メッセージにいくつか同じご質問が続いていたので、この記事でお返事させていただきます。


発達障害の中でも、言葉が得意でなく、普通のアルバイトも無理そうだというような自閉系の子供の場合はどういう仕事につけるかが心配だ、実際にはどうなのか、というご質問がありました。


過去記事で何度か触れていますが、自閉度が高かろうとわが一族は「自立した生活」をするのが当たり前に育っていきます。ですので、洗濯も自分でしますし、食事も自分で作ります。もちろん手先が不器用なので、手でちぎって洗っただけ、ドレッシングをかけただけ、の野菜サラダや、昆布とお湯を入れて肉か魚、野菜を入れただけの鍋をポン酢で食べる・・・などの簡単料理だったりしますが、作業量が少ないやり方であればやれています。衣服の買い物だけはできないというか、難しい人が多いので支援を受けていたりしますが、そうそう買わないのと、最近ではインターネットで欲しい物を見つけられるので、カードを所持している一族に手続きをしてもらい、代金を前払いで支払って届けてもらったりしています。



こういう感じの生活の中で、お仕事と言えば農業系が多いです。袋詰め作業や収穫作業は農業地帯ではいくらでもあるので、それが仕事として成り立っています。収入は多くないですが、田舎は食費や車の経費以外にお金を使う所がないので支出も少ないのでやれています。



今、通信制の大学生ですが、アルバイトをはじめた高機能自閉症の親族は、在宅でパソコン添削のお仕事をしています。単価は安いようですが、彼は几帳面で得意な数学と英語に関してはおそらくパーフェクトな採点ができるのだと思います。今の所2年ほど続けています。ものすごい枚数を会社から依頼されるらしいので、同じ内容の答案をチェックして会社から指示されたマニュアルにそって採点するという、正確に根気よくこなしていくかなりの気力がいる仕事ですよね。でも彼には全く苦痛ではないようなので、こういう単調でマニュアルにそってできる仕事は歓迎のようです。「自分にあった仕事」を見つけることが大事かなと思います。


ちなみに、彼はこの仕事ではメールでのやりとりがほとんどなので、会社の人と話したり交渉したりということが一切必要ないから楽なのだそうです。仕事を得た時も、申込みやテストや登録も全部パソコンでできたそうです。面接会場へ行くというような事もしていません。不得意な「ペンや鉛筆で書き込む」タイプの添削でもないそうです。今風の、パソコンで採点する形式とのこと。自分でインターネットで自宅でできる仕事を根気よく探して、条件を見て「自分に合う」と思ったからやってみたのだそうです。パソコンの中では、彼は自由です。今の時代は、彼には「生きやすい」そうです。



なにより、彼はこういう勉強に関するお仕事が好きなようです。完全に「自宅で仕事をする」というスタンスを決めていますし、おそらく対面式の講師などは難しいと思いますが採点をしたり問題を作成したりという事は得意なので、この分野の狭い抜け穴のような仕事をしていくのだろうと思います。 


急にこういうアルバイトがぽん、とできるわけではなく、彼は不登校が長くて勉強は教科書だけでは理解できず、参考書を使って「自分が理解できるワークシート」を作っては解く、という勉強法を取ってきましたので、それが仕事に生きています。この長年の学習習慣が、採点という仕事や問題を作成するという「得意で慣れた分野」だから仕事につながっていくのだと思います。


ですので、「どんな仕事につけるか」と心配であれば、将来の仕事につながりそうな「その子だけにやれる方法、これならできるということ」を学童、学生時代に作っていくことが仕事になると思って見守って行かれるといいのかな、と思います。


ただ一つ言えるのは、何の下地もつくらず、ただ仕事を探して、全くまっさらの状態で入社して仕事にとりかかる、というようなことは発達障害の人にはできにくい、ということでしょうか。定型の人は、入社してどんな部署にまわされようと、初めて営業をしようと、初めて商品開発をしようと、その場で教えられたことをどんどん吸収しながら結果も出せる器用な人が多いのでしょう。ですが、発達障害の人間が「教えられたことを理解し」「教えられたことを覚え」「すぐに実践し」「結果をまとめて報告する」という同時作業ができるかというと、そうではありません。会社勤めには、この同時作業が求められます。


会社勤めをしている一族の者が、それでも勤めることができているのは、入社してすぐにする仕事が大学時代、バイト時代からやっていた「専門分野」であり「得意」であり「なじみがある同じ作業をする」仕事だっからだと思います。いきなり、入社して初めてのことをする、という人はほぼいません。会計なら会計を、ウェッブ系ならウェッブ系を、と自分で専門を決めてやりやすい仕事だけを選んでいます。



子供さんの進路を考える時、それは「今を考える」ということが大事かと思います。今、何ができるか、何を好きなのか、そういう視点を持たせるために、その子に「近い将来仕事をして自立していくのだから、毎日少しずつ発見だね、お試しだね」という意識を家庭で持てているか、が鍵かと思います。



参考になれば幸いです。





人気ブログランキングへ

にほんブログ村