禁じられた遊戯……魔界ヘの誘い~永遠の物語~ -4ページ目

幼少期編 第21話 信用

電車で帰り

睡魔が襲う

萌は喋り続けていたが

ほとんど覚えてない

手を引かれ

電車を降り

私たちは

各々の家へ向かった







家は静まり返っていた

誰もいない




私は化粧を落として

寝ようと横になった

目を瞑れば

そこには

闇しかない



きっと、麻生なら

夢を散りばめるのだろう



そんな事を考えながら

私は深い眠りについた











バターンッドンッドンッ







大きな音が響き渡り

私は飛び起きた

部屋から出ると

彼女が階段の下で

横たわっていた



私は

その場から動けなかった

かけ降りて助けないといけないのに

体はその場から

動いてくれない









ガチャドンッドンッ







この場面を目にして

どぉ思ったかは

想像がつく



父は彼女の頬を叩き

救急車を呼んだ

私を見ることもなく



どぉして…

こんなタイミングよく

父が帰ってきたのだ…



救急車の音がうるさく

町内に鳴り響く

彼女と父を乗せ

消えていった






ポツンと残された私は

なにをするわけでもなく

リビングのソファーに

座り

茫然とするだけ

無の時間

私には長すぎる













ガチャドンッドンッ








私の体は敏感に反応した



足音が

少しずつ大きくなり

心身が削られる気分だ


振り返る事すら出来ず

私は無言の恐怖を感じた





『足を滑らせて落ちたらしい。』



空気に亀裂を刻むような

父の声



誤解をされていない

私は安堵した




父は私の隣に座り

タバコを吸い始めた

遠い目をして




『本当はどうなんだ?』





『お前がやったのか?』





それだけで

もう充分だ

父は私を信用していない

さっきとは違う

胸の痛みは

私を侵食する






『最近、病院であった子と仲良くしてるようだな。』





私がしたんじゃない…

本当に自分で落ちたの


萌は関係ない…



言いたい言葉は

喉に引っ掛かったまま

身動きを取ろうとしない



私はいつになったら

言えるのだろう



その遠い目には

いつか私が

映る日が来るの?



