side N









「なぁ、起きて、着いたよ」




『ん、はい』




到着したのは24時間スーパー。




そこでタクシーを降りた私達。




少し寝たくらいじゃ酔いは覚めることもなく、

私はフラフラと

ゆうちゃんの腕を支えについていく。




最近出来たとは聞いていた大型店舗。




そこで、お惣菜やらパンやら飲み物を購入する。




「じゃあ、行こう?」




『どこに行くの??』




「ふふ、すぐ近く。歩ける??」




『うん、大丈夫』




何処かを目指して歩くゆうちゃんに

ノソノソとついて行く。




(〇〇町って、大学病院の近くだなぁ)




ぼんやり考えながら、歩くこと数分。




「はい、到着ー」




『ん??』




目の前には綺麗なマンション。




「ほら、行くよー?」




よく分からない状況で、疑問だらけ。




エレベーターに乗って、


とある一室の前に行くと、


当然のように鍵を開けるゆうちゃん。




ガチャガチャ。




「どうぞ??」




『え、入るの?』




「心配しなくて大丈夫!笑

 ほら、入って?」




『お邪魔、しまーす』




パタパタ…




恐る恐る中へ侵入する私は

ゆうちゃんの手をギュッと握っている。





中に入ると、段ボールが数個あるだけで、

カーテンもないし、家具もない部屋。




『ここ、なに??』




「本当は昼間に連れてこようと思ってたんだけど」




『…うん』




「なぁちゃん。


 ここで、私と暮らさない?」




『ってことは、ゆうちゃんの家!?』




「うん、仕事も落ち着いてきたし、

 実家出て、なぁちゃんと暮らしたいなって」




『いいの?私、ここに来て』




「もちろん!」




『嬉しい!、嬉しいけど、私全然知らなかった』




「黙っててごめんね?」




不動産契約をサプライズにする辺りが

ゆうちゃんの読めないところ。




でも、

前々から準備してくれてたことは間違いなくて、

驚きよりも遥かに嬉しさが勝る。




「ここなら新しい職場も近いし、

 帰りたいと思ったら帰って来れるでしょ?


 私、重いかな?苦笑」




ガバッ!!ギュッ!!!




『凄く嬉しい。』




「ふふ、良かったぁ」




4月からの不安は、

少しでもゆうちゃんと居たいという我儘なのに。




それを物理的にも解決させようとする彼女に、

私は一生頭が上がらないだろう。




『でも、ゆうちゃんの荷物これだけ??』




「家具とかはなぁちゃんと決めようと思って。

 実家の荷物だけ

 とりあえず送ってもらったんだけど」




『にしても、少ないよね?』




「ん。ほとんど、なぁちゃんのお家にあるんだもん」




『へへ、そっか、そうだね』




考えてみれば、

付き合い始めてから今日に至るまで、

生活をほぼ共にしてきた。




"会わない"日はあっても、


"会いたくない"日は一度もなくて。


"会えない"日はたまらなく寂しくて。




「なぁちゃん、

 これからも一緒にいてください」




『うん、絶対ずっとそばにいます』




ギュッと抱きしめ合って、


コツンとおでこを寄せる。




『ねぇ、ゆうちゃん?』




「なぁに??」




『もう、秘密無いよね?』




「ふふふ」




『ぇ゛…あるの?』




「心配??」




『ちょっとだけ』




「大丈夫。

 期間限定の秘密だから。」




『?』




「なぁちゃんのね、

 とびっきりの笑顔を見るための秘密なの」




『じゃあ、良い秘密なんだ??』




「そうだよ?それでも心配?」




『ううん、じゃあ大丈夫』




「あ、でも、なぁちゃんは駄目だよ?」




『えぇ、なんで??』




「なぁちゃんは私のものだから?」




まるでジャイアン。




でも、そういうゆうちゃんが大好き。




『はい、私は正直者でいます』




「宜しい 笑」




がらんとした何も無い部屋なのに、

ゆうちゃんと居れば、あたたかい。




「よし、ご飯食べたら、新居デートしよ??」




『うんっ!』






ゆうちゃんのことは私が、


私のことはゆうちゃんが、


お互いのことはお互いだけが、


分かっていればいい。




誰にも"言わない"秘密は、私達の愛の形。




そして、


貴方が私のために抱える期間限定の秘密は


私だけが喜ぶ愛の証に違いない。










ワー!ワー!!




"なぁちゃん!写真一緒に撮ろうよ!"




『いいよー撮ろう?』




キャーキャー!




"奈々さん!綺麗です!"




『ありがとー!』




ガヤガヤ!ワイワイ!




ジー。




…?




キョロキョロ。




…!!




パタパタッ!!




『ゆうちゃん!!!』




「ありゃ、見つかっちゃった!笑」




『来れないと思ってた!』




「"秘密"の、サプライズ!」




『来てくれて、凄く嬉し、いっ』




「なぁちゃん、良い笑顔だね?」




『へへっ』




「六年間、お疲れ様。


 卒業おめでとう!」




『うんっ/// ありがとう!


 ゆうちゃん!』




「なぁに?」




ギュッ!




『心の底から、愛してます』




ギュウ。




「私も、愛してる」





























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