親族の中で、今、バトル中の親子がいます。


小学校6年生なのですが、海外留学をしたいと言い出しました。「日本の学校は無理だ。海外だったら頑張れると思う!」というわけです。


確かに、一族の中には海外で仕事して活躍したり、小学校から海外のインタースクールへ行って頑張っている子がいます。以前、記事にしたこともあります。その場合、親子で1年以上に渡る準備を重ねて、海外のルールや考え方の違いなどを学ぶ、ということをしていきました。


親としては何百万という費用もかかり、また現在のこの6年生の成長度合いも考え、まず話し合いをすることを提案しました。海外へ行くには準備がいる。行く前にお前が知っておかないといけないことが多い。旅行ではないから海外の学校を受験して合格し就学ビザを取らないといけない。1年は準備に必要だ、費用の相談もしないといけない、それまで日本でどう1年を過ごすかも考える必要がある、と伝えると・・・


子どもは子どもなりに必死なので、「お金がかかるから行かせるつもりがないんだ!」と逆上したようです。まず、この時点で話し合いに入る事も出来なくなりました。


親としては、思いの強さがどんなに強くても、情熱があっても、自分の思いに強く囚われすぎて誰とも会話ができなくなるような状態では、海外の学校どころか日本の学校でも、どんな小集団でも社会でもやっていけない、と考えて「まずそこからやりなおしだ」と実感したようです。


反抗期も重なっていると思いますが、小学校4年生までは感情にとらわれすぎることなく、浮き沈みがあっても「他人(親、先生、親族)の言葉をもらって、考えてみる」ということができていました。受け入れる、受け入れないはそのあと、自分で悩みながらも決めることができていたのです。時間はかかりますが、意思を伝えるという苦手に少しずつ取り組んでいました。


高学年になってくると、学校でのお友達との対人関係が難しくなり、それまで上手く過ごせていた小学校生活が居心地の悪いものになってきました。どんなに今までのようにやろうとしても、周囲が成長しているので、「何か今までと違う。自分だけどうしたらいいかわからなくてウロウロしているような感じ。皆は中学へいく準備を着々としているのに、自分はそこまで考えられない・・・」と意識の差を肌で感じて、置いていかれているような疎外感を感じたようです。


中学については、6年生になった時に上がる予定の中学を訪問しています。本人も親も特にこの中学への問題は感じておらず、フリースクールや私立は選択肢として考えませんでした。その後、6年生の夏過ぎぐらいから、友だちとの関係が変わり始め、本人が焦る一方で状況は変わらない、不安は増す、という精神的混乱に突入した、という状態です。


突然に海外留学と言い出したのは、すごく海外に興味があったわけではなく、「ここから抜け出たい」という逃避願望が強いと親は見ました。私立やフリースクールではだめなのか、と言うと「日本はどこに行っても友達関係が難しい。いじめも多いのは日本が悪い」と、日本全体の欠点という捉え方としての百ゼロ思考が炸裂です。


こういう、混乱時に周囲を絶望的に見たり、世の中を拒否したり、あらゆる問題の原因を「外」のせいにすることは普通にあります。ですが、これでは何にもならないんですよね。友達と上手くいかずクラスで異邦人のようになっている自分のことをまず、直視したくない気持ちが強いので、そこが逃避の原因であり地雷になっています。


親が話し合いをしようとすると、


「親のわがままだ。子どもの言う事より、自分達の言い分を通そうとしている。留学させたくないだけだ!」


と話し合い全面拒否で、「留学してよい」という言質だけをよこせ、という全力の要求をしてきます。


親としては、それで折れるわけにもいきません。親も子も、留学について何も知らないのに、無責任に「いいよ」と簡単に言えるような事ではないからです。


また、精神的に混乱して思考が極端になり、被害妄想や思い込みが激しくなっているので、親が伝えたい中身をいつものようにすんなりと捉えることができなくなっていて、子どもの頭を冷やす必要もありました。


