2006年日本松竹  監督 山田洋二  原作 藤沢周平 

出演 木村拓哉 壇れい 笹野高史 阪東三津五郎  

「お毒見役の侍がつぶ貝の刺身の毒に当たり視力を失います。その妻は心から夫を愛していましたが非常に美しく、海坂藩の番頭がご主人を助けると言い、邪な欲望で近づきます」

第30回日本アカデミー賞 最優秀助演男優賞 その他多くの優秀賞受賞

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 この映画は何と言ってもラストシーンのためにすべてがある映画です。盲目の剣士がどう考えても目の見える侍に勝てるはずがありません。盲目の剣士は音を頼りに相手の姿を想像して立ち回るしか方法がありません。音を立てずに、あるいは何かで音を消すか、逆に大きな太鼓のような音を出して音や気配を消せば、盲目の剣士は相手を探る方法がなくなります。盲目の剣士、三村新之丞(木村拓哉)は島田藤弥(阪東三津五郎)との果し合いに捨て身で臨みました。強い風が音を消す中で島田の気配を必死に探ります。

 三村新之丞は東北の小藩・海坂藩に藩主のお毒見役として勤めていた侍です。妻の加世(壇れい)とは仲睦まじく暮らしていました。新之丞はお毒見役という勤めをやりがいのない務めだと考えていました。加世に言います。

「俺は早めに隠居しようと思う。隠居して、町道場を開いて子供たちに剣を教える仕事をする。子どもたちは一人一人が違うのだ。その子ども一人一人にあった剣を教えたいのだ。これは俺の夢だの」

「目に浮かぶようですのう。あなたが子供たちに剣を教える姿」

「じゃども、実入りは減るさけえ、暮らしはきついぞ」

「そげなこと、構いはしねえ」

傍にいてその話を聞いていた下男の徳平(笹野高史)は思わず笑みをこぼします。

 お毒見役は全部で5名いて、別室の陽の差さない部屋で並んで藩主へ提供される料理を一品ずつ食べます。事件のあったその日、新之丞の食べた料理は「赤つぶ貝の刺身」でした。料理番が「一同、変わりはありましねえか?」と聞いた時は何ともありませんでした。しかし、藩主へ料理を出した丁度その時に新之丞が急変し、その場に倒れてしまいます。

 お城は「毒を盛った輩がいる」と大騒ぎでしたが、毒ではなく「赤つぶ貝の刺身」で、赤つぶ貝は季節によって猛毒を含むことがあり、それがあたったとの結論でした。元々このような食材を選んだことが間違いとの結論になり、その料理を決めた役職の者は責任を取り腹をきりました。その料理を食べて毒にあたった新之丞は命は取り留めましたが、3日間意識がありませんでした。

 意識が戻り一同安堵しますが、加世が下男に尋ねます。

「旦那様はどちらかと言うと恥ずかしがり屋で、あたしと話をする時、目を合わすことなどあまりなさらねえだども、さっき重湯差し上げた時、あたしの目を真正面からこんな風にじっと見つめてお話になるだども、なしてだろ?」

 次に加世が茶わんに入れた煎じ薬をお盆にのせて出しますが、新之丞の手は宙をつかみます。

「あなた、もしかして、お目、見えねえのではありましねえか?」

「おめえに心配かけたくねえさかい黙ってたけども、そうだ、実はおもてが明るいが暗いかしかわからねえ」

「なんで、そげな大事なこと、あたしに黙ってたのでがんすか。あたしら、夫婦でありましねえか。心配かけたくねかったなんて、なしてそげな遠慮を。あたしはあなたのこと、心配したいのでがんす。いくらでも心配したいのでがんす」

「うんだか、俺のこと、そんな風に思っていてくれたか」

「明日玄斎先生お呼びします。きっといいお薬出して下さるけえ、安心して」

と、二人は手を握り合って、涙をこらえます。

 しかし、医師の玄斎は目は治らず、薬は効かず失明すると言います。

「いずれあたしの口からお話しなければなりましねえ」

 城内では新之丞に同情するものが多数おりました。加世はお百度参りです。でも、目が治るはずもなく、それを知った新之丞は激しく絶望し取り乱して、刀を探します。でも、こうなることを予想した加世は刀を隠していました。

「俺は誰かの助けを借りなければ生きていけない。もう侍ではない。俺は死ぬ」

「あたしが傍にいるではありませんか?」

「おめえも今に俺みてえな奴は嫌いになる」

「死ぬなら、どうぞ、あたしも、あたしも、」

と、加世は必死に新之丞にしがみつきつきます。

 海坂藩の番頭に島田藤弥(阪東三津五郎)と言う人物がいますが、加世が若い時から加世に女としても魅力を感じていました。島田は権力の座にあって、親切を装いますが心の中には邪なものがありました。

 

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