父はタバコを消し




『いい子になると言ったのは嘘か?』



捨て台詞を

父は置いて

出ていった






私を取り残して

世界はもう

動き始めていた……



幼少期編 第20話 輪廻

おじさん2人の行きつけらしい

コンクリート建ての

2階のBarへ案内された


店内は薄暗くて

カウンターと

2つテーブル席があるだけ

客は私たちだけ

隠れ家みたいだった





席についた時には

萌とおじさんは仲良しになっていた


注文をし

自己紹介が始まった


寺内と言うおじさんは

40代で落ち着きが無く

陽気なやたらハイテンションだった


どぉやら、萌を気に入ったようだ



もう一人は麻生と言い

同じく40代で

寡黙で愛想笑いをする程度


二人とも左手の薬指には指輪がはまっていた


確かに2人共

萌がナンパしただけあって

男前だった




寺内が萌をオトそうと

躍起になっていて

萌はそれを分かった上で

あしらいつつも

上機嫌だ





萌と寺内は

お酒でますますテンションが上がり

カウンターの方へ

消えていった





取り残された私と麻生は

なにを話すわけでもなく

お酒を飲むわけでもなく



無言の時間を共有した






今まで経験した事のない沈黙

苦痛でもなく

楽しいわけでもなく

ただ同じ場所にいる…

とても不思議な空間



『このコースター、誰が作っているんでしょ。』



低音の穏やかな声は

空気の振動を揺るがす事無く響いた気がした



麻生がいうコースターは

ビーズと針金で

果物の形を表わしていた

麻生はレモンの断面

私はさくらんぼ



『マスターの知り合いじゃないですか?』


愛想なく言う私に

麻生は微笑し



『5感じゃなくて、心でみるんだよ。』



麻生は私を見つめ

私はコースターを見つめた
小馬鹿にされた気分…



私の想像力が貧困なのだろう

いくら見ても

頭で考えてしまう

もし、これが壊れたら掃除が大変だ。とか

作った人は器用だ。とか



麻生の言う

心でみる

なんて到底、出来っこない



『人は綺麗なものを見ると触れたくなる。そういう心理なのかな。』





『私なら、壊れなか心配になってしまう。』





『私は、壊したくなる。』



たかがコースターに

こんなに感応する

麻生は

ナルシストか

変り者か

感受性が豊かなのか

どれかだと思った






沈黙の中

私は麻生の人間観察を始めた



視線は一定で

だからと言って

なにかを凝視してるのではなく

泳いでる感じ

端正な顔立ちをしていて

賢そうに見える

雰囲気が…

私の興味をそそる





『なにかほしいものある?』



『なにもない。』





『それは、無欲に思えるけど、淋しい事だね。』



そう、私には求めるものがない



なんだか見透かされているようで



あんまりいい気はしなかった



『K美術館へおいで。』


麻生はそれ以上なにも言わなかった









Barを出たとき

もう、朝日は登っていた

寺井は私たちに

タクシー代を渡し

麻生と

どこかへ歩いていった




萌は上機嫌で

寺井に手を振っていた



『今度デェトしてあげるの音符



『¥交でもするつもり!?



『う~ん音符流れでいいんじゃない音符永遠は?』



『なんにもないよ。』



『そっかぁ~。私も苦手なタイプだし。』



私たちは、駅へ向かった

朝日に照らされながら










この出会いが







すべての







歯車を狂わせた



幼少期編 第19話 放浪

事が済んだのか

2人が家から出ていった

私は非日常的な

出来事に

思考が停止したまま





襖を開け

異臭が漂った

この空間が

異様でならなかった




『ごめんね…汗ビックリしたでしょ?』



『うん…なに?いったい…』



『いい年こいて、売りしてんの。』



萌の言ってる事が理解できなかった

売り?

親が?

白昼堂々と?

理解出来ない



『永遠、ババアが帰ってくる前に外行こう。』



私たちは、着替えて

外へ出た

私は見てはいけないモノを

目の当たりした気がして

仕方なかった





急いで外へ出たため

私たちは化粧を落としていなかった

アイシャドウ

アイライン

マスカラ

チーク

グロス



の簡単なものだったけど

それだけでも

私たちは中学生には

見えた




『ねぇ、週末、夜の繁華街に行こうよ音符



好奇心旺盛な萌は

夜の繁華街で遊びたいらしい



『服とかどぉするの??』


『任せてよ音符調達しとくから音符



繁華街

興味が無いと言えば

嘘になる

狭い世界しか

知らない私は


独りでは無理だけど

萌と一緒なら……



私たちは互いに感じてた










土曜日の夕方

萌の家で化粧とセットだけして

カバンに服と靴を入れて

私たちは駅へ向かった

夏なり夕方になっても

空は明るくて

私たちも

陽気にはしゃいだ







電車を降りて

トイレで着替えた

萌に渡されたのは

黒のミニスカ

赤のキャミソール

ピンヒール




『永遠、すご~い音符セクシー』


萌は白のワンピ



『萌、お嬢様みたい。』



『私、口悪いから音符ギャップが必要なの音符



萌は自分の事をちゃんと把握しているようだ

黙っていれば

上品で華のあるお嬢様に見える





私たちは商店街を歩いた


キャッチ

ホスト

ナンパ



萌はシカトするか

話をしてみるか

暴言を吐くか



どぉも、品定めをしているようだ

どぉもお気に召す人が見つからないらしい


終電が無くなり

歩き疲れた私は

どこか店に入ろうと

提案した



萌はキョロキョロしながら

『ちょっと待ってて音符


早足でカラオケ前にいた

2人の男に話し掛けた

すぐに話がまとまったみたいで

萌が呼びにきた


『ご飯ご馳走してくれるって音符


スーツを着た

2人の男はこちらを向いて

私たちを待っていた

『えっドンッ正気??』



『大丈夫だよ音符オヤジだからお金持ってるよ音符



そういう問題ではない…



『名前は嘘言ったから音符
年は秘密。永遠はひな。私はなおだから音符


しっかりしてるのか

ちゃっかりしてるんだか…




萌の勢いによって



知らない男2人と



私たちの



奇妙な



食事会が始まった