2024-1 マルカム・ラウリー「火山の下」 | Alternative

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本と映画と酒でできています。

ポポカテペトルとイスタクシワトルという、二つの火山を下にあるメキシコのクアウナワクの町が舞台。酒浸りの元英国領事ジェフリー・ファーミンは、1年前に妻が出ていかれますが、ある日突然、その最愛の妻イヴォンヌが彼のもとに舞い戻ってきます。その1938年の死者の日の1日を描いた物語。

ストーリーの大枠は、失楽園のようなメロドラマです。ジェフリーは酒浸りでどうしようもないですが、イヴォンヌのほうも友人や弟のヒューと浮気をしてた過去があります。
離れてもなお愛し合っていた二人は、再会しても結局分かりあえずに破滅へと向かうことなります。
領事はすべてが失われたと感じるとき、酔っぱらうことでしか正気を保てない。現実は地獄のようにみえるのです。「愛なしでは生きられない」

なかなかに難解な小説です。
ジョイスのユリシーズのようにほぼ1日の物語で、「意識の流れ」の描写が多いです。意味不明なところもけっこうあります。
ただ、印象的なフレーズやイメージが繰り返される文章は魅力的で、難解ですが読みごたえがある作品です。