side N







ダム、ダム、ダム、




高校から始めたバスケット。




その楽しさを教えてくれたのは、

茂木である。




中学までは喧嘩ばっかりで、

好んで人を叩いていたわけではないけど、

良いことなんて一つもありはしない。




もし茂木にバスケに誘われてなかったら、

きっと今も俺はろくでもない奴だろう。




もし茂木という目標がなかったら、

バスケの上達もなかったし、

プロになりたいなんて夢も見れなかった。




繰り返しのこの人生の始まりが17才なのは、

そこまでの時間は

俺にとって必然なことで、

変えようがないからなのかもしれない。




そう考えれば、

茂木は重要で大切な友人である。




彼がまだゆうちゃんを好きなことを、

話をしなくても分かってしまうくらいには

俺は彼を知っている。




そして、

彼と彼女の歯車が噛み合わないのは、

間に俺が入り込んでるからに他ならなくて。




俺だけが知ってる彼と彼女の物語を

先に進めるということは、


俺自身が、

彼か、彼女か、を選ぶということでもある。




もはや、彼らの人生に干渉しまくっている現状。 



これ以上、
何かを偽って誤魔化して、
目を背けていてはいけないと悟った。



じゃあ、

俺は、どうするのか?




ダムッ




『…ふぅ』




このシュートが決まったら…。




得意なフリースロー。




あまり外すことのないそれで、

自分の意思決定をしようと思ったのは、


弱い自分を

後押しする理由が欲しかっただけだ。




でも。




ハーフラインから投げたボールが

思うように輪の中に入って。




その直後、突然現れたゆうちゃん。




それに、


"運命"を感じたなんて言ったら、笑われるだろうか?







バタン。



バタバタ!



ガチャ、



キュ、ザー!!!




ゆうちゃんのおかげで、

大雨に打たれる前に帰宅できた俺は、

急いで汗を流すべくお風呂場へ。




熱いシャワーを頭のてっぺんから浴びる。




(そういえば、)




『なんで公園にいるって分かったんだろ?』




走ってくる、としか伝えてないのにな。




理由は後で聞いてみるとして。




拓けているとはいっても、

夕方以降は人目も少ない公園で、

安全な場所ではない。




気をつけてって、しっかり言っておこう、

なんて考えながら、俺は急いで入浴を済まる。




カチッ、ガー!!!




Tシャツと短パンを着れば、

彼女の家に行く準備は整うが。




携帯に届いたメールを見て、

すぐに行こうと思ったものの。




髪の毛が濡れたままだと、

ゆうちゃんに叱られるなと思い直して

ドライヤー片手に洗面所に立つ。




鏡の中の自分と目線を合わせ、見つめ合う。




最近シルバーアッシュにした髪の毛は

だいぶ痛んでしまった様子。




しかしながら、

髪色を変えたり姿形を繕っても、

そこにいるのは、

間違いなく、17才の自分。




四度の人生で培った精神年齢も、

自分が思っていたよりも幼く感じて。




『成長しないなぁ』




小さく呟いた言葉に、苦笑いが溢れる。




人生を何度繰り返しても、

同じような生活を心がけても、

些細なことで世界は変化を見せる。




その度に新たな経験をして、

その度に、新たな自分と遭遇している気分だ。




今回のように、

人との付き合い方を変えれば、

新発見の連続で。




生きていく上で、

誰の人生にも干渉せずになんてできないし、


ましてや、

そこに強い想いがあれば尚更のこと。




あとは、

物語を書き換えてやるくらいの

覚悟を持てるかどうかなんだろう。




ガー…カチ。




『…、よし、行くか』




バタバタッ、バタン! ガチャ。




ステーキよりも、

いつだって目当てはゆうちゃん。




ピョン!と玄関に鍵を掛け飛び出した俺。




家の外は、

さっきよりも激しくジャンジャカと降っている雨。




時折、ピカッ稲光が走って、

遅れてゴロゴロと雷の音が聞こえてくる。




軒先を伝う雨が風に流されて、

ちょっと片側が濡れるけれど、気にはしない。




テクテクと数十歩も歩かないうちに

たどり着く目的の玄関。




『…ふう。』




そこで一旦、大きく深呼吸して。




俺はチャイムを押す緊張感を、

久しぶりに感じていた。




















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