親の返事としては・・・

それは誤解だ。


親であっても、自分の経験と知識の範囲内でしか語れない。


留学したいなら、まず留学している親族に話を聞いたり、受験ができるレベルの学校を探したり、英語力がないのに受け入れてくれるのか、色んなナゾを解いていかないといけない。


費用がかかるなら、ローンをしてでも行かせることはできる。


だけどまずは、留学のことを良く知っている会社や先生、先輩、海外の希望校の相談員の人、いろんな意見を聞いてお前自身も動くのが当たり前。今回ばかりは、留学を何も知らない親があれこれできることはない。お前が親と同じように動いて、自分で決めていかないといけない。


海外を知らずに飛び込んで、そこが日本より友達作りが難しい場所だとしても簡単に逃げられない。親はそこに居ないからだ。一度海外の学校に出たら、相談できるのは留学担当の先生や現地の先生だ。


日本で困っていることを先生に話したか。誰かに相談したか。親にしか言えない状態じゃないのか。いきなり海外へ出て、英語で海外の先生に相談する心の準備はできているのか。


行けば何とかなる、というのなら、今の学校での問題を解決してから行け。やめてもいい、自分で先生に悩みを相談しろ。卒業までどうしていけばいいか考えて、学校をどうするのか、留学したつもりで自分でやってみるといい。話し合いに同席しろと言うならいつでも行ってやる。日本語で会話できるんだ。親は練習と思って見守る。でしゃばらず、お前に任せる。



というような趣旨を伝えたようです。


「自分でアクションを起こせ」と言われると、自分で考えないといけない、自分で先生に話しかけないといけない、自分が事を起こして進めて、どうなるかまで全部やらないといけない・・・と、「他人に自分から関わっていく難しさ」と、すべての結果は自分のやり方にかかってくるような責任の重圧に、ものすごく負担を感じます。小学生なので、たくさんの支援を「大人から」まだまだ受けているので、部分的に動く練習はしていても、相談を持ちかけたり交渉したり、ということを自分一人で全部するということはまだまだ未熟です。


ですが、海外では必ずこれが必要になると親は見ました。親がいない環境で寮生活になるのと、やすやすと会えない距離にいるので当たり前ですよね。日本の寮制の私立なら訪問日に行くことができますが、海外なら1年に1回行けるのがせいぜいです。寮の先生や学校の留学担当の先生が親代わりとなり、寮長が兄、姉の代わりをするそうなので、悩み困ったら相談することは必須になります。


この子は、今いる学校でも、悩むけれど誰にも自分から愚痴を言ったりできず、先生や友達に相談したり、ということが苦手です。それ以外の「元気に学校へ行く」とか「宿題や勉強をやる」ということができているので偉いです。でも自分の弱点を直視することがとても苦手な子で、唯一、留学で必要なこの点がまだまだ自信を積み上げられていません。


向かい合う時期に来たのだ、それも火蓋は自分で落切ってとしたようなもので、留学と言う日本より自立性と対人交渉力がいる環境を求めたのだから・・・とつきつけられて、いよいよ、取り組まないといけない状態になりました。


それでその後どうしたか、というと、留学云々よりも「今の学校の問題の取り組み」に右往左往しています。先生に話しかけたけど上手くいかず玉砕、2回目、相談出来たけど「よく要点がわからない」と言われて玉砕、放課後に話すことになり、紙に言いたいことを書いた、でも先生のアドバイスが今ひとつわからず、その「よくわかりません」を上手く伝えられなかった。


という感じで、堂々巡りになっているようですが、とりあえず自分で「相談する」という難しい苦手にえっちら、おっちら取り組んでいるそうです。実は親の方から、「時間がかかるけど子どもにつきあってもらえれば」と先生に電話しています。子どもが相談を持ちかけるので、と。


子どもも、親に頼っていた部分がなくなった時、自分はどうしたらいいか、あんまり考えていなかった・・・というのをわかったみたいです。


親離れ、子離れの時期が到来です。


結末がまだなので中途半端な記事になりましたが、こういう「転機」はよくあることなので、親の思い切りと子どもの自立のきっかけはこんな感じ、という例として出してみました。







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