私にとって、「アスペルガー症候群」というのは特別な意味合いを持ちます。夫がアスペルガーですし、親族で最も仲の良い従兄弟もアスペルガーです。今では自閉症スペクトラムの枠組みの中に消えていきましたが、私の中では、アスペルガーはやはり別格です。



アスペルガーの人間というのは、どこか他の発達障害の人とは異なります。


他の発達障害の人間は、どちらかというと「知らない」ことで無知や未経験からこの定型一般社会でズレてしまい、そのギャップを自分なりに工夫して補っていく感じです。ですが、アスペルガーの人と言うのは、かなりきつい「斜な認知」というか、定型一般の人と比べると「裏ばっかり読んで」とか「ひねくれた考え方だな」とか「被害者意識が強いんじゃないの」と言われてしまうような、強い認知の歪みが存在します。ここが障害の一番の特徴であり、そして一番苦しむ点です。


もともとは自閉症スペクトラム全般と一緒の障害で、世間でもまれて二次障害的にひねてしまうのでは、と思いがちですし、そのケースも多かろうと思いますが、うちの一族の中で観察したところでは、


生まれつき不安が強い、外界に対して過敏


小さい頃からすでに生来の認知の歪みを備えている


周囲の刺激(言葉、態度)に敏感に反応する


感情のふり幅が大きく、平坦から絶望、平坦から悲観、平坦から怒りの振り子を持つ心の状態


自我流に没頭するため、他人の介入をひどく嫌う傾向がある


自我流を「唯一かつ正しい」と根拠ある・なしに関わらず思い込む、そのためプライドも高い


自分の我流で築き上げている自信やプライドを、他人から論破されたり的を射た批判をされると、精神的な衝撃を受けて絶望したり激高する



と、ここまでが生まれたままの状態であるアスペルガーの人の特徴です。何も成長する段階で学ばないと、大人になるまでそっくりそのまま継続していく特徴でもあると思います。ところが、アスペルガーの人というのはより高い理論性、より物事を素直に受け入れる謙虚な面というのを隠し持っています。これが全然出てこないのは、生まれた時から見せる上記の特徴が、あまりに大胆であまりに自己中心に見えてしまうからです。子供時代から人間関係のこじれというのは頻繁なのも、上記の素の状態でお友達や先生とやりあってしまうからです。



そこで、親や大人達が早いうちから「極端に振れてしまう認知の性質」を、マイルドにすべく理論づけて、理由を明確に説明して、

「こういう考え方がある」

「こういう視点がある」

「それはこういう風に誤解されやすく、だからこういう風に言動するとよい」


というように、ただ「教えて」いきます。アスペルガーの子供ほど、一発で覚えてくれる優秀な人はいません。もちろん、説明が悪ければ理解しずらいようですが、きちんと理論立てて教えると、「自分の思い込んでいた事は、実際はそうではないのだ」と素直に受け入れてくれることがほとんどです。そしてよく記憶していってくれるように思います。幼い頃に話した内容を、大人になってからも覚えています。


こうして長い18年という子供の未成年時代に「アスペルガーの認知の癖」をひとつ、またひとつと理由や理論的な説明を頼みにマイルドにしていくと、以下のように変わっていきます。



不安や精神的過敏性(身体的なものを除く)が、生活に支障ないぐらいに落ち着きます


認知的な歪みと変更後の自分を自覚しているため、定型一般の社会に擬態せず、2つのペルソナ、本来の自分と社会の中での自分(役)を持ち、上手に演じ分けします。


周囲からの言動に冷静に対応できるようになり、「定型の考え方ならそうだよな」と自分と切り分けて考えられるようになります。(自他の距離感がきちんと取れる)


感情のふり幅が少なくなり、始終平坦な状態が主となり、そこに「喜び」「楽しい」というプラスの感情が頻繁に加わります。感情が全体的に明るくなります


他人視点を完全に意識できるため、自我流で物事を運ぶ前に他人の考え方や方法を吟味する余裕ができます。(自我流を好む性質は変わりません)理論的かつ説明に良しと思える点は採用し取り入れるようになります。


