(可愛い、な)


今からどんなことを言われるか
分からないというのに、
ソファにちょこんと座るゆうちゃんを見ながら
そんなことを思う。



どこかふわふわした気持ちの私とは裏腹に、
真剣な表情のゆうちゃんは、
ふーと大きく息を吐く。



「あのね、今日の私、
 色々と勢いに任せてる」


『ん?』


「偶然なぁちゃんに助けてもらえて、
 チャンスを少しも逃したくないって」


『うん?』


「お話しできて、
 これがきっかけで、これから仲良くできるって
 凄く嬉しかった。

 でも、、、」


『…でも?』





「なぁちゃんのこと、
 好きなんだ。」



『…へ?』



ここで、まさか、
告白されるなんて
思ってもいなくて、ただひたすらに驚く。



「ホントはずっと目で追いかけてたから。」


『、ずっと?』


「うん、一年の頃は同じ授業とかもあったし…
 でも、私隅の方に居たから、
 なぁちゃんは知らないと思うけど。」


『そうなんだ…ごめん』


「ううん、いいの。
 
 いつもの自分なら
 こんな積極的にいけなかったけど、
 今日しかないと思って引き止めたんだよ?」


『ふふ、確かに積極的だったよね?』


「ふふ、そうなの。

 だからこそね、自分の気持ち、
 ちゃんと言っておきたいって思って。

 私、なぁちゃんのこと、好きだから、
 仲良くなりたいの。

 だけど、その気持ちが迷惑なら、
 お話しできただけで…
 私はもう十分。」



本当に、真っ直ぐな人なんだな。

包み隠さず、
向き合ってくれる人なんだな。



『それを言いたくて、
 戻ってきてくれたの?』


「うん。
 気持ちがあるのに、隠してたら、
 なぁちゃんに失礼だと思ったの」


『そう』


「ごめん、ね?」


『謝らなくていいよ?
 悪いことしてないもん。』


「でも、なぁちゃん、
 本気な子とはあんまり仲良くしないでしょ?」


『!…苦笑』



ゆうちゃんって、
本当に私のこと良く見てるんだな。


確かに本気で私のことを思ってくれる人とは
距離をしっかり取って接する私。

というより、
ほぼ関わらないようにしてきた。





色々と驚きすぎて苦笑いをする私に、
気付いたゆうちゃん。


「あ、言っておいて、あれなんだけど…
 別に気持ちに応えてほしいとかじゃないよ?
 その、なんていうか、、、」


そう言いつつ、そのまま、
俯いてしまった。



言わなければ分からなかった気持ち。


それを隠して、
もっと仲良くなれた所で、
上手くいく可能性があれば言えばよかった
かもしれない。


それでも、
ありのままの自分を貫く彼女は
すごい。


そして、
私からの残念な知らせを待つかのように、
俯いて、
小さくなっている彼女が、
どうしようもなくて、好きだと思った。





『…ゆうちゃんの好きは、
 どういう好きなの?』


「どういう…?」


ゆうちゃんはパッと顔を上げると、
私の質問に少しだけ考えた後、


「なぁちゃんと恋人になりたい、
 そういう好き、だよ。」


そう、きっぱり言い切る。



(敵わないなぁ、もう)


欲しい言葉を潔く真っ直ぐくれる彼女の告白に、
私もちゃんと答えよう。


今まで幾度となく、
告白されてきたけれど、
ノリで気持ちに応えたことはない。


恋人を作る必要性を感じなかったし、
誰か一人を愛する自信も
愛される自信も持てなかった。



『私さ、
 今まで誰とも付き合ったことないからさ』


「え、うん」


『もしかしたら、
 どうしようもなくダメな所とか
 いっぱい見せるかもしれない。』


「うん」


『自分でも知らない顔を見せちゃう
 かもしれない。』


「うん」


『でも、ゆうちゃんなら、
 ううん、ゆうちゃんに知ってほしいとも
 思ってる。

 …いいの?』


「いいよ?
 色んななぁちゃんを知りたい。

 私だってなぁちゃんに対しては
 積極的になれる自分に初めて出会ったし。」


『そっか、、、。

 私もゆうちゃんのこと、もっと
 いっぱい知りたい。』


「ふふ、一緒だね」



微笑むゆうちゃんが
やっぱり可愛くて、
もうすでに私は彼女の虜だ。


私はゆっくり立つと、
ソファの近くへ寄っていく。



『ゆうちゃん、
 私、ゆうちゃんと仲良くなりたい。

 でも、友達は嫌だ。』


「うん?」


『友達じゃなくて、
 恋人になってください。』


「! 、、、はい。」




そっとゆうちゃんに手を差し出すと
しっかりと握り返される。


それをキュッと引っ張って、
ゆうちゃんを立たせると
ギュッと抱き締めた。




『いきなり、恋人は嫌じゃない?』


「びっくりしたけど、
 嬉しい」


私の腕の中で、呟くゆうちゃん。

そんな彼女が愛おしくて
またギュッと抱き締めた。





『あ、ゆうちゃん?』


「ん、なぁに?」


『連絡先交換してくれる?』


「もちろんっ笑」


『へへっ、良かった』



ニコニコ笑う私達。



こうして、

私を初めて見つけてくれた人が、
私の初めての恋人となった。