side Y

 

 

 

 

 

 

 

 

『ゆうちゃんが、寂しいとき、そばにいる。

 

 ゆうちゃんが、苦しいとき、そばにいたい。

 

 代わりでいいから、

 

 私じゃ、駄目かな?』

 

 

 

苦しくて、辛い。

 

 

全然、嬉しくない。

 

 

誰かの代わりでもいい、


その言葉が私の琴線に触れる。

 

 

 

「…なんで、なんでっ

 

 そういうこと言うの?」
 

 

 

『ゆう、ちゃん?』

 

 

 

優しいなぁちゃんの言葉を

 

素直に受け取れない自分が、どうしても惨め。

 



「そう言って、

 なぁちゃんの一番ができたら

 そっちに行っちゃうんでしょ?


 私のこと、一番とか、特別って言っても、

 彼氏作って、幸せになるんでしょ?


 なぁちゃんは嘘つき、だよ」




『、嘘つき、』




「そんな優しさはいらないの、

 そんなの、欲しくないっ」




ただの八つ当たり。




傷付けると分かってるのに、

言葉を止めることができない。




『ゆうちゃん、、ごめん』




「謝らないでよっ」




『ごめんね、ゆうちゃん』




それでも、

謝ってくれるなぁちゃん。



 

「、


 なぁちゃんが楽しい時、幸せな時、

 私は寂しいし、苦しいの。

 

 なぁちゃんが一番想う人に嫉妬して、

 友達として、

 なぁちゃんの幸せを願えない自分が

 嫌なのっ

 

 なぁちゃんに

 誰かの代わりになんてなってほしくないっ

 

 わたしは、

 なぁちゃんに、私はっ」

 

 

 

『私に?』


 


今更、とは思っても、

それ以上は、口に出来ない。

 

 

 

「、っ、、何でもないっ」

 

 

 

スクッ



 

立ち上がろうとする私。

 

 

 

ガシッ

 

 

 

それを止めるなぁちゃん。

 

 

 

ギュッ

 

 

 

後ろから抱き締められて、

苦しくて涙が止まらない。

 

 

 

「、離して、、」

 

 

 

『嫌だ。』

 

 

 

「嫌いに、なる、よ」

 

 

 

『ずっと嫌われてると思ってた。』

 

 

 

「、」

 

 

 

『ねぇ、こっち向いてよ?

 こっち向いてお話しよ??』

 

 

 

グイッ

 

 

 

「、やだ」

 

 

 

グイグイッ

 

 

 

『嫌だ、こっち向いて』

 

 

 

幾度か、無謀なやり取りを繰り返す。




自分の家なのに、

この場から逃げ出したい。




だけど、

力は入ってないなぁちゃんの腕を

振り払うことなんて、もっと出来ない。


 

 

 『ゆうちゃん…

 ゆうちゃんの気持ち、ちゃんと教えて』




「言いたくない、、言えないっ、」




ポロポロ、涙が落ちて、


それと一緒に感情が溢れいく。




『じゃあ、私の気持ち、聞いて?』




「やだ、、」




『大丈夫、だから』




「大丈夫、じゃない、よ」




『大丈夫。もう間違えない、から。ね?』




ギュッと私をさらに抱き締めて、

諭すように私を宥める。




触れたあったところから、

なぁちゃんの少し早い鼓動を感じる。




そして、

なぁちゃんはクルリと私の前に、自分の体を回す。

 



「っ、うぅ、やだ」




『聞いて?

 私にとって、ゆうちゃんは特別だよ?』




そう言って、私の涙を拭う。




「うそ、だっ」




『私にとって、ゆうちゃんは誰よりも一番』




そう言って、私の頬を撫でる。




「ちがう、」




『違わない』




そう言って、コツンと額を私に寄せる。




二人で、私の涙が落ちていくのを見下ろして。




『特別で、一番で、

 失いたくなくて、

 嫌われなくて、

 ずっと、ずっと隣に居れる方法を探してた。


 だから、あの時は、

 友達として、親友として、

 隣に居ようって思ってた。』




「私は、私、は、

 なぁちゃんと友達では居られない、の」




『うん。私も。』




「っ、」




『私、ゆうちゃんが好き。


 本当は誰かの代わりはしたくない。


 ゆうちゃんに私だけを見て、

 私だけを愛してほしい。


 友達じゃなくて、恋人になりたい。』




「…うそだ、」




『嘘じゃない。』




「…ホントに?」




『本当に。』




なぁちゃんは凄く優しく微笑むと、

その頬を静かに涙が伝った。




『ゆうちゃんが安心できるまで、

 何度だって伝える。


 だから、私にゆうちゃんの気持ち教えてよ』




私の欲しかったものを

やっぱり全部なぁちゃんは持っていて。




私はそれをなぁちゃんから与えて欲しかった。




でも、欲しいとは言っちゃいけないと。




我慢して、諦めて、忘れようと何度も思った。




だから、


こんな日が来るとは思っていなかったし、


もしかしたら夢かもしれない。




「私は、、ずっと、ずっと、」




『うん』




「、、、なぁちゃんのこと、愛してる」




『っ、私も、ゆうちゃんを愛してるよ?』




ギュッ!




痛いくらい抱きしめられて、



怖いくらい暖かくて。




『もう、絶対離れない、よ?』




「うん、離さない」




『何処かに行かないで、ね?』




「うん、どこにも、行かない」




でも、夢なら夢でいい。



一生醒めない夢の中にいればいい。




「なぁちゃん、」




『ん、なぁに、』




「なぁちゃんを全部、ちょうだい」




『いいよ、全部あげる』




微笑んだなぁちゃんから落とされる

初めての口付け。




涙の味と、遠くにチョコミント。




それが何だか現実的で。




凄く幸せな何かが、私の中を満たしていった。




















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