side Y








ゴソ、、モゾ、、、




「ん、、」




真っ暗な寝室。




喉の渇きを覚えて、体を起こす。




ギシ。




ベッドも、体も、軋んでる。




(アタタ…)




「運動不足…笑」




久しぶりの交わりは、激しすぎたみたい。




『スー…スー…』




私の腰に手を回して、熟睡してるなぁちゃん。




(起こしても、起きないだろうな)




そう思いつつ、

それでも起こさないようにベッドを抜け出す。




…、パタパタ。




「まぶし、」




夕食後のままのリビング。




灯っぱなしの電気に目を細めつつ、

冷蔵庫の前へ。




ガチャ、パタン。




パキパキ、、、ゴクゴク…。




「…ふぅ。」




冷たい水で喉を潤せば、

熱を持った体が冷えていく。




時計を見れば、まだ夜も明けぬ午前3時。




「まだ、3時なんだ…」




無我夢中で求め合って、

何時間もしてたように思っていた体感とは違って、

ちょっとびっくり。




でも、心が満ち足りているからか、

ちょっと得した気持ちで、頬を緩める。




「ふふ、…とりあえず、片付けよ」




食べきれなかったものは、

すでに冷蔵庫に入れてある。




けれど、目を覚ましたなぁちゃんが

不安になったあの瞬間を

思い出すことがないように…




散らかったテーブルの上を綺麗にして、

食器を洗って。




なぁちゃんが勿体ないと言ってくれた

ケーキのプレートには、ラップを優しくかけた。




ザーー、キュ。




フキフキ。




「はい、完了」




程なくして終わった片付け。




区切りのようにパンパンと軽く手を叩く。




「朝ご飯も準備してお、、んーやめたっ」




朝ご飯?昼ご飯?は

なぁちゃんが大学に行く行かない関係なく、

起きて二人で決めようと思う。




それよりもこの間に彼女が起きて、

また不安な気持ちになっちゃう方が少し心配。




いくら愛し合ったと言ったって、

それで全てが解消されるわけじゃないわけで。




マイナス思考を自身に向けがちな彼女の

行動予測も、私には大切な愛し方。




「うん、じゃあ、寝ましょ」




私は誰に言うでもなく呟いて、


キッチンとリビングの電気を落とし、

扉を静かに閉めた。







パタパタ、、カチャ、




そー…




(良かった、まだ寝てる)




なぁちゃんは

広いベッドの真ん中で小さく丸くなってる。




起きれてればイヌみたいなのに、

寝てるときはネコみたい。




なぁちゃんなら、

イヌでも、ネコでも、かわいい。




コトン。




私は頬を緩めながらベッドサイドに

ペットボトルを置く。




ゴソゴソ、




そして、出た時のように、

静かに静かにベッドの中に入る…。




モゾモゾッ、ギュッ。




『ゆうちゃ、、どこ、行ってたの、?』




(あちゃ、起こした?起きてた?)




少し掠れた声で

私の体を捕まえると手足を絡めて抱き付いてくる。




「ごめん、起こしちゃった?

 お水飲みに行ってた。なぁちゃんも飲む?」




コクン、と頷くなぁちゃんは、

どこか夢見心地で、ぼんやりしてる。




私は寝ぼけてるなぁちゃんを軽く抱き起こすと

ペットボトルを支えて飲ましてあげる。




布団から覗く、何も纏ってない華奢な体。




私のなぁちゃんだという印があちこちに見える。




…ゴクン。




『ありがと、』




「っ/// いいえー笑

 まだ寝るでしょ?寝よう?」




『…うん、』




さわさわ、、




『ゆーちゃん?』




私のパジャマを撫でて、首を傾げるなぁちゃん。




「ん?どうしたの?」




『パジャマ、冷たい、体、冷えてる』




カタコトでそう言うと、

いそいそと私のパジャマのジッパーを下ろしてくる。




「え、脱ぐの?//」




『ぬぐの』




「っはい//」




黙々と私をハダカにしたなぁちゃんは

ニコォと微笑んで、私共々布団の中へ。




『なぁ、が暖める』




「…ふふ、熱くなっちゃうかも?」




『大歓迎』




(あぁ、かわいい)




「ホントに、大学行けなくなっちゃうよ?」




『起きたら、おんちゃんに連絡しとく』




「それって、バレバレじゃない??」




『そうだけど、バレても良いもん』




「ふふ、そっか」




『困る?』




「困らないよ。大歓迎」




『へへへっ』




溶けそうな笑顔を浮かべるなぁちゃんを見て、

"大丈夫な私達"に戻れた気がする。




心も体も、私のもの。




そう言って良いということ、


そう言って喜んでくれること、


それが私にとっても、幸せを感じる形。




「なぁ、?」




『なぁに?ゆうちゃん』




「いっぱい暖めて?」




『うんっ。じゃあ、ゆうちゃん?』




「はい、なんでしょう?笑」




『いっぱい、愛して?』




「ふふ、、へい、喜んで」




布団を被って、クスクスと笑い合う。




ムードというものはないかもしれない。




でも、

顔を近づけて、引き寄せ合う腕の強さは、

私達だけが分かればいい。




灯された愛の火種に

どちらともなく燃料を投入していく。




「なぁ、」




『ゆうちゃ、』




久しぶりの熱い夜は、熱い朝に変わりそうだ。




それもそれで幸せでしかないと思いながら、

私達はまたベッドの海に漕ぎ出した。























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