私の師匠が地元で会を立ち上げた時に出会い、何十年も一緒に演奏会などでお世話になった大先輩がいる。
その方が事情がありもう箏を弾けなくなるので、皆で楽器を使ってほしいと連絡があった。
次の演奏会に向けての下合わせの時に、預かった楽器を皆で弾いてみた。
どの楽器もよく鳴る。
今まできっとたくさん弾いてこられたのだろうと思う。
指先の病気で、ある時から三絃はもう弾けず、箏も爪をはめるのにテーピングをしながら弾いていた。
”大変なのよ~”と言いながら、全く暗い顔はせずいつでも明るくおおらかであった。
小さい子どもの頃から習っていたそうで、キャリアが違うなといつも感じていた。
低い声がとても素敵で、低音の箏も難なくこなす。
”この世界余裕がないとなかなかできないわよね”と。
当時子育てと仕事にあくせくしていた私。
今になってその言葉の意味がよく分かる。
いただいた楽器。
一緒にやってきた仲間との練習の時には持参し、その方の代わりにはとてもならないけれど弾かせてもらおうと思う。