禁じられた遊戯……魔界ヘの誘い~永遠の物語~ -3ページ目

幼少期編 第24話 花火

毎日、駅前の進学塾に通った




塾が始まるまで

広場で時間をつぶした




楽しかった日々を

無かったことにしようと

思う反面

どぉしても広場から

離れられない自分がいた





夏休み直前の

クラス替え試験に

みんな奮闘していた



特進クラス

進学クラス

学習クラス



勉強漬けの毎日のおかげで


私は特進クラスになった


周りはマジメを絵にかいたような

人間ばかり

騒がしい人間も

この空間では

口数が自然と減少する



毎日のテスト

宿題

脳が拒否する





つまらない毎日

でもこれが普通なんだ。

と言い聞かす

誰のためでもなく

自分のために

勉強する

自分がそんな事

望んでいないのは

ここにいる

大多数が

そうだろうと思った

みんな誰かの為

誰かの世間体の為に

刻まれた文字を脳にインプットさせる

脳に詰め込む量と

吐き出す量は

違いすぎて

使われない知識は

忘れ去られないよう管理しなければならない





みんな、どうやって

ストレスを解消しているんだろう


私は溜まるばかりだった


足りないものを補う

でもなにで補うのか……

週末の散歩

読書


つまらない日々を送っていると


趣味までつまらないものになるのか……?


退屈は卑屈にさせる


「普通」この言葉は抽象的すぎる

でもすべてをひと括りにはできない

少なからず私は、耳年増だと思う

周りから、本から得る知識は半端な量じゃない

だから私は少なからずマセていた





塾へ通いはじめてから

学校の勉強が

余計嫌いになった

スピードの違い

レベルの違い

時間が無駄に思えて

塾の宿題は学校の授業中

それが当たり前になった

教師たちも

見てみぬフリをした








終業式になり

私はそのまま

公園で時間をつぶした



夏休みの生活日記に

すべて平日は

《塾で勉強》

とだけ記入した



ドリルは夏休み前に

終わっていたので

あとは、絵と自由研究と読書感想文だけ





絵は苦手

白いキャンパスを

他の色で

汚してしまうような気がして

嫌な気分になる








『K美術館へおいで。』


あの時の麻生の言葉が

脳裏をよぎった





K美術館なんて

聞いた事が無い




交番で聞いてみたが


知る人はいなかった





意味もなく歩き回った






着いた先は

萌の家

私はストーカーだ…





あの日から

何度訪れても

出会える気配もない






大切なモノが

突如、無くなる

それに理由なんて

きっとない





一期一会





一瞬のきらめきだけで






私は落ちてしまう






線香花火






もう








忘れよう……






苦しみから解放されたい……



幼少期編 第23話 羽根

父は珍しく家で、お酒を飲んでいた


リビング内に潜む異空間


父の絶対領域


私の空間と父の空間か接触する事なんてない



『永遠ちゃん、ケーキ食べよぉ音符



ケーキよりも甘い声に

私は苛立った

この笑顔の裏に隠された別の顔

化粧ごときじゃ隠蔽できない



『はい。どぉぞぉ音符



皿にのったケーキは

欠片になっていて

ホールの美しさをそこなっていた




『いらない。』



私は皿を押し返した

ケーキは床に落ち

原型はなくなった

その様は、彼女の裏の顔を表現しているように見えた


『永遠っ!!








バチーンッドンッドンッ


突然の大声に身体が痺れると同時に


頬に電撃がはしる






『どぉしてお前はそうなんだ!!なんでもっと素直になれない!!




父は声を張り上げ

激怒した




眼が熱くなり

涙が滝のように

流れ出て止まらない





でも、これは

怒られて泣いてるんじゃない…

素直になれば私を見てくれるの……?

子供らしくしなければいけないのは誰の為に……?

悔しくて…

悲しくて…

怒りが溢れてきて

どこに…

誰に…

ぶつければいいか分からない

だから泣いてるんだ…



泣き喚く私





『月曜から塾へ行け。これは命令だ。』





私は聞こえないフリをした




またなにかが欠落した気がした……






止まらない涙は

私を悪夢から救ってはくれない










翌日になっても

イライラは治まらない



ポジティブ思考はどこかに落としてきたのか……

ネガティブ思考だけを拾ってきただけなのか……


悪循環が私を取り巻いた





私には太陽がなければ

ダメなのだ

月は太陽があってこそ

輝ける

その存在の重さに

私は潰れそうだ




塾へは行きたかった

でもそれは昔の話





私は気晴らしに散歩へ行った

広場へ行き

図書館へ行き

紅葉公園でブランコに乗った

空は薄い雲が流れていた



どこかへ飛んでいきたい

鳩は餌をもらい

どこかへ飛んでいった

1匹残った鳩は

私に寄ってきた

真っ白な羽で

キョロキョロと見回し

隣のブランコに乗った



異様な光景

まさか、鳩に好かれるなんて…





『ねえ、私を導いてよ。』



つぶやいてみたが

鳩は知らん顔



私は自分の言動に

失笑した





すると鳩は飛び上がり

どこかへ飛んでいった






もし、あの鳩が






私と話すことが出来たならきっと






ついてこい。







と言っただろう……




幼少期編 第22話 別れ

ソファーに寝転がり

ボーッ………

と庭を見ていると

いつのまにか

雨がふり出した

通り雨も

時と場所を選ぶようだ



雨は

私の代わりに泣いてくれてるように思えた

脱け殻の私の代わりに…












翌日

誰もいない家で

起床した私は

独りの心地よさを感じた

他人に汚染されない

自分の空間がとても広くて

このまま

誰も帰ってこなければいい

とすら思った







学校では

夏休みの話題で持ちきりだった

私も

初めて夏休みが

待ち遠しかった








下校時間になり

私は広場へ急いだ

いつもの場所に

萌はいなかった



私は、なにかあったのかと思い

萌の家まで行き

チャイムを鳴らし

ドアを叩いて

応答を待ったが

なにも返事はなかった



仕方なく広場で待つことにした

陽が傾きはじめても

誰も来なかった



7時を過ぎた頃に

私はその場から離れ

家へ帰った



明かりの付いていない家に入り

今朝、独りの心地よさは

欠片も残っていなかった



誰かがいるから

独りでも居られるんだ

淋しくないと思えるんだ


身に染みて感じた







それから毎日

公園と萌の家を往復した


でも、萌が来ることはなかった









週末に萌の家を訪れた



チャイムを鳴らしても

反応はなかった




『どちらさま?』



振り返ると


萌の母親がいた


『萌さんは?』



『萌はいないわ。もうあなたとは逢いたくないって。だから、もううちには来ないで。』



だるそうに言った



『………どぉしてですか?』



震える声



『理由なんてないわ。』



そう言って家に入っていった



取り残された私は

どぉしようもない悲しみ

に包まれた

これを人は絶望というのでしょう





歩きだす私は目的もなく

広場の萌の指定席で

座って考えた

理由を探したが見当たらない

こんなに突然……

消えていくものが多すぎる






ただ、ここにいれば

いつか逢える気がした

そう、思いたかった









家に帰ると明かりがついていた

独りでない家だけど

独りの方がマシだと

感じた





『永遠ちゃ~ん音符おかえりなさい音符



病院から帰ってきた彼女

その態度の変貌は

他に誰かがいる

事を示していた





リビングにはケーキがあった



『お父様が退院祝いって買ってきてくださったの音符



いちごのホールケーキ

家にケーキがあるなんて

きっと初めてだ

私のためでもなく

なぜ、他人のためのケーキが用意されているのか…









悲しみが憎しみに








変わり始める……