他の作品に比べると、何かがぶっとんだ印象がなく、普通のストーリー重視の小説に近いプロットと文章になっています。登場人物の性格描写も細かい。
小説内で、ドイツと日本が負けた世界を描いた本が流行っているという二重構造がストーリーに深みを与えています。「易経」とこの本の影響が登場人物を動かしている感じです。
拳銃やフリンクの作る装飾具なども含め、虚実が入り交じっているところにディックらしい世界観があります。
よくできていて読みごたえのある作品で面白いですが、ディックのSFとしてはインパクトが小さい感じもありますかね。