何回か記事に書いている「2つ以上の選択肢を持つ」ルールについて、まだ書くことがありました。


というのも、こだわり傾向が強く、自分で決めた事をダメと言われると発狂してしまうぐらに凝り固まった性質を持つ子供達は、一つ間違えばパニックで1日明け暮れることも可能です。それがパニックもなく、平安で穏やかな生活が送れているのは、ひとえに「親側がすかさず別の実現可能な選択肢を示す」ことで回避できているからだと実感しています。ですので、この事について書くことは他の誰かにとって有益なのではないかと思いました。



こんなことがありました。



末の子が、運動会で頑張った褒美として父親の許可を得て、菓子付きの300円ほどのオモチャを購入しようとしていました。欲しいと思っているオモチャはたった一つです。


親は、「これから行くスーパーで売っていないかもしれない。その時は、違うスーパーにも行くか?」と聞き、本人は行きたいと希望しました。2軒目で売っていない時は、その日は余裕があったので3軒目までは行くことを話して聞かせました。


結果、2軒目でも売り切れで、これは3軒目も無理じゃないかと親2人は考え始めました。ではどうするか。もし、これから3軒目にもない可能性を言い聞かせても、3軒目で「ない」ということはこの子は「手に入らない」と思い込み、絶望します。手に入らない。その結果が、この子にはすべてです。そして時間や日付について理解が難しいので、また今度、という事は理解しにくいのです。なので、車で移動中にスマートフォンで楽天市場を検索し、購入できないかをすぐ調べました。「あす楽」というものがあるので、注文して翌日には届きます。そして、簡単にその商品は見つかりました。


「次が最後のお店だけど、もし売ってなかったときは、このお店で購入することにしよう。」とスマートフォンの画面を見せました。「ただ、この携帯のお店で買うと絶対手に入るけど、郵便屋さんが持ってくるから、明日の到着になるよ。でも絶対明日は家に届くから、次の店になかったら、すぐに携帯で注文しよう。」と説明しました。



幼くて理解に時間がかかるタイプの子どもでも、視覚的に「画面を見せて」「絶対明日家に届く」というような内容は理解できます。親が保障するわけですから、この時点で「わかった」とうなづいてくれれば、まずパニックは絶対しません。



案の定、次の店には売っていませんでした。


ですが、こだわりが強く、決めたこととは異なる結果に直面すると取り乱すタイプのこの子はすでに「明日はゲットできているという絶対的な保障」を手に入れているので、全く動じませんでした。「お父さん、買っておいてください。明日ください。」とお願いしてきました。それを了承して、私が帰り道は運転する間、スマホでお父さんが注文してくれるのをじっと自分の席から眺めていました。



選択肢を紡ぎだすというのは、親が知恵をあれこれ駆使して考え出さないといけないので、そういう意味では大変です。そして、選択肢を示すタイミングは実は一番大事だと思います。私達親は子供と同じ障害の特徴を持っているので、子供達がどの辺りでショックを受けるか、どの辺りで目の前が白くなり、頭がフリーズするかということがよくわかります。



自分達ですら嫌なあの「目の前が白くなり、絶望する状況」を子どもには味あわせたくないがため、ひたすら回避戦法として、選択肢を与えて、そんなにショックを受けなくてもなんとかなるという事を教え続けています。そしてその効果的な面はまだ続きます。子供が取り乱さず、パニックをしなくていい状況を長年続けると、それがその子の性質の一部となり、ないはずの冷静さすら身についてくる不思議も実感しています。



長じて高校生になる辺りで、実に冷静に工夫と選択肢を駆使して抜け道を行くようになり、立派に社会を生き抜く発達障害者の完成です。これが、幼い頃には危うい精神的な緊張とバランスを持つ自閉系の子供ですら、長く長く歩み続ける道で学んで成長していってくれている・・・家族の大事な成功体験です。






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