定型のごく一般の子どもさんと親ごさんの関係と異なる点を、一つ書いておこうと思います。


私達、アスペルガー、自閉症スペクトラム、高機能自閉症等の発達障害がある者は、ある意味苛烈な性質を持っています。常に百ゼロ思考に戻ってしまう性質があり、そのために他人への評価も百かゼロとなりがちです。ここで苛烈なのは、どんなに幼い子供も、親に対する評価を百かゼロで断罪しがちということです。


すごくないですか?3歳だろうと、5歳だろうと、10歳だろうと、親への評価が百かゼロ。ということは、絶対的に信頼されるか、常にどこかで不信、疑われているか、というどちらかに転ぶのだということです。



これは、実は自分達が子供の頃に親を見ていた視線がそうだったので、自分達が親になった時に理解できたことです。親が常に、自分達子供とのどんな小さな約束でも守ろうと努力してくれていたことを高く評価し信頼していたので、同じことをしなければ、子供がついてきてはくれない、ということを心底理解しています。



前の記事で2つ以上の選択肢を持つことは一族の人間には必須であると何度も書いていますが、ここにも強く理由があります。一つだけの約束を守る、というのはリスクが高いのです。


たとえば、

「明日は街の大きなモールに買い出しに行こうね。」と約束するとします。翌日、ものすごい暴風雨だったり、思わぬ交通事故などで不通になっていたらどうなるか?その実行不可能となる結果を全く示唆していなければ、親は嘘をついた、連れて行かなかった、という結果だけが大きく子どもの印象に残ります。もちろん、事情は説明するでしょう。でも、後付けでは遅すぎるんですよね。障害ある子どもにとっては、予期せぬ出来事こそ最も不安で恐怖を抱く対象です。全く心づもりができていない結果をもたらしたのは、親の「明日は出かける」という約束だったのです。約束さえしなければ、恐怖におびえることもなかったのに、親がすべての元凶だ、ということになります。



こういうことにならないように、常に2つ選択肢がいります。なので、わが一族では必ずこういう言い方をします。「明日は食糧の買い出しに街の大きなモールに買い出しに行く予定にしている。けど、天気が悪かったり運転する親の体調が悪かった時はやめにして、親は家で仕事をします。子供は従兄弟の家へ行きます。」と行く予定と、ダメだった予定という結果まで、親が結末を用意して保障しておくわけです。これが、我が家で言う所の「親子の約束」です。



この約束は、小さなことも同じ重さで子どもには評価されています。「お父さん、今日は一緒にお風呂に入ろう」と子どもに言われたとします。返事は「ああ、そうしよう」では不十分です。入る可能性しか示唆していません。ダメだった時については言ってないんですね。だから、「わかった。特に他の用事が入らなかったら一緒に入るよ。電話が来たり、近所の人が用事で呼びに来たときは兄弟で入れよ。」と言う風に返事をします。事実、生活をしていると親にはよく用事が入りますし、「ちょっと待ってね」が全く通用しない発達障害の子達には、具体的にできる時とできない時の2つの未来を前もって示しておく絶対的な必要性があります。



幼い頃は、こうして親が未来の選択肢を2つ以上用意しておきますが、成長するに従って、親がいちいち2つの選択肢を言わなくても子供達の方で選択肢をいくつも用意して考えるようになります。何年も、十数年も繰り返せばパターンも山ほど覚えていきます。そうすると、独り立ちするころには、自分の頭だけで未来をシュミレーションするだけの「脳内のコンピューター」が出来上がっているので、何事にも落ち着いて取り組める子に成長しているわけです。



親がこういった小さな約束を時々守れずにいると、とんでもなく苛烈な評価をする子供から信頼を失ってしまいますし、その後の親子関係が崩壊してしまうほどの打撃を受けます。時々なのに。たまに、時々というわずかな約束が守れなかった結果であっても、子供には通用しません。百ゼロのゼロの方に振り子が振れた子というのは、どんなに親が誠実に対応しようとしても疑ってかかられますし、なかなか信用してもらえなくなります。ひどくなると親が言う事言う事すべて、自分の気持ちは全くわかってもらえない!とまるで「敵」の言葉として受け取られてしまうので、親子というより子にとって親と言う自分を傷つける敵が家庭いるような精神的に戦争状態になり、生活が成り立たなくなります。



一族でそういうケースはたまに出ます。そうすると、やり直しをしていくしかない。これはまた複雑な手順があり書き出すことが難しいので、また自分の中でまとめることができたら書こうと思います。その複雑な手順でもって関係の再構築をするような羽目にならなくていいように、そのような徒労をふみたくないために、最初から小さい約束も大事に考えて守っていく方がずっと楽だし、とても生活がスムーズに行くと考えている親が一族ではほとんどです。






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