再び、少し遡った1歳前後の頃の話。

 1歳6か月健診で、保健所に行きました。
 そこで、発達の遅滞が疑われる傾向がある、と言われます。

 更に3歳児健診の時にも、同じことを指摘され、専門機関の受診を勧められました。

 ここでも、小児医療センターの新生児科の主治医が手配してくれて、医療センター内の心理検査室で検査を受けました。
 その時の指数(年齢的に知能指数というより発達指数というべきでしょうが)は、71でした。

 そこで、住んでいる地域を担当する療育センターを紹介されました。
 そこでの診断は「広汎性発達障害」ないし「自閉症スペクトラム(障害)」。

 その療育センターで、数回の教室に通ったりして、その後受けた検査では、指数が徐々に上がって行き、最終的に5歳になった時に受けた検査では「97」が出てしまいました。
 検査の環境にもよるようで、検査する担当者が「若いおねーさん」だったりすると、「クレヨンしんちゃん」の「野原しんのすけ」のように張り切ってしまう傾向があります。
 とにかく、「自閉症」診断があればIQ91以下で療育手帳の交付対象にしてくれるらしい、と言われても、ちょっと難しいかな、という状況になりました。でも、成長は感じられるので、嬉しいジレンマではあります。

 療育センターでは、通所の療育プログラムもあるのですが、現状では「満杯」で、とても受け入れは無理そう、とのこと。
 でも、少し離れた場所に「分室」を作って、比較的軽度の発達障礙のある子を、何組かに分けて、週1~2回の「通所療育」をしているから、そちらはどうか、と言われました。

 ただしこれ、朝から昼頃まで。しかも「親のどちらか同伴」が条件です。
 筆者と妻は共働き。どちらも一応「正社員」です。
 平日に週2日、休みを取らなければ対応できません。
 午前半休では少し足りないので、現在の就業規則では、結局1日休暇にせざるを得ません。

 でも、育児中の社員に対して、それなりの制度は整えられている会社です。調べてみると「育児短時間勤務」制度があり、これを利用すれば、色々な勤務パターンが選択できて、その中に「平日のうち週3日フルタイム勤務」つまり、平日のうち週2日を休み(言い換えれば「週休4日制」)にできるパターンがあることを知ります。

 育児休業や、その後の部分休業は、妻が取りました。
 今回は、自分が取ろう、と決めました。


 一応、管理職ではあるのですが、この意向を伝え、長男が「5歳児クラス(幼稚園の『年長組』相当)」の1年限りの「総務部付」にされ、出勤する週3日の間にできる業務を振り向けられることになりました。
 勿論、週3日しか出勤しないので、給料も比例して4割カットです。それでも、その1年は、自分にとっても色々な「学び」と「体験」の時間でした。

 

 その週2日は、夕食作りも担当。
 小学校で習った家庭科の知識しかないのですが、意外にできるのは、自分でもびっくり。一人暮らしの時期もあったので、多少は憶えていたのだと思います。
 今でも、週末などに、たまにですが、作ったりします。

 この週2日の分室での通所療育は、数人で1クラス。5歳児(年長)4人(すべて男児)と4歳児3人(男児1人と女児2人)が同じクラスでした。
 基本的に、当家以外は、同伴するのは全て母親。隣のクラスもそうでした。でもたまに、1~2月に一度くらい父親が来ることのある家もありましたが、ほぼ父親同伴というのは、うちだけでした。
 終了して小学校に進学した後も何度か「ママ会」があり、呼ばれましたが、筆者がいても呼称は「ママ会」だったような。
 時々は、子供も連れての「夕食会」(というほど大したものではない)もありましたが、長男に『飲み会』に行くか? と訊くと、その『飲み会』というフレーズに誘われるように付いて来ました。

 同じクラスの子は、ほとんど療育手帳の交付を受けていたようです。
 長男は、前述したように「検討」したものの、変に「健闘」してしまったので断念。
 その頃、分室の担当のソーシャル・ワーカーさんから、(長男なら)「身体で取れるんじゃない? 共通して受けられるサービスも多いし、進学や就職まで考えたら、使うかどうかは別にして、何か『手帳』を持っていたほうが、何かと便利なことがあるから」と言われました。

 前述したように、筆者には総合病院での勤務経験があります。
 また、児童福祉(障害児福祉も含む)に関する事業に関わったこともありました。
 更に、身体障害者手帳所持者に対する配慮の制度が絡む仕事もしたことがあります。