自分のペースで物事を進めている時に、他人に介入されたり途中から用事を入れられることは苦手ですが、「今はできないので」とか「最初の時点で言ってもらえたらできるのですが、途中修正が苦手で」と相手に自分の性質を説明してトラブルを回避することができるようになります。(主に大学や会社でこの技を発揮します)


持論が唯一、とか絶対に正しいという意識が薄くなります。集団社会において謙虚な言動が見られ、プライド最優先の状態から脱皮し、それが理由で対人関係に支障をきたすこともほぼなくなります。


定型一般の人の独特の考え方や価値観に遭遇しても、自分の考え方と分けることができます。ですので、批判や責める言葉に過剰に反応することがなくなり、冷静に受け取ることができます。「自分としては」「自分の意見としては」という、独自の考えを上手く示すことができるようになり、相手から認められる経験も多くなり、自信をつけていきます。



こんな感じです。夫や伴侶の人に関しては、出会った時には先に記載した「アスペルガーの生まれ持った性質そのままの状態」が継続していて、それゆえに周囲との軋轢やトラブルを多々経験し、精神的に疲弊してうつ病経験あり、投薬治療の経験もあり、感情を必至でおさえて能面状態という風情でした。精神的に毎日ギリギリの状態だったのだと思います。



アスペルガーの人は予後がいいといいますか、認知は歪んで生まれてくるかもしれませんが、それが周囲と異なること、何が違うのか、その理由は何か、ということを知るとものすごい速さで変化していくのだな、と感じることが多いです。子供ですと、対人関係で我流をやってしまい、トラブルになりますがそれを解説して「良いやり方と、その理由」を説明すると、次からきちんと理由にそった行動、言動というのを取ろうとする意志が見えます。



二次障害のうつ病や強迫的な精神状態で苦しんでおられるアスペルガーの子供や大人の方は多いと思いますが、まず先にその治療を医学的にして、生活習慣や環境整備で落ち着いて物事を考えられる状態に整えてから、この「認知の歪み」をマイルドにする取り組みをしていかれると、ほぼ良い、というか素晴らしい結果になると思います。


どんな認知の歪みをどう理解してマイルドにしていけるか、ということに関しては、アスペルガーのケースは非常に多くの本が出版されていますので、それを参考にされると客観的に見ることができるのではないかと思います。


いくつか、夫や伴侶、子供が利用した本を最後にご紹介しておきます。



定型の一族の伴侶が読んでわかりやすい、アスペルガーの育児書はこちらです。

実例がいくつも載っているので理解しやすいみたいです。



アスペルガーの「認知の歪み」がどんなものか、というのが知りたい時はこちらを読むと

「こういう考え方、見方をしてるのか・・・」と納得がいくと思います。こちらを子供の様子、言動と照らし合わせて、どの部分の認知が強く出ていて、どう現実に支障が出ているのか判断するいい材料いなると思います。


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こちらは、子供に説明する時の説明の仕方の参考になります。

図解や絵を描くとき、そのまま使えたりします。例えば、説明でいい例は


「真実を正直に言ってしまう」=悪気はないのに相手から誤解される、という課題については「絵が下手という事実」をどう認知するか、という図解がされていて


定型発達の子は「下手な絵だなあ」と感じる→「下手だと言ったら傷つくようなあ」と思う→「下手だと言わないでおこう」と判断→スムーズな人間関係


アスペルガーの子は「下手な絵だなあ」と感じる→「自分の気持ちを伝えよう」と思う→「絵が下手だね」と言ってしまう→相手を誤解させる


さらに


相手が嫌な顔をする→その理由がわからない=相手が嫌がることを言ったと感じていない、という注意点まで書いてあります。これを親なりに、言葉をわかりやすく変えたり、実際に合ったトラブルを使ってお友達の名前を用いたりして、上記の矢印の順に表にして説明すれば、今後の「マニュアルとして子供が使いたがったりします。




こちらはおそらく、定型の伴侶の方の間ではよく読まれているのではないでしょうか。

この本は一度夫婦関係が破綻しかけ、伴侶がアスペルガーだと気づいて関係性が改善されていく本です。やや相手の特性がきつく、固定化されていて自閉度が高いように思いますが、基本的な考え方は参考になるのではないでしょうか。





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