、ある程度感じられるからかもしれません。

 

よって、この「現実社会を現実的な視点で見る、現実的な実感を持って生活ができる」状態にしてあげれば、基本的なスキルは兼ね備えているお子さんであれば、中学、高校、大学、社会人と問題なくすんなり、少し頑張ったり、少し手抜きしたりしながらも、「自分が自分を操っている、状態を現実的な実感を持って生きている」ようになるかと思います。

 

fuママさんがおっしゃったように、空想しているような気がする、というのはあながち間違ってはいません。その世界しか知らないので、現実生活である学校の授業というものも把握できず理解できず「テレビを見ているように」過ごしているだけです。その部分がお子さんの自閉症スペクトラムの生まれ持った自閉の特性であり、この部分を具体的なSSTなどで人との関わりのある生活の中で、「本人が今を生きている、感じられる」生活に落とし込んでいく経験をすることで、やっと空想は「現実の実感や経験」という点になり、点がつながって経験の蓄積となり、最終的に空想ではなく、自分が主体となって感じられる生活ができるようになります。

 

まわりくどいようですが、このお子さんの特性部分に丁寧にかかわっていくことで、fuママさんが解決したいと思われている鉛筆噛みは、同級生との関わりや興味を持った人、やりとりの興味、鉛筆以外の物質への強い関心や好き、という動機にくすぐられて「自然と他を選択」するようになり、その時期に伴って解消していきます。

 

小学校の授業は座って聞いているだけでなく、自分をアピールする子やふざける子、先生との世間話やちょっとした面白さ、変わったことなどもたくさん起こっています。親族の子達が「空想から目が現実に向いてきた時」は、同級生があれをした、こんなことを言っていた、先生がこんなドジをした、こんなことで起こっていた、というエピソード満載の話が出てきたりします。

 

もしお子さんが、そうした1日4回や5回の授業での面白エピソードや同級生の話をしている場合は、そうした視点は備わっていると思いますので、少しだけ「親の子供のころの経験話」をふんだんにして、授業中にこんなことがあって盛り上がった、小学校であんなことで会話が盛り上がった、こういうふざけた流行り話があった、など「情報ネタ」を提供してあげると、子供が学校での「友達との関わり」が楽しくなって、暇はすべて「誰かを見る、誰かの発言を注目して楽しむ、何かの出来事を待つ」などの姿勢に変わっていくと思います。

 

もしこれらが見られない、授業はたいくつ、というだけで空想している閉じた状態であれば、これらの視点がまだ育っていないということなので、そこを親側から刺激していくようにすれば、親側の「今解決したいこと」は中学までに、直接的な制止や注意をしなくても、上記の自閉特性の丁寧な関わりやSSTの支援をすることで、間接的に消滅していく可能性が大だと思います。親族の子達のケースでは、まわりくどく思われるかもしれませんが、こうした解決の仕方が多いです。

 

今すぐ、不適切行動をやめさせたい、というご希望にはそえないかもしれませんが、上記のような根本的な部分を大事に扱っていくと、少し時間はかかりますが、今後長く、お子さんの人生において再発しない、同じ不適切行動を取るに陥らないスキルを身に着けられると思います。

 

長文ですが、かなり書き散らかすようにまとまりのないまま回答していきましたので、わかりにくい説明になっていると思います。ご容赦いただけますと助かります。また、ご希望にそう「具体的な回答」になっていないと思いますが、間接的に解決していく方法として上記を書かせていただきました。

 

以上です。

 

 

 


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