 そこで、制度について調べてみました。
 居住区ではなく、勤務先に近い区役所の福祉課に、(以前の仕事で関わって)知っているワーカーさんがいたので、障害福祉に関する冊子(手帳所持者には無料で配布されるが、一般には出回らない)を貰いました。ただし「現年度のはあげられないけど、内容はほとんど変わっていないから」と前年度の「在庫」を融通してもらいました。
 これは主に、各種の『手帳』を交付されたら受けられるサービスの「ガイドブック」ですが、制度面の開設もあるので重宝します。実際に手帳を貰ってからも、毎年これを貰うようにしています。
 この冊子によって、「第1種と第2種の壁」「膀・直3級と4級の壁」を改めて知ります。膀・直3級だと、療育手帳の(東京都で言う)「2度」(重度/A2)と「3度」(中度/B1)の間くらいですが、4級では「4度」(軽度/B2)と似たようなもの。

 でも、「膀・直」の「3級」と認定されるには、「膀胱か直腸のどちらかに著しく処置の困難なストマ等がある」か「膀胱と直腸の両方にまたがる障害がある」という要件があります。
 また、(これも既述ですが)「腎臓が片方(一つしか)ない」、というだけでは、「腎臓機能障害」には該当しません。
 従って、やはり「膀・直」で考えることになります。

 お断りしておきますが、誰も「より重い障害」なんて望んでいません。
 でも、「障害」があるのは事実だし、「障害」がある以上、それに少しでも対抗・対応するためのサービスを受けようとすると、それに見合っている(以上の等級の)「手帳」が必要になる。だから、等級・程度を低く判定されることは、それで実際の「障害の程度が低く、軽減されるならば」喜ばしいことですが、感じているよりも低く判定されることは、悪い意味で「軽く見られている」と思えてしまうのです。
 「手帳」、特に「身体障害者手帳」の交付に限定して言えば、むしろ逆に「思っていた以上の等級で認定」されても、それを「悲観」するよりも、「これで少しは楽になる」と思えるように感じるのです。
 あくまでも、身体障害者ではない筆者の私見なので、実際に全員がそうだ、とも断言はできないのですが。


 そして、結果として、膀胱・直腸両方の「障害」が認められ、3級第1種の身障手帳が交付されたのは、前述のとおりです。

 通所療育の分室では、大抵の子は療育手帳を持っていました。
 長男の手帳が交付された後、何かの時に、他の子から「○○くんの手帳、色が違うの、何で~?」と訊かれました。
 最近では、3つの「障害者手帳」の表紙・カバーの色や様式を統一化する府県・指定市も増えていますが、筆者の自治体では、未だに身体・療育・精神の3手帳では、色も様式もバラバラなのです。

 これ、説明するの、難しいですよね。
 特に、発達障礙を抱える未就学の子供に対して、どう説明すればいいのやら。

 定義どおりに説明しても、多分わからない。自分が何故「療育手帳」を持っているのかも理解できているか怪しい。尤もこれは、小学校に進学して、特別支援学級などに在籍することになれば、何となく解るのだと思います。
 なので、「幼稚園や保育園の他に、この分室に通っている」ことを「療育手帳」に結び付けたほうが、理解できるのかなぁ……と思って、そんな話をしたように記憶しています。

 身体・精神の「手帳」が、福祉サービス受給のための「必須」になっている部分が多いですが、そもそも法定事項ではない療育手帳の場合、手帳交付がなくとも、知能指数要件だけで「認定」される場合もあるようです。ただし、当然ながら手帳があるほうが「話が早い」ので、多くの場合は交付を受けることになると思います。
 ということで、長男はここ(分室)に来ている(療育手帳をもらえる可能性はゼロではない)けれど、ちょっと身体にも不自由なところがあるから、違う色の手帳をもらっているんだよ、といったような説明にしました。

身体 法定+福祉
療育 法外+福祉
精神 法定+保健


という「似て非なる」制度であるため、手帳制度に関しては、なかなか総合的な判定が難しいとは思います。
 個々の事情によって対応すべきなのは勿論ですが、長男の場合は、療育手帳の対象になるかならないかのポーターライン上にあるため、それによって身体障礙への対応を困難にしている面もある。

 自閉症をはじめとする発達障礙については、療育手帳の対象とならない場合でも、精神障害者保健福祉手帳の対象になり得る、なんて話は、耳にタコができるほど聞きました。
でも、福祉と保健のそれぞれ別の部門で扱っているものを、統合しないで「たらいまわし」にするような感じがします。それならいっそ、統合すればいいのに。
 そして、身体の障礙があるが故に、精神にも障礙を抱えるに至ることもあるだろうし、逆のケースもあるかも知れません。療育手帳や精神手帳の交付を受けている人が、身体にも障礙を持てば、適切な対処・処置ができないかも知れません。

 手帳の色や形を共通化するだけではなく、様々なハンディキャップを総合的かつ、それでいてきめ細かく包括できるような手帳の制度というのは、実現しないものなのでしょうか。

 (つづく)