side Y








ブルルッ! ブブーンッ…!




「〜♪ 真っ赤なお鼻のー♪」




陽気に唄いながら、ハンドルを握って、

賑やかな街中を通り過ぎていく。




冬の夕暮れだけれども、

まだ空はオレンジ色。




イルミネーションの輝きが増す前の帰宅が

とても久しぶりだからか新鮮に感じて、

ウキウキ具合を増長させてるみたい。




チカ、チカ、




ブーン…。




信号待ちで停まれば、

街行く人達の顔がキラキラ眩しく見えて、

今日が特別な1日なんだって改めて思う。




そんな私の目の前を

仲良く手を繋いで学生服のカップルが

横断歩道を渡っていく。




「放課後デートかぁー」




(あれは、〇〇高校だね)




職業病を発揮しながらも、

制服に触発されて思い出したのは去年の今日。




まだ学生服に身を包んでいたあの子との

初めてのクリスマス。




生徒と教師の、秘密の関係だった私達。




外出して楽しもうなんて

あの時はきっと二人ともが考えもしてなかった。




なぁちゃんは、

あまりイベントごとに執着がないと言ってたし、

私だけが、はしゃいでも大人気ないかな?

とかも思ってて。




それでも、

やっぱり世の中を騒がす一大イベントだからと

小さなケーキを買い占めて帰った私。




そうしたら、

なぁちゃんもショートケーキを

沢山買ってきてたんだよね。




結局ホールケーキになっちゃったねって

笑い合ったっけ?




「ふふっ、

 一年ってあっという間だなぁ」




私は思い出し笑いに頬を緩ませながら、

しみじみと呟く。




今年も、お家になっちゃったけど、

来年こそは

二人でクリスマスデートしたい。




イルミネーションをキラキラした目で見つめる

なぁちゃんを想像してみる。




年下なのに大人な彼女も、

きっと可愛くはしゃいでくれるに違いない。




「あ、

 イルミネーションなら、

 来年じゃなくても良いじゃんっ」




流し見した雑誌にあったデートスポットは

車で見にいくイルミネーションの紹介で。




「帰ったら、誘ってみよっ」




絶対、行く!って二つ返事のなぁちゃんの顔を

思い浮かべたら、

より一層早く会いたくなっちゃった。




「さっ!まずは早く帰らなくちゃ!」




青に変わった信号機を確認して

アクセルを優しく踏み込んだ。









ガチャガチャッ!




なぁちゃんが卒業して以降も、

私達の関係に大きな変化はない。




ガチャッ!!




「ただいまー!!」




朝、寝癖がぴょんぴょんと跳ねた頭で見送られ、




「……あれ??」




夜は待ってましたとばかりに

鍵の音を聞きつけて

ワンコみたいに走ってくる、はずなのに?




今日は驚かせたくて

今から帰るって連絡してないから?




(靴は、あるし)




(出掛ける、連絡も入ってないし)




ポケットのスマホを確認しながら、

いそいそと靴を脱いで、廊下を進む。




カチャッ




「なぁー??



 ただい、わぁっスゴッ!」




リビングで私を出迎えてくれたのは、

クリスマスカラーを纏った部屋中の装飾。




朝とはまるっきり違う部屋の様子に、

私はびっくり仰天だ。




部屋の明かりが点いていない分、

ツリーのライトが本領発揮していて、とても綺麗。




「めっちゃ…準備してくれてる」




狭い部屋とはいえ、

これを一人で準備するのは大変だっただろう。




そんなサプライズに感嘆していると、



モゾ。



っとソファのクマが動いた。


















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