ザワザワ。



ザワザワ。




大学内の休憩スペース。


多くの学生達がレポートをしたり、
おしゃべりをしたり、
それぞれの過ごし方をしている。


その一角で…。





pururu…!



茂「もしもーし!
  おんつぁん、どしたー??」


お「ぶーちゃん、
  今日地球が滅亡するかもしれない。」


茂「はい!?どうされた!?」


お「天変地異の前触れだよ、これは。」


茂「おーい、意味わかんない笑笑」


お「あのね、なぁちゃんが、、、笑ってる、
  いや、ニヤニヤしてて、怖い」


茂「へ、どういうことよ?」


お「彼女紹介してくれて、
  ずっとデレデレしてる」


茂「……あのなぁちゃんが!?
  なんてこった!
  一大事じゃん!!笑

  もうすぐ仕事終わるから、かけ直す!
  いや、迎えに行く!!

  じゃ、あとで!」


…ブチっ!


お「あー!ぶーちゃーん!!!」






『…あの、向井地さん?』


目の前でスマホに向かって、
わーわーと騒ぐ向井地美音。


授業終わりの彼女を捕まえて、
愛しのゆうちゃんを紹介したのだが。


何を言うでもなく、
しばし呆然とした後、
冒頭の電話を始めた向井地氏。





お「あ、ごめん。
  動揺しちゃって。」


『動揺が過ぎると思うけどね』


「ふふ」


お「ねぇ、もしかして、
  今日講義以外ずっと一緒にいる?」


『うん、朝一緒に来たし、
 お昼も二人で食べたよ?』


お「はぁーそういうこと、ね。
  どおりで、
  皆様子がおかしいわけだ。」


『なんかあった?』


お「いやいや。
  今も周りざわついてるじゃん。
  女の子達、蒼白になってたよ?」


『へ?
 確かに今日は誰も寄って来なくて
 めっちゃ楽だったけど』


お「わぉ、まさかの無自覚」


「…苦笑」


『え、なんで、ゆうちゃんまで苦笑い!?』


お「なぁちゃん、まず、そのニヤけ顔、
  鏡で見た方がいいよ」


『ゆうちゃん、
 私、そんなにニヤけてる??』


「うん、まぁ、ニヤけてるね? 笑」


私を見て笑うゆうちゃんが、可愛い。


『そっかぁ、へへへ』ニコニコ



お「…うん、なるほど。
  幸せそうで何よりです。 苦笑」


おんちゃんは、
私の顔の緩みが止められないものだと
理解したらしい。




お「にしても、
  村山さんを射止めちゃうなんて、
  さすがなぁちゃんだわ。」


『ゆうちゃんのこと知ってるの?』


お「知ってるよ!
  ウチのダンス部でめっちゃ有名だし。
  それに、ほら、
  男性陣の落胆の顔を見なかった?
  めちゃくちゃ人気高いよ、村山さん」


『ゆうちゃん、モテるんだ。
 そりゃ可愛いもんね!!

 ところで、ダンス部なの?』


「部活は実習始まる時に辞めちゃったから
 今はサークルにたまに顔出すくらいだよ?」


『あーそうなんだ!
 見たかったのに、残念』


「じゃあ、今度ね?」


『うん!やったね!楽しみ♪』



お「…もしかして、なぁちゃん
  何も知らないでナンパしたわけ?」


『ナンパ?
 してないしてない!』


「どっちかっていうと、
 私がした方?」


『あーでも、お持ち帰りしたのは
 私だけど?』


「その言い方やめて 笑」


私達のやり取りに
おんちゃんは驚きのあまり口に手を当てて
大きな目をぱちくりさせていた。





ザワザワ…



お「んー、っと。
  めちゃくちゃ聞きたいことあるんだけど、
  ここでは、まずい、ね」


空気の読めるおんちゃんは、
周りの空気を察したようで、
苦笑いする。


確かに時間が経つにつれ、
注目を集め始めている気配に
私も気付いてはいる。



『もぎさん、迎えにくるんでしょ?
 門の方行こうか?』


お「だね。
  あ、良かったら
  ご飯行かない?」


『ゆうちゃん、どう?』


「私はいいよ?」


お「じゃあ、行こう!
  あ、そうだ、
  私もゆうちゃんって呼んでいい?」


「うん!
 じゃあ、私もおんちゃんって呼んでいい?」


お「もちろん!」


ニコニコと楽しそうに話してる二人。


(…ん?)


『二人とも先に行ってて。
 すぐ追いかけるから』


「?」


お「…。ゆうちゃん、行こ?
  すぐ来るよ。
  あ、何食べる??」


「あ、うん。
 えっと、何がいいかな」



おんちゃんに促され歩き出したゆうちゃんは
少し心配そうにしてるけれど、
私は微笑んで休憩スペースから見送った。