side N








カリカリ。




カリカリ。




カリカリ。







"はい。時間です。ペンを置いてください。"












『、はぁ、、終わった…』




ポンポン。




お「お疲れー」




『おんちゃん、お疲れ様』




お「やり切ったね…苦笑」




『なんかフワフワしてるよ 苦笑』




6年間の頂を登り切ったといえる試験終了の合図。




やることはやった。




確信はないけど、自信はある。




ただ今は

達成感というより、出涸らしになった気分で。




干からびたミミズのよう。




試験会場から出ていく人は、

晴れやかな顔、苦しそうな顔、皆それぞれ。




私とおんちゃんも言葉少なめに

そこを離れる。




『はぁー、ベッドで寝たい』




お「同感…今日は絶対お風呂に浸かる」




一昨日は大学に泊まってたものの、

昨日はゆうちゃんの待つ家に帰った私。




おんちゃんは連泊したらしいから、

シャワー生活を脱却するみたいだ。




私も私で、

試験前の緊張感でゆっくり出来たとは言えないから、

早く帰って心落ち着けたいところ。




お「そういえば今日の夕方、

  学部の皆で打ち上げ行くらしいよ??」




『皆、元気だねー』




お「自己採点前の現実逃避ともいえる」




『言い方っ笑

 で、おんちゃん、行くの??』




お「私はなぁちゃんが行かないから行かない」




『アハハッ、ご名答!』




お「飲み会パスって連絡しとくね?」




『お願いしまーす。』




飲み会に行っても結局試験の話になるだろう。




おんちゃんはともかく、

ここんところずっと顔を合わせてた面子と

今日も一緒なんて、遠慮する他選択肢はない。




お「明日大学昼から?」




『うん、昼過ぎかなぁ。

 起きれる自信がない』




お「笑


  ぁっ!」




『ん? お。』




それまでのテンションから

一気に温度の上がった、おんちゃんの声。




その視線の先には方には、バス停がある。




そこにはスマホに視線を落としてる、

茂木さんの姿。




『お迎えじゃん??』




お「家で待ってるって言ってたのに// 」




『ふふっ、良かったねぇ!

 私、電車だから、、じゃあここで!』




お「あ、うん!じゃあ、また明日!」




『バイバイ♪』




居ても立っても居られないそんな感じで、

茂木さんの方に向けて走っていくおんちゃん。




それに気付いて顔を上げた茂木さんが、

笑顔で彼女を出迎える。




背景にお花畑が見えるような微笑ましい光景だ。




(ラブラブで良かった良かった)




この前おんちゃんが溢した言葉に

少し心配してた分、

仲良くしてるところが見れてホッとした。




『私も早く帰ろっ』




こちらに手を振ってくれる二人に

笑顔を返して、

私は駅へと足を向けた。






『あ、連絡連絡』




電源の切れたスマホを取り出して、

スイッチオン。




タ、タ、タッ




"終わりました!今から帰ります!"




文字を打った途端につく "既読"




『へへっ』




間違いなく待っててくれたんだろうと分かって

瞬時に頬を緩める。




今日の朝、

緊張と不安でガチガチだった私に、


チュッと頬に口付けて、

大丈夫のおまじないをくれたゆうちゃん。



最近は

眠ってるゆうちゃんにキスすることはあっても、

起きてるゆうちゃんにされるなんて久々で。




私には効き目抜群のその魔法で、

最終日を無事に乗り越えられたと思う。




(ホントゆうちゃんは私の女神様だ)




ブブッ




"今どこ???"




『え、今、えっと、』




ブブブブッ




『わっ!、もしもしっ!』




「なぁちゃん!もう電車乗っちゃった?!」




『ううん、あと、5分くらい?で

 〇〇駅につくかな?』




「分かった!

 急いで行くから、改札で待ってて!」




プチッ




『ぇ、ぁ、うん?って、切れちゃった…』




こういう慌ただしいゆうちゃんは珍しい。




朝の彼女といい、なんだろう?




不思議な気持ちになりながらも、

テクテクと歩いて、改札の前に立つ。




試験終わりでぽけーっとした頭。




ゆうちゃんも茂木さんのように

迎えに来てくれたのかな?




そんなことを考えてると…




"ねぇねぇ"




『…ぇっ、私ですか?』




男性に声を掛けられて、一気に警戒モード。




"そう、君って村山さんの友達でしょ??

  俺のこと、覚えてない?

  去年イベントで会ったんだけど"




『、、、イベント?』




声を掛けられた理由は分からないけど、

一応、記憶の引き出しを開けて思い出してみる。




『あ、あのときの、』




あれは確か、

ゆうちゃんが初めて企画から参加したイベント。




皆で見に行こうとしてたけど、

ちょうどその頃、

私は病院研修でどうしても行けなくて。




それでも、

たまたま出来た時間で

少しでも頑張ってるとこが見れたら、

なんて一人で行ってみたときのこと。




そこで対応してくれたのが彼で、

ゆうちゃんを呼ぼうとしてくれたんだっけ。




だけど、

私は忙しくしてるゆうちゃんに悪いからって

結局ゆうちゃんの友人と名乗っただけで

帰ったんだよね。




"思い出してくれた??

 村山さんの同僚の△△です!"




…それにしても、

顔を合わしたのは二度目なのに、

なんで声を掛けられたんだろう?




『えっと、はい、こんにちは?』




"君って、村山さんと結構仲良い??"




『…はぁ。まぁ…』




"村山さんの彼氏、とかも知ってる??"




『え、、?いや、知ってても教えないですよ?』




"やっぱ居るのかー。

 俺さ、村山さんのことちょっと狙ってんだけど

 協力してくれない??"




『…しないです』




"そこを何とかさっ!

 てか、君の名前教えてよ!

 ついでにライン交換しない?"




『しないです。

 あの、もう良いですか?』




(なんなんだ、この人)




"君も可愛いし、良かったら合コンとかどう??"




(しつこい)




ゆうちゃんの職場の人だし、

あまり邪険にもできなくて困る。




というか、

ここにゆうちゃんが来たら余計面倒なのでは?




『あの、待ち合わせしてるんで、失礼します。』




ガシッ




"え、ちょっと待ってよ。

 俺、怪しいやつじゃないんで、大丈夫だよ?"




掴まれた腕。




(全然怪しいやつなんですけど。)




『離してもらえませんか?』




"ぁっ、ごめん"




「なぁちゃん!」




しかしながら、当然、

タイミングよく、

ゆうちゃんが現れることになるわけで…

























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