side Y








唇の柔らかさとぬくもり、


そして、タバコの気配。




なぁちゃんとの、"初めて"のキスは

緊張しててあまり覚えていないけれど。




人生で幾度目かの、

なぁちゃんとの久しぶりの、

この口付けは、

しっかりと脳裏に焼き付くよう。




ただ唇を合わせている数十秒が、

なぁちゃんへの愛しさを膨らませ、



ただそれだけのことで、

私にとってどれほど、

なぁちゃんが"特別"なのか自覚できる。




…ッ




名残惜しむように、

小さなリップ音と共に、ゆっくりと離れる顔。




私達は互いに焦点が合う程度に離れて、

コツンと額を寄せ合う。




『ヤバい、心臓が飛び出そう…へへへっ』




「ふふ///」




クシャクシャと顔を縮めて

はにかむなぁちゃんが可愛い。




私は私で、

照れくさくて、恥ずかしくて、でも、嬉しくて。




そんな複雑な感情に、顔が熱い。




『ゆうちゃん、顔真っ赤 笑』




「うぅ//」




『可愛いーね??』




目を細めて、

私の頬に触れるなぁちゃんは、




『ゆうちゃん、大好き』




改めて、

噛み締めるように、愛の言葉を囁く。




『ずっと、ずっと、大好きだよ』




真っ直ぐな眼差しに、温かい手。




そこから伝わってくるものは、

今からの気持ちだけ、じゃなくて、

蓄積された愛情のように感じられた。




これからもずっと、の意味と

"今まで"ずっと、の想いが、

私に注がれているみたいで。




痛いほど伝わってくる気持ちに

ギュッと心を鷲掴みにされる私。




遠回りした私達だからこそ、

今度は素直に想いを伝え合っていくべきだよね?




「私も、大好きっ」




『へへっ、嬉しっ

 ゆうちゃん、』




私の言葉に

本当に嬉しそうな声を降らせながら

なぁちゃんがパッと腕を開く。




私はそこに

躊躇うことなくポスっと収まって。




お互いの鼓動が

同じリズムを刻む音を聞きながら

しばらくの間、幸せの余韻を噛み締めていた。







『へへっ』




「ふふっ」




抱き合って、微笑み合って、

またギュッと抱き締めて。




ソファの上で、

ただただ、イチャつく私達。




「あ、なぁちゃん、何か飲む?

 珈琲もあるよ?」




飲み物のひとつも出してなかったと思い出して

問いかけると




『んー、ゆうちゃん、喉乾いた??』




「ううん、特には」




『じゃあ、いらなーい』




私の顔を覗き込んで

離す気はないよ?というように、

イタズラな笑みを浮かべるなぁちゃん。




「ふふっじゃあ、いっか?」




『うん。ありがとね?』




「うん?」




『珈琲、私の為に用意してくれてた?』




「ふふ、そーだよ?」




『へへ、ありがとっ、嬉しい』

 



なぁちゃんは

私を後ろから抱っこする格好で

ギュッと抱き締めて、

肩口にグリグリと頭を寄せる。




(喜び方が大型犬なんだよね、笑)




「ぁ、、。」




『ん?』




そんな穏やかな時間の中で

目に止まったのは、彼女の指輪。




「ねぇ、これって?」




『あぁ、これ、ね苦笑』




なぁちゃんはちょっと苦笑いを溢して、

スッとそれを指から抜くと、

私の手のひらにポンっと置いた。




「ん?なに??」




『内側見て?』




言われた通り、その指輪を見れば、

中には刻印が。




「、り、ぶ、ふぉー、ゆいり?」




『、クスクス』




「むぅ」




『Live for Yuiri。

 ゆうちゃんのために生きるって意味だよ』




「っ///


 でも、これ、ペアリングだよね?」




『相方は私のお家でお留守番してる』




「それにも刻印がある?」




『あるよ?

 Nana to Yuiriってね』




「いつ、、いつ作ったの??」




『フフッ、それは内緒にしときたいなぁ』




ちょっと困ったように笑うから、

きっと、

まだ付き合ってた時なんだってすぐ分かる。




(ずーっと私を想ってくれてたんだ…)




嬉しくて、鼻の奥がツンとして、

思わず溢れそうになる涙。




『え、なんで、泣くの!?』




そんな私の様子に、

途端にワタワタと慌てるなぁちゃん。




「んーん、ごめん、、その嬉しくて」




『うん?でも、泣かないで?』




「、っ、うん。

 ねぇ、なぁちゃん、

 この相方さん、私もらってもいい?」




『、もらってくれるの??

 でもさ、せっかくなら新しいの作らない?』




「ううん、それがほしい。

 で、新しいのも、一緒に作ろ?」




少しばかり欲張りな私の提案。




なぁちゃんは少し驚きながらも、




『じゃあ、そうしよっか!』




やっぱり変わらず私の望み通りに、

優しい声色でそう言って微笑んでくれる。




(凄く大きな愛情だ)




これまでも、

いつ何時も、

私はこの人に愛されてた。




ううん、この先もきっと、愛される。




未来のことなのに、

確信してしまえるほどの気持ちを

ようやく気付けた私。




そんな大きな愛情に対して

どうやって返したらいいかは分からないけど。




なぁちゃんが今まで

"私を想って生きていてくれた"のなら…




ずっとその隣を空けていてくれたのなら…




「なぁちゃん、私もね?


 なぁちゃんのために、生きていきたい。


 これまでの分も、

 いっぱい楽しいことして

 いっぱい笑い合って、一緒に幸せになりたい。」




素直な想いを、愛しさを、

そして、感謝を伝え続けていこう。




「今まで、大切にしてくれてありがとう。

 これからも末永く宜しくお願いします。」




『ゆうちゃん…、

 うんっこちらこそ宜しくお願いします』




改めて、ペコリと挨拶をし合った私達。




頭を同時に上げて、


それから、明るい未来に向けて笑い合った。